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慎思録 / 巻之四

有經世濟民之任者。仁惠忠誠。知人安民。固其本也。且不可不博通于古今。葢不博古。則不能監聖賢之成法。而明往古之事變。何以能施今日之事務哉。不通今。則不能諳達當世之事務。而察識士民之安否。何以能操國家之機要哉。該通典籍者。博古也。練習時務者。通今也。三事不可闕一。爲將之道亦然。范文正公曰。將不知古今。匹夫勇耳。

新字:有経世済民之任者。仁恵忠誠。知人安民。固其本也。且不可不博通于古今。葢不博古。則不能監聖賢之成法。而明往古之事変。何以能施今日之事務哉。不通今。則不能諳達当世之事務。而察識士民之安否。何以能操国家之機要哉。該通典籍者。博古也。練習時務者。通今也。三事不可闕一。為将之道亦然。范文正公曰。将不知古今。匹夫勇耳。

書き下し

世を経め民を済ふの任有る者は、仁恵忠誠、人を知り民を安んずること、固より其の本なり。且つ古今に博く通ぜざるべからず。蓋し古に博からざれば、則ち聖賢の成法に監みて、往古の事変を明らかにすること能はず。何を以て能く今日の事務を施さんや。今に通ぜざれば、則ち当世の事務を諳達して、士民の安否を察識すること能はず。何を以て能く国家の機要を操らんや。典籍に該通する者は、古に博きなり。時務に練習する者は、今に通ずるなり。三事は一を闕くべからず。将為るの道も亦た然り。范文正公曰く、将にして古今を知らざるは、匹夫の勇のみ、と。

現代語訳

世を治め民を救う任にある者は、仁と恵み、忠と誠、人を知り民を安んじることが、もとよりその根本です。そのうえ古今に広く通じていなければなりません。古に広くなければ、聖賢の定めた法を手本にして、昔の出来事や変化を明らかにすることができません。それでどうして今日の務めを行えましょう。今に通じていなければ、当世の務めに熟達して、士や民の安否を見抜くことができません。それでどうして国家の要を握れましょう。書物に広く通じるのが古に広いことで、時の務めに習熟するのが今に通じることです。この三つは一つも欠かせません。将となる道も同じです。范仲淹(文正公)は「将でありながら古今を知らないのは、ただの匹夫の勇にすぎない」と言いました。

解説

政治を担う者の条件として、仁恵忠誠という根本に加えて、古に博く今に通じることを挙げた条です。古典に通じれば先人の法と過去の事変から学べ、時務に習熟すれば現在の実情と人々の暮らしを見抜けると益軒は言います。北宋の名臣范仲淹の「将にして古今を知らざるは匹夫の勇のみ」は、狄青に『春秋左氏伝』を授けた逸話で知られます。人柄、歴史の教養、現場感覚の三つをそろえよという教えは、リーダーに求められる資質を考えるうえで今もそのまま通用します。

この章句が説くこと

経世博古時務

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