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慎思録 / 巻之五

好議人之非者。可見其心慘刻而不忠厚也。躬自厚而薄責於人。可謂忠厚也。吾輩學問所以不進者。何也。葢由安于舊習。而不能變故步耳。葢天地之氣。日變化而不息。所以成化育盛大之功也。君子之學法天德。而日新不巳。所以有上達之功也。學者須要除去舊習。而日日新。又日新。不可因循于舊陋。若如此。則庶乎長進。不然則不免終于自棄而巳。

新字:好議人之非者。可見其心惨刻而不忠厚也。躬自厚而薄責於人。可謂忠厚也。吾輩学問所以不進者。何也。葢由安于旧習。而不能変故歩耳。葢天地之気。日変化而不息。所以成化育盛大之功也。君子之学法天徳。而日新不巳。所以有上達之功也。学者須要除去旧習。而日日新。又日新。不可因循于旧陋。若如此。則庶乎長進。不然則不免終于自棄而巳。

書き下し

好んで人の非を議する者は、其の心惨刻にして忠厚ならざるを見るべし。躬自ら厚くして薄く人を責むる、忠厚と謂ふべし。吾輩の学問の進まざる所以の者は何ぞや。蓋し旧習に安んじて故歩を変ずること能はざるに由るのみ。蓋し天地の気は、日に変化して息まず。化育盛大の功を成す所以なり。君子の学は天徳に法りて、日に新たにして已まず。上達の功有る所以なり。学者須らく旧習を除去して、日日に新たに、又日に新たにすることを要すべし。旧陋に因循すべからず。若し此くの如くならば、則ち長進に庶からん。然らずんば則ち自棄に終はるを免れざるのみ。

現代語訳

好んで人の欠点をあげつらう者は、その心が冷酷で、まごころと温かさがないことがわかります。自分を厳しく責め、人を軽く責めるのが、まごころと温かさと言うべきです。私たちの学問が進まないのはなぜでしょうか。それは古い習慣に安んじて、これまでの歩みを変えられないからにほかなりません。天地の気は日々変化してやみません。だからこそ万物を育てる盛大な働きをなすのです。君子の学問は天の徳にならい、日々新たにしてやみません。だから高みへ達する成果があるのです。学ぶ者は古い習慣を取り除き、日々に新たに、また日に新たにしなければなりません。古く狭い習いにずるずると従ってはなりません。このようであれば、大きく伸びることに近づくでしょう。そうでなければ、自分を捨てて終わることを免れません。

解説

前半は『論語』衛霊公篇の「躬自ら厚くして薄く人を責むれば、則ち怨みに遠ざかる」を踏まえ、人の非を好んで論じる心の冷たさを戒めます。後半は、殷の湯王が盤に刻んだという「苟に日に新たに、日日に新たに、又日に新たなり」(『大学』伝二章)を引いて、学問の停滞は旧習への安住から来ると説きます。人を批判する暇があれば自分の古い癖を改めよ、という二つの話は根でつながっています。慣れたやり方を見直し続けることが、学びにも仕事にも伸びしろを生むのです。

この章句が説くこと

日新学問旧習忠厚上達

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