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慎思録 / 巻之四

本邦諸州發古冢者。往往有石棺。而其內納以兵器與銅鏡。其外周圍疊石築埋。其制可謂甚厚也。意是古昔其鄕士君長豪族之墳墓也。然皆無銘誌。故其姓名與世代。不可得而知。此如文選謝惠連祭古冢文所謂溟漠君然。爲可恨爾。然則送葬者。不可無誌石。

新字:本邦諸州発古冢者。往往有石棺。而其内納以兵器与銅鏡。其外周囲畳石築埋。其制可謂甚厚也。意是古昔其郷士君長豪族之墳墓也。然皆無銘誌。故其姓名与世代。不可得而知。此如文選謝恵連祭古冢文所謂溟漠君然。為可恨爾。然則送葬者。不可無誌石。

書き下し

本邦諸州に古冢を発く者、往往にして石棺有り。而して其の内に納むるに兵器と銅鏡とを以てし、其の外周囲に石を畳みて築き埋む。其の制甚だ厚しと謂ふべし。意ふに是れ古昔其の郷の士君長豪族の墳墓なり。然れども皆銘誌無し。故に其の姓名と世代と、得て知るべからず。此れ文選の謝恵連が祭古冢文に所謂溟漠君の如く然り。恨むべしと為す。然らば則ち送葬する者は、誌石無かるべからず。

現代語訳

わが国の諸国で古い塚を掘ると、しばしば石の棺があります。その中には武器や銅の鏡が納められ、外の周りには石を積み重ねて築き埋めてあります。その造りはたいへん手厚いと言うべきです。思うに、これは昔のその土地の士や君長、豪族の墓なのでしょう。しかしどれにも銘や墓誌がありません。そのため、その姓名も時代も知ることができません。これは『文選』の謝恵連の「祭古冢文」に言う「溟漠君」のようなもので、残念なことです。そうであれば、葬る者は墓誌の石を欠かしてはなりません。

解説

各地で掘り出される古墳の石棺や副葬品について述べた、考古学的な観察の条です。手厚い造りから地方の豪族の墓と推定しつつ、銘がないため誰の墓かわからないことを惜しみます。南朝宋の謝恵連「祭古冢文」は、名もわからぬ古墓の主を仮に「冥漠君」と呼んで祭った文章です。筑前をはじめ各地の地誌を編んだ益軒の関心がよく表れています。記録を残さなければ、どれほど立派な営みも後世には伝わらないという指摘は、仕事の記録や組織の歴史を残すことの大切さにも通じます。

この章句が説くこと

記録葬礼古墳歴史

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