慎思録 / 巻之四
養氣之道。先在調息。息調則氣得養。而心亦可平也。氣息躁急。則心亦躁急。故平心和氣。以調氣息爲要。發言做事。從容不迫。則氣息舒緩。是平心和氣之工夫。然則以調息和氣。不可爲術者事。而鄙棄之。
新字:養気之道。先在調息。息調則気得養。而心亦可平也。気息躁急。則心亦躁急。故平心和気。以調気息為要。発言做事。従容不迫。則気息舒緩。是平心和気之工夫。然則以調息和気。不可為術者事。而鄙棄之。
書き下し
養気の道は、先づ息を調ふるに在り。息調へば則ち気養ひを得て、心も亦た平らかなるべし。気息躁急なれば、則ち心も亦た躁急なり。故に心を平らかにし気を和らぐるは、気息を調ふるを以て要と為す。言を発し事を做すに、従容として迫らざれば、則ち気息舒緩なり。是れ心を平らかにし気を和らぐるの工夫なり。然らば則ち息を調へ気を和らぐるを以て、術者の事と為して之を鄙棄すべからず。
現代語訳
気を養う道は、まず呼吸を調えることにあります。呼吸が調えば気が養われ、心もまた平らかになります。呼吸がせわしく乱れれば、心もまたせわしく乱れます。ですから心を平らかにし気を和らげるには、呼吸を調えることが要です。言葉を発し事を行うときに、ゆったりとして急がなければ、呼吸はのびやかでゆるやかになります。これが心を平らかにし気を和らげる工夫です。そうであれば、呼吸を調え気を和らげることを、術者のすることだと軽んじて捨ててはなりません。
解説
呼吸を調えることが気を養い心を平らかにする要だと説く、養生家益軒らしい条です。息が乱れれば心も乱れ、話し方や動作をゆったりさせれば呼吸も穏やかになる、という身体と心の結びつきを的確に捉えています。『養生訓』でも益軒は調息の法を詳しく説いており、それを道家や術者の技として儒者が軽んじるべきではないと言います。緊張する場面で深呼吸をすると落ち着くという経験は誰にもあるでしょう。心を整えるために、まず体と呼吸から整えるという実践的な知恵です。
この章句が説くこと
気調息養生心呼吸
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