慎思録 / 巻之五
洪範五事。亦各有德。所謂有物必有則也。五事亦與四勿相爲表裏。葢有四勿之工夫。則有五事之德。四勿與五事。其數不同者。何也。葢貌思二者。倶屬乎動。貌動乎外。思動乎內也。
新字:洪範五事。亦各有徳。所謂有物必有則也。五事亦与四勿相為表裏。葢有四勿之工夫。則有五事之徳。四勿与五事。其数不同者。何也。葢貌思二者。倶属乎動。貌動乎外。思動乎内也。
書き下し
洪範の五事も、亦各徳有り。所謂物有れば必ず則有るなり。五事も亦四勿と相表裏を為す。蓋し四勿の工夫有れば、則ち五事の徳有り。四勿と五事と、其の数同じからざる者は、何ぞや。蓋し貌と思との二者は、倶に動に属す。貌は外に動き、思は内に動くなり。
現代語訳
『書経』洪範の五事にも、それぞれに徳があります。いわゆる「物があれば必ず法則がある」ということです。五事はまた四勿と表裏をなしています。四勿の工夫があれば、五事の徳が備わるのです。四勿と五事とで数が違うのはなぜでしょうか。貌と思の二つは、ともに動に属するからです。貌は外に動き、思は内に動くのです。
解説
『書経』洪範の五事は、貌・言・視・聴・思の五つで、それぞれ恭・従・明・聡・睿という徳が対応します。四勿は『論語』顔淵篇で孔子が顔回に示した克己の要目で、礼に非ざれば視ること勿かれ、聴くこと勿かれ、言ふこと勿かれ、動くこと勿かれ、の四つです。益軒は、四勿の動の中に五事の貌と思がともに含まれると見て、両者を統一的に理解します。見る・聞く・話す・振る舞う・考えるという日常の五つの働きを正すことが修養の中身だと整理すると、自分を点検する具体的な手がかりになります。
この章句が説くこと
五事四勿克己礼修身