慎思録 / 巻之五
易以道陰陽。春秋以明名分。莊周此言。乃二書之大義。可謂立辭簡要也。所謂要言不煩者也。竊謂。易之道陰陽也。此以兩位相比竝者言之。此爲橫說。如晝夜男女。君子小人。水火風雷。吉凶淑慝。剛柔進退消長。是也。葢易之爲道也。言其大義。則是尊陽抑陰。進君子退小人。好生惡殺。而述吉凶消長之理。進退存亡之道。是就兩位比竝之中。而分其尊卑而巳矣。可謂極精微之理。而立天地之大意也。春秋之明名分也。此以上下貴賤不同者言之。此爲竪說。如君臣父子嫡庶中國夷狄王伯。是也。葢春秋之爲法也。言其大義。則是尊王賤伯。內中國外夷狄。明君臣上下父子嫡庶之分。葢就上下高低之中。而嚴其貴賤。可謂致廣大之敎。而明古今之大法也。
新字:易以道陰陽。春秋以明名分。荘周此言。乃二書之大義。可謂立辞簡要也。所謂要言不煩者也。窃謂。易之道陰陽也。此以両位相比並者言之。此為横説。如昼夜男女。君子小人。水火風雷。吉凶淑慝。剛柔進退消長。是也。葢易之為道也。言其大義。則是尊陽抑陰。進君子退小人。好生悪殺。而述吉凶消長之理。進退存亡之道。是就両位比並之中。而分其尊卑而巳矣。可謂極精微之理。而立天地之大意也。春秋之明名分也。此以上下貴賤不同者言之。此為竪説。如君臣父子嫡庶中国夷狄王伯。是也。葢春秋之為法也。言其大義。則是尊王賤伯。内中国外夷狄。明君臣上下父子嫡庶之分。葢就上下高低之中。而厳其貴賤。可謂致広大之教。而明古今之大法也。
書き下し
易は以て陰陽を道ひ、春秋は以て名分を明らかにす。荘周の此の言、乃ち二書の大義にして、辞を立つること簡要と謂ふべし。所謂要言煩はしからざる者なり。窃かに謂ふ、易の陰陽を道ふや、此れ両位相比並する者を以て之を言ふ。此れ横説と為す。昼夜・男女・君子小人・水火風雷・吉凶淑慝・剛柔進退消長の如き、是れなり。蓋し易の道たるや、其の大義を言へば、則ち是れ陽を尊び陰を抑へ、君子を進め小人を退け、生を好み殺を悪みて、吉凶消長の理、進退存亡の道を述ぶ。是れ両位比並の中に就きて、其の尊卑を分かつのみ。精微の理を極めて、天地の大意を立つと謂ふべし。春秋の名分を明らかにするや、此れ上下貴賤の同じからざる者を以て之を言ふ。此れ竪説と為す。君臣・父子・嫡庶・中国夷狄・王伯の如き、是れなり。蓋し春秋の法たるや、其の大義を言へば、則ち是れ王を尊び伯を賤しみ、中国を内にし夷狄を外にし、君臣上下父子嫡庶の分を明らかにす。蓋し上下高低の中に就きて、其の貴賤を厳にす。広大の教へを致して、古今の大法を明らかにすと謂ふべし。
現代語訳
「易は陰陽を説き、春秋は名分を明らかにする」。荘周のこの言葉は、二つの書の大きな意義をとらえたもので、言葉の立て方が簡潔で要を得ていると言えます。いわゆる「要点を突いた言葉は煩わしくない」というものです。ひそかに思うに、易が陰陽を説くのは、二つの位が並び立つものについて言っているので、これを横の説とします。昼と夜、男と女、君子と小人、水火風雷、吉凶と善悪、剛柔・進退・消長などがそれです。易の道は、その大義を言えば、陽を尊んで陰を抑え、君子を進めて小人を退け、生を好んで殺を憎み、吉凶消長の理と進退存亡の道を述べるものです。これは並び立つ二つの中で、その尊卑を分けるだけです。精微な理を極めて、天地の大きな意味を立てたものと言えます。春秋が名分を明らかにするのは、上下貴賤が同じでないものについて言っているので、これを縦の説とします。君臣、父子、嫡庶、中国と夷狄、王者と覇者などがそれです。春秋の法は、その大義を言えば、王者を尊んで覇者を賤しみ、中国を内とし夷狄を外とし、君臣上下・父子嫡庶の分を明らかにするものです。上下高低の中で、その貴賤を厳しくするのです。広大な教えを尽くして、古今の大法を明らかにしたものと言えます。
解説
この章句が説くこと
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