囲炉夜話 / 第二百三則・必ず諸を心に問ふ
言不可盡信,必揆諸理。事未可遽行,必問諸心。
新字:言不可尽信,必揆諸理。事未可遽行,必問諸心。
書き下し
言は盡くは信ず可からず、必ず諸を理に揆る。事は未だ遽かに行ふ可からず、必ず諸を心に問ふ。
現代語訳
人の言葉はすべてを信じてはいけません。必ず道理に照らして測るべきです。事はすぐに行ってはいけません。必ず自分の心に問うてみるべきです。
解説
聞いたことと、しようとすることの両方に、一呼吸を置けと説く短い対句です。揆とは、物差しで測ることです。人の言葉は、たとえ権威ある人の言葉でも、そのまま信じず、道理に合うかどうかで測れと言います。下の句の遽とは、慌ただしく、にわかにという意味です。何かをしようと思ったら、すぐに動かず、自分の心に正しいかどうかを問えと言います。上は外から入るものの点検、下は内から出るものの点検です。真偽の分からない情報が次々に流れてくる今、信じる前、広める前に一度立ち止まる習慣として、そのまま使える教えです。
この章句が説くこと
判断道理慎重良心処世
関連する章句
-
孫子・行軍篇丘陵堤防には、必ず其の陽に処りて、之を右背にす。此れ兵の利、地の助けなり。上に雨ふり、水沫至らば、渉らんと欲する者は、其の定まるを待て。
-
菜根譚・前集風斜め雨急なる処には、脚を立て得て定まらんことを要す。花濃く柳艶なる処には、眼を著け得て高からんことを要す。路危く径険しき処には、頭を回し得て早からんことを要す。
-
論語・述而篇子の慎む所は、斉・戦・疾なり。
-
論語・為政篇子張禄を干(もと)むを学ぶ。子曰く、多く聞いて疑わしきを闕(か)き、其の余を慎言すれば、則ち尤(とがめ)寡なし。多く見て殆(あやう)きを闕き、其の余を慎行すれば、則ち悔寡なし。言に尤寡なく、行に悔寡なければ、禄は其の中に在り。
-
『墨子』貴義子墨子曰く、今、士の身を用うるは、商人の一布を用うるの慎しみに若かざるなり。商人、一布を用うるに、敢えて茍くも繼ぎて讎らず、必ず良き者を擇ぶ。今、士の身を用うるは則ち然らず。意の欲する所は則ち之を為す。厚き者は刑罰に入り、薄き者は毁醜を被る。則ち士の身を用うるは、商人の一布を用うるの慎しみに若かざるなり。
-
『呻吟語』内篇・修身・再び一步を思へば更に好し事の心下に放ち得るに到るも、還た一たび慎むも何ぞ妨げん。言の來たりて口邊に向かふも、再び一步を思へば更に好し。