慎思録 / 巻之四
食以養生。饕餮者。以此傷生。藥以救人。庸醫以此殺人。學以治性。小人以此傷性。此三者。本是益人之物事。然而害人如此。由用之之失其道也。
新字:食以養生。饕餮者。以此傷生。薬以救人。庸医以此殺人。学以治性。小人以此傷性。此三者。本是益人之物事。然而害人如此。由用之之失其道也。
書き下し
食は以て生を養ふ。饕餮なる者は此を以て生を傷る。薬は以て人を救ふ。庸医は此を以て人を殺す。学は以て性を治む。小人は此を以て性を傷る。此の三者は、本是れ人を益するの物事なり。然り而して人を害すること此の如きは、之を用ふるの其の道を失ふに由るなり。
現代語訳
食べ物は命を養うものですが、むさぼり食う者はそれで命を損ないます。薬は人を救うものですが、へたな医者はそれで人を殺します。学問は本性を修めるものですが、小人はそれで本性を損ないます。この三つは、もともと人を益するものです。それなのにこのように人を害するのは、使い方がその道を外れているからです。
解説
食・薬・学という本来人の役に立つ三つのものが、使い方を誤ると害になると説く短い条です。医学と養生に詳しい益軒らしく、食と薬を例に挙げたうえで、学問も同じだと結びます。学問が小人の手にかかると、知識を誇ったり他人を攻撃したりする道具となり、かえって心を損なうというのです。良い道具や制度も、目的を見失った使い方をすれば害になるという指摘は、情報や技術があふれる現代にこそ、使う側の姿勢を問い直させます。
この章句が説くこと
学問道養生食薬
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