大和俗訓 / 巻之八・応接
一不智不才の人といへども、必すぐれて得たる所あり。智者は其得たる所を取りて、得ざる所を許す。故に天下に廢る人なし。たとへば良醫の藥を用ふるが如し。いかなる賤しき草にも、よき能あれば取用ふ。大匠の材を用ふるが如し。直なるを柱とし、それるを梁として、材を捨てず。
新字:一不智不才の人といへども、必すぐれて得たる所あり。智者は其得たる所を取りて、得ざる所を許す。故に天下に廃る人なし。たとへば良医の薬を用ふるが如し。いかなる賤しき草にも、よき能あれば取用ふ。大匠の材を用ふるが如し。直なるを柱とし、それるを梁として、材を捨てず。
書き下し
一不智不才の人といへども、必すぐれて得たる所あり。智者は其得たる所を取りて、得ざる所を許す。故に天下に廃る人なし。たとへば良医の薬を用ふるが如し。いかなる賤しき草にも、よき能あれば取用ふ。大匠の材を用ふるが如し。直なるを柱とし、それるを梁として、材を捨てず。
現代語訳
不知で不才の人であっても、必ずすぐれて得意なところがあります。知恵ある人は、その得意なところを取って、不得意なところを許します。だから天下に役に立たない人はいません。たとえば良医が薬を用いるようなものです。どんないやしい草でも、よい効能があれば取り用います。大工の棟梁が材木を用いるようなものです。まっすぐなものは柱にし、曲がったものは梁にして、材木を捨てません。
解説
どんな人にも必ず優れた点があり、賢い人はそれを見つけて生かすと益軒は言います。良い医者は道端の雑草でも薬効があれば用い、腕のよい大工は曲がった木も梁として使うというたとえは、本草学者であり実務家でもあった益軒らしいものです。役に立たない人などいない、使い方を知らないだけだという考えは、多様な人材を生かす今の組織づくりにも通じます。子育てでも、得意なことを見つけて伸ばす親の目が、子どもの可能性を開いていきます。
この章句が説くこと
人材適材適所長所本草知恵
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