慎思録 / 巻之五
大凡人之生質。方幼童之時。其善惡未可知。故於此時。未可定其賢不肖。到十五歲以上。其生質既成。而善惡始相彰矣。故曰之成童。及此時。可別其賢不肖。故童幼之時。遽毀譽於其人難。
新字:大凡人之生質。方幼童之時。其善悪未可知。故於此時。未可定其賢不肖。到十五歳以上。其生質既成。而善悪始相彰矣。故曰之成童。及此時。可別其賢不肖。故童幼之時。遽毀誉於其人難。
書き下し
大凡人の生質、幼童の時に方りては、其の善悪未だ知るべからず。故に此の時に於て、未だ其の賢不肖を定むべからず。十五歳以上に到れば、其の生質既に成りて、善悪始めて相彰る。故に之を成童と曰ふ。此の時に及びて、其の賢不肖を別つべし。故に童幼の時、遽かに其の人を毀誉すること難し。
現代語訳
おおよそ人の生まれつきは、幼い子どもの時には、善いか悪いかまだわかりません。だからこの時期に、賢いか愚かかを決めてはなりません。十五歳以上になれば、生まれつきの性質ができあがり、善悪が初めてはっきり現れてきます。だからこれを成童と言います。この時になって、賢いか愚かかを見分けることができます。ですから幼い時に、にわかにその子をけなしたりほめたりするのは難しいのです。
解説
成童は『礼記』内則などに見える語で、十五歳前後の少年をいいます。益軒は前条で十歳から二十歳の教育の大切さを説き、この条では幼い子の資質を早々と決めつけることを戒めます。幼いうちは性質がまだ定まらず、良くも悪くも変わりうるからです。親や教師が早い段階で「この子はできる」「できない」と決めると、その評価がかえって子を縛ることがあります。部下や後輩を見るときも、最初の印象で能力を決めつけず、成長の時間を待つ余裕を持つことの大切さを教えてくれます。
この章句が説くこと
教育成童毀誉資質待つ
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