慎思録 / 巻之四
仁者。人心之生理。爲萬善之本。博施濟衆。是仁之發用。是萬善之所行。無非仁。溫和慈愛。爲仁之本。博施濟衆。爲仁之末。仁總萬善。予故曰。仁者。人之生理。而萬善之總稱。
新字:仁者。人心之生理。為万善之本。博施済衆。是仁之発用。是万善之所行。無非仁。温和慈愛。為仁之本。博施済衆。為仁之末。仁総万善。予故曰。仁者。人之生理。而万善之総称。
書き下し
仁とは人心の生理にして、万善の本為り。博く施し衆を済ふは、是れ仁の発用なり。是れ万善の行はるる所、仁に非ざるは無し。温和慈愛は仁の本為り。博く施し衆を済ふは仁の末為り。仁は万善を総ぶ。予故に曰く、仁とは人の生理にして、万善の総称なり、と。
現代語訳
仁とは人の心の生きる理であり、あらゆる善の根本です。広く施して多くの人を救うのは、仁が外にはたらき出たものです。あらゆる善が行われるところで、仁でないものはありません。穏やかで慈しみ深いことが仁の根本であり、広く施して多くの人を救うことが仁の末です。仁はあらゆる善をまとめるものです。だから私は「仁とは人の生きる理であり、あらゆる善の総称である」と言うのです。
解説
仁を「人心の生理」、つまり人の心が生き生きとはたらく理と定義し、あらゆる善の総称だとまとめた短い条です。「博く施して衆を済ふ」は『論語』雍也篇で子貢が仁について問うた言葉で、益軒はこれを仁の末、温和慈愛を仁の本と位置づけます。朱子学では仁を「心の徳、愛の理」と説き、益軒も天地の生み育てる心と人の仁を重ねて考えました。大きな社会貢献も、まず身近な人への温かさから始まるという順序は、日々の人間関係を大切にする意味を教えてくれます。
この章句が説くこと
仁善慈愛生理博施
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