慎思録 / 巻之四
凡讀書及聽於人者。要寧靜其心。安定其氣。虛心純一。不慮其他。無雜念之紛擾。如此。則理會得分明。且記得而不忘。人身之中。心爲天君。耳目鼻口。形爲五官。是其大略也。細分之。則五官之內。亦自有貴賤品秩。耳目之觀聽者。宰相之任也。平時輔導於天君。有變則掌進退。其神妙亞乎天君。可以爲五官之長。口鼻之出入者。納言主財之官也。形以腸胃爲重。手足次焉。腸胃之受納者。倉廩之官也。掌養。此等諸官。亦是爲樞要。唯手足之爲力者。勞事。使役之官也。此爲最下。
新字:凡読書及聴於人者。要寧静其心。安定其気。虚心純一。不慮其他。無雑念之紛擾。如此。則理会得分明。且記得而不忘。人身之中。心為天君。耳目鼻口。形為五官。是其大略也。細分之。則五官之内。亦自有貴賤品秩。耳目之観聴者。宰相之任也。平時輔導於天君。有変則掌進退。其神妙亜乎天君。可以為五官之長。口鼻之出入者。納言主財之官也。形以腸胃為重。手足次焉。腸胃之受納者。倉廩之官也。掌養。此等諸官。亦是為枢要。唯手足之為力者。労事。使役之官也。此為最下。
書き下し
凡そ書を読み及び人に聴く者は、其の心を寧静にし、其の気を安定し、虚心純一にして、其の他を慮らず、雑念の紛擾無きことを要す。此の如くなれば、則ち理会すること分明にして、且つ記得して忘れず。人身の中、心を天君と為し、耳目鼻口形を五官と為す。是れ其の大略なり。之を細分すれば、則ち五官の内にも、亦た自ら貴賤品秩有り。耳目の観聴する者は、宰相の任なり。平時は天君を輔導し、変有れば則ち進退を掌る。其の神妙は天君に亜ぐ。以て五官の長と為すべし。口鼻の出入する者は、納言主財の官なり。形は腸胃を以て重しと為し、手足之に次ぐ。腸胃の受納する者は、倉廩の官なり。養ふことを掌る。此等の諸官も、亦た是れ枢要為り。唯だ手足の力を為す者は、事を労す、使役の官なり。此れ最も下為り。
現代語訳
書物を読むときも、人の話を聞くときも、心を静め、気を落ち着け、心を空しくして一つに集中し、他のことを考えず、雑念に乱されないようにすることが大切です。そうすれば理解がはっきりし、しかも覚えて忘れません。人の身体では、心を天君とし、耳・目・鼻・口・形(からだ)を五官とします。これがおおよそのところです。細かく分ければ、五官の中にもおのずから貴賤や位の順序があります。耳と目が見聞きするのは宰相の役目です。平時は天君を助け導き、異変があれば進退をつかさどります。そのはたらきの妙は天君に次ぎ、五官の長とすることができます。口と鼻が出し入れするのは、言葉を伝え財をつかさどる官です。からだでは腸胃を重いものとし、手足がこれに次ぎます。腸胃が受け入れるのは倉の官で、養うことをつかさどります。これらの官も要所です。ただ手足が力を出すのは、仕事に骨を折る使役の官で、これが最も下です。
解説
この章句が説くこと
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