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慎思録 / 巻之四

爲善者。須馴致其道。葢積習而不已。則必成其功。而如自然。然則爲善者。馴致之功可貴夫。爲惡亦馴致而巳。宋人雜志載。都下小兒纔三歲。曲拍皆中節。篤信謂。吾戚里小兒。生而四歲。亦能拍節而不爽。有其天性如此者。又不知節者。雖長大而敎之。然不能拍而中節。人性之於技藝。有能有不能也如此。夫敎人之道。如倫理綱常。固不可不令衆人由之。如其他材藝。人各有能有不能。須循其才性之所能而敎之。庶乎有逹其材焉。不可强其所不能。雖勞無功。後世之任人也。不能察其能否。强其所不能。而責以其職。雖欲無過。不可得。而聖人之用才也。賢哲如稷契皐陶伯益垂夔龍。亦各因其所長。而授其職。令彼終身守其一官。而成其功。此所以庶績咸熈也。今敎人令成材之道。亦當如此。

新字:為善者。須馴致其道。葢積習而不已。則必成其功。而如自然。然則為善者。馴致之功可貴夫。為悪亦馴致而巳。宋人雑志載。都下小児纔三歳。曲拍皆中節。篤信謂。吾戚里小児。生而四歳。亦能拍節而不爽。有其天性如此者。又不知節者。雖長大而教之。然不能拍而中節。人性之於技芸。有能有不能也如此。夫教人之道。如倫理綱常。固不可不令衆人由之。如其他材芸。人各有能有不能。須循其才性之所能而教之。庶乎有逹其材焉。不可強其所不能。雖労無功。後世之任人也。不能察其能否。強其所不能。而責以其職。雖欲無過。不可得。而聖人之用才也。賢哲如稷契皐陶伯益垂夔竜。亦各因其所長。而授其職。令彼終身守其一官。而成其功。此所以庶績咸熈也。今教人令成材之道。亦当如此。

書き下し

善を為す者は、須らく其の道を馴致すべし。蓋し積習して已まざれば、則ち必ず其の功を成して、自然の如し。然らば則ち善を為す者は、馴致の功貴ぶべきかな。悪を為すも亦た馴致するのみ。宋人の雑志に載す、都下の小児纔かに三歳にして、曲拍皆節に中る、と。篤信謂ふ、吾が戚里の小児、生まれて四歳、亦た能く節を拍ちて爽はず。其の天性此の如き者有り。又節を知らざる者は、長大にして之を教ふと雖も、然れども拍ちて節に中ること能はず。人性の技芸に於ける、能有り不能有ること此の如し。夫れ人を教ふるの道、倫理綱常の如きは、固より衆人をして之に由らしめざるべからず。其の他の材芸の如きは、人各能有り不能有り。須らく其の才性の能くする所に循ひて之を教ふべし。庶はくは其の材を達すること有らん。其の能くせざる所を強ふべからず。労すと雖も功無し。後世の人に任ずるや、其の能否を察すること能はず、其の能くせざる所を強ひて、其の職を以て責む。過ち無からんと欲すと雖も、得べからず。而して聖人の才を用ふるや、賢哲稷契皐陶伯益垂夔龍の如き、亦た各其の長ずる所に因りて、其の職を授け、彼をして終身其の一官を守りて、其の功を成さしむ。此れ庶績咸熙まる所以なり。今人を教へ材を成さしむるの道も、亦た当に此の如くなるべし。

現代語訳

善を行う者は、少しずつ慣らしてその道に至らせるべきです。積み重ねて習い続ければ、必ず成果が上がり、自然なことのようになります。ですから善を行う者は、少しずつ慣らしていく努力を貴ぶべきです。悪を行うのもまた少しずつ慣れていくのです。宋の人の雑記に「都の子どもがわずか三歳で、曲の拍子がみな節に合っていた」とあります。私、篤信が思うに、私の親類の子どもも四歳で、拍子を打って外れませんでした。生まれつきこのような者がいるのです。また拍子を知らない者は、大きくなってから教えても、拍子を打って節に合わせることができません。人の性質は技芸について、できることとできないことがこのようにあるのです。人を教える道で、人倫の綱常のようなものは、もとより全ての人に従わせなければなりません。しかしそのほかの才能や技芸は、人によってできることとできないことがあります。その才能と性質のできるところに従って教えるべきです。そうすればその才能を伸ばせるでしょう。できないことを無理にさせてはいけません。苦労しても成果はありません。後世の人の任用は、その人の能力の有無を見極められず、できないことを無理にさせて、その職務で責めます。過ちがないようにと思っても無理です。聖人が才能を用いたときは、稷・契・皐陶・伯益・垂・夔・龍のような賢哲にも、それぞれ長じるところによって職を授け、一生その一つの官職を守らせて功を成させました。これが多くの事業がみな盛んになったゆえんです。今、人を教えて才能を育てる道も、このようであるべきです。

解説

二つの条がつながった単位です。前半は、善も悪も少しずつ慣れて身につく「馴致」によると説きます。後半は、幼い子の拍子感の違いという身近な観察から、人には技芸の向き不向きがあると述べ、人倫は全員に求めるが、才芸はその人の得意に従って教え、任じるべきだと論じます。舜が稷・契・皐陶らにそれぞれの長所に応じて職を授けた話は『書経』舜典に基づき、「庶績咸熙」もその言葉です。できないことを強いて責めるより、得意を見極めて任せるという人材育成論は、現代の適材適所の考え方そのものです。

この章句が説くこと

適材適所習慣人材

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