言志四録 / 言志後録 第六十三条 人有りて人無し
物得其所爲盛。物失其所爲衰。天下有人而無人。有財而無財。是謂衰世。
新字:物得其所為盛。物失其所為衰。天下有人而無人。有財而無財。是謂衰世。
書き下し
物其の所を得るを盛と為し、物其の所を失ふを衰と為す。天下人有りて人無く、財有りて財無き、是れを衰世と謂ふ。
現代語訳
物がそのふさわしい場所を得ているのが盛んな状態であり、物がその場所を失っているのが衰えた状態である。天下に人がいながら人がいないのと同じであり、財がありながら財がないのと同じであるありさま、これを衰えた世という。
解説
国や組織の盛衰を「所を得る」かどうかで捉えた一条です。人も物も、ふさわしい場所に置かれていれば力を発揮し、世は栄える。逆に、能力のある人がいても適所に就かず、財があっても有効に使われなければ、いないのと同じ、ないのと同じになる。それが衰えた世だと一斎は言います。前の数条で論じた明の末期、君相が「其の人に匪ず」、国庫が空になった姿とも重なります。人材や資源の多寡よりも、その配置と使い方こそが盛衰を分けるという指摘は、組織運営にそのまま当てはまるでしょう。優秀な人がいるのに成果が出ないとき、問題は人ではなく配置にあるのではないかと考えさせる言葉です。
この章句が説くこと
適材適所盛衰人材為政組織
関連する章句
-
言志四録・言志耋録 第百五十六条 人材を舎つるは尤も惜し世に惜しむべき者有り。亀玉の大宝、瓦礫に渾る、惜しむべし。希世の名剣、賤人之を佩ぶ、惜しむべし。非常の人材、舎てて用ゐざる、尤も惜しむべし。
-
言志四録・言志後録 第二百十六条 人各々能有り人各々能有り。器使す可からざる無し。一技一芸、皆至理を寓す。詞章筆札の如きも亦是れ芸なり。蓋し器使中の一のみ。
-
『不動智神妙録』諫言 其三 人を見る総て人の善し悪しきを知らんと思はヾ、其愛し用ゐらるゝ臣下、又は親み交る友達を以て知ると云へり、主人善なれば其近臣皆善人なり、主人正しからざれば臣下友達皆正しからず、然らば諸人みななみし隣国是れを侮るなり、善なるときは、諸人親むとは此等の事なり、国は善人を以て宝とすと云へりよくよく御体認なさるべし、人の知る所に於て、私の不義を去り小人を遠け賢を好む事を急に成され候はゞ、いよいよ国の政正しく、御忠臣第一たるべく候、
-
言志四録・言志録 第百七十五条 世に小人有るも亦理なり世に小人有るも亦理なり。小人は小知すべし。不賢者は其の小なる者を識る。是れ亦天地間に是の人無かるべからず。或は謂ふ、「堯舜の民は屋を比べて封ずべし」と。則ち過甚なり。但だ唐虞の世は、小人有りと雖も、皞皞として各其の分に安んずるのみ。
-
『慎思録』巻之四善を為す者は、須らく其の道を馴致すべし。蓋し積習して已まざれば、則ち必ず其の功を成して、自然の如し。然らば則ち善を為す者は、馴致の功貴ぶべきかな。悪を為すも亦た馴致するのみ。宋人の雑志に載す、都下の小児纔かに三歳にして、曲拍皆節に中る、と。篤信謂ふ、吾が戚里の小児、生まれて四歳、亦た能く節を拍ちて爽はず。其の天性此の如き者有り。又節を知らざる者は、長大にして之を教ふと雖も、然れども拍ちて節に中ること能はず。人性の技芸に於ける、能有り不能有ること此の如し。夫れ人を教ふるの道、倫理綱常の如きは、固より衆人をして之に由らしめざるべからず。其の他の材芸の如きは、人各能有り不能有り。須らく其の才性の能くする所に循ひて之を教ふべし。庶はくは其の材を達すること有らん。其の能くせざる所を強ふべからず。労すと雖も功無し。後世の人に任ずるや、其の能否を察すること能はず、其の能くせざる所を強ひて、其の職を以て責む。過ち無からんと欲すと雖も、得べからず。而して聖人の才を用ふるや、賢哲稷契皐陶伯益垂夔龍の如き、亦た各其の長ずる所に因りて、其の職を授け、彼をして終身其の一官を守りて、其の功を成さしむ。此れ庶績咸熙まる所以なり。今人を教へ材を成さしむるの道も、亦た当に此の如くなるべし。
-
言志四録・言志耋録 第百九十八条 智略と芸能を兼ぬる者は少なし人の智略有る者は、或は芸能無し。芸能有る者は、或は智略無し。智略は心に在り、芸能は身に在り。之を兼ぬる者は少なし。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る