慎思録 / 巻之四
君相一日二日萬機。故一日逸豫。而不視事。則政事委積。後日欲一時速決。則不堪其紛鬧。故倉卒之際。不能熟思。而乖理者多矣。雖士庶之家亦然。逸樂廢時。則家事委積。欲一時速決之。則不堪其煩擾。其所處置。過失多矣。然則自君相至乎士庶。雖一日不可逸豫廢工事。
新字:君相一日二日万機。故一日逸予。而不視事。則政事委積。後日欲一時速決。則不堪其紛鬧。故倉卒之際。不能熟思。而乖理者多矣。雖士庶之家亦然。逸楽廃時。則家事委積。欲一時速決之。則不堪其煩擾。其所処置。過失多矣。然則自君相至乎士庶。雖一日不可逸予廃工事。
書き下し
君相は一日二日に万機あり。故に一日逸豫して事を視ざれば、則ち政事委積す。後日一時に速やかに決せんと欲すれば、則ち其の紛鬧に堪へず。故に倉卒の際、熟思すること能はずして、理に乖く者多し。士庶の家と雖も亦た然り。逸楽して時を廃すれば、則ち家事委積す。一時に速やかに之を決せんと欲すれば、則ち其の煩擾に堪へず。其の処置する所、過失多し。然らば則ち君相より士庶に至るまで、一日と雖も逸豫して工事を廃すべからず。
現代語訳
君主や宰相には、一日二日の間にも無数の政務があります。ですから一日でも安楽に過ごして政務を見なければ、政事が積み重なります。後日それを一度に急いで決めようとすれば、その混乱に耐えられません。そのため慌ただしい中で熟慮することができず、道理に背くことが多くなります。士や庶民の家でも同じです。安楽にふけって時をむだにすれば、家の仕事が積み重なり、一度に急いで決めようとすれば、その煩わしさに耐えられず、その処置に過ちが多くなります。そうであれば、君主や宰相から士や庶民に至るまで、一日たりとも安楽に過ごして仕事をおろそかにしてはならないのです。
解説
一日怠けると仕事がたまり、後でまとめて片づけようとすると慌てて判断を誤る、という誰にでも覚えのある事態を戒めた条です。「一日二日に万機あり」は『書経』皋陶謨の言葉で、君主の政務の多さを言います。益軒は君主だけでなく士や庶民の家事にも同じことが言えると広げています。仕事をため込むと時間が足りなくなるだけでなく、判断の質そのものが落ちるという指摘は鋭く、日々少しずつ処理していく習慣が、良い判断を支える土台であることを教えてくれます。
この章句が説くこと
勤怠惰政務判断日課
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