慎思録 / 巻之四
詩曰。不愆不忘。率由舊章。書曰。監先王成憲。其永無愆。又曰。率乃祖攸行。竊謂草創之君。必有出衆之才。而經歷多。謀慮深。故其慮患也遠。立法也密。欲使子孫世守之所謂君子創業垂統。爲可繼也。雖後世子孫。有聰明才能。高出于衆人。而於守國家之道。則不能及其祖宗也。故子孫世守祖宗之舊章而不失。則永無傾覆之患。何亡國敗家之有。雖傳之至萬世。亦然。苟後世子孫。有作聰明亂舊章。顚覆祖宗之法。則國弊民叛而不至危亡者。未之有也。故范祖禹曰。國家之敗。未有不由子孫廢祖宗之業。然則爲人子孫者。豈毋念爾祖。宜聿修厥德。
新字:詩曰。不愆不忘。率由旧章。書曰。監先王成憲。其永無愆。又曰。率乃祖攸行。窃謂草創之君。必有出衆之才。而経歴多。謀慮深。故其慮患也遠。立法也密。欲使子孫世守之所謂君子創業垂統。為可継也。雖後世子孫。有聰明才能。高出于衆人。而於守国家之道。則不能及其祖宗也。故子孫世守祖宗之旧章而不失。則永無傾覆之患。何亡国敗家之有。雖伝之至万世。亦然。苟後世子孫。有作聰明乱旧章。顛覆祖宗之法。則国弊民叛而不至危亡者。未之有也。故范祖禹曰。国家之敗。未有不由子孫廃祖宗之業。然則為人子孫者。豈毋念爾祖。宜聿修厥徳。
書き下し
詩に曰く、愆たず忘れず、旧章に率由す、と。書に曰く、先王の成憲に監みて、其れ永く愆つこと無からん、と。又曰く、乃の祖の攸行に率へ、と。窃かに謂ふ、草創の君は、必ず衆に出づるの才有りて、経歴多く、謀慮深し。故に其の患ひを慮るや遠く、法を立つるや密なり。子孫をして世々之を守らしめんと欲す。所謂君子は業を創め統を垂れ、継ぐべきことを為すなり。後世の子孫、聡明才能有りて衆人に高出すと雖も、国家を守るの道に於ては、則ち其の祖宗に及ぶこと能はざるなり。故に子孫世々祖宗の旧章を守りて失はざれば、則ち永く傾覆の患ひ無し。何の亡国敗家か之有らん。之を伝へて万世に至ると雖も、亦た然り。苟も後世の子孫、聡明を作して旧章を乱り、祖宗の法を顛覆する有らば、則ち国弊れ民叛きて危亡に至らざる者は、未だ之有らざるなり。故に范祖禹曰く、国家の敗は、未だ子孫の祖宗の業を廃するに由らざるは有らず、と。然らば則ち人の子孫為る者、豈に爾の祖を念ふこと毋からんや。宜しく聿に厥の徳を修むべし。
現代語訳
『詩経』に「誤らず忘れず、昔からの決まりに従う」とあります。『書経』に「先王の定めた法を手本にすれば、いつまでも誤ることはない」とあり、また「あなたの祖先の行ったとおりに従え」とあります。私が思うに、国を草創した君主は必ず人並み外れた才能があり、経験が多く、考えが深いのです。ですから心配事を遠くまで見通し、法を細かく立て、子孫に代々守らせようとします。いわゆる「君子は事業を始め、筋道を残して、受け継げるようにする」ということです。後世の子孫が聡明で才能があり、人並み以上であっても、国家を守る道においては祖先に及びません。ですから子孫が代々祖先の決まりを守って失わなければ、国が傾き覆る心配はいつまでもありません。どうして国が滅び家が敗れることがありましょう。それを伝えて万世に至っても同じです。もし後世の子孫が才気をふるって古い決まりを乱し、祖先の法をひっくり返せば、国が疲れ民が背いて危うく滅びに至らなかったことはありません。だから范祖禹は「国家が敗れるのは、子孫が祖先の事業を廃したことによらないものはない」と言いました。そうであれば、人の子孫たる者が、どうして祖先を思わないでいられましょうか。その徳を修めるべきです。
解説
この章句が説くこと
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