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慎思録 / 巻之五

衆人之生也。自十歲到弱冠。其知識日漸長。情慾亦浸盛。見異物而遷。其賢知愚不肖。於此時乎定矣。故十歲以上到二十歲。敎戒禁防。最不可無之時也。不可爲姑息而縱驕惰。苟於此時空放過。而無敎戒。則習與智長。化與心成。而至扞格不勝。遂養成終身之凶惡了。可不畏乎。

新字:衆人之生也。自十歳到弱冠。其知識日漸長。情慾亦浸盛。見異物而遷。其賢知愚不肖。於此時乎定矣。故十歳以上到二十歳。教戒禁防。最不可無之時也。不可為姑息而縦驕惰。苟於此時空放過。而無教戒。則習与智長。化与心成。而至扞格不勝。遂養成終身之凶悪了。可不畏乎。

書き下し

衆人の生や、十歳より弱冠に到るまで、其の知識日に漸く長じ、情慾も亦浸く盛んなり。異物を見て遷る。其の賢知愚不肖、此の時に於て定まる。故に十歳以上二十歳に到るまでは、教戒禁防、最も無かるべからざるの時なり。姑息を為して驕惰を縦にすべからず。苟も此の時に於て空しく放過して教戒無ければ、則ち習ひ智と長じ、化心と成りて、扞格して勝へざるに至り、遂に終身の凶悪を養成し了らん。畏れざるべけんや。

現代語訳

多くの人の一生では、十歳から二十歳までの間に知識が日ごとに伸び、欲望もまたしだいに盛んになります。目新しいものを見ると心が移ります。賢いか愚かかは、この時期に決まるのです。だから十歳から二十歳までは、教え戒め、禁じ防ぐことが最も欠かせない時期です。その場しのぎの甘さで驕りや怠けを許してはなりません。もしこの時期を空しく見過ごして教え戒めなければ、習慣が知恵とともに伸び、感化が心と一体になり、手に負えなくなって、ついには一生の悪を育て上げてしまいます。恐れずにいられましょうか。

解説

「習ひ智と長じ、化心と成る」は『大学章句』序や『小学』書題に引かれる言葉で、幼いうちの習慣が知恵とともに育ち、その人の心そのものになることをいいます。「扞格して勝へず」は『礼記』学記の語で、時機を逃すと教えが受けつけられなくなることです。益軒は『和俗童子訓』で子どもの教育を体系的に論じた人で、ここでも思春期の教育の重さを強調します。子育てだけでなく、新人の最初の数年で身につく仕事の習慣がその後を左右することにも通じる教えです。

この章句が説くこと

教育習慣教戒童子

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