慎思録 / 巻之四
君子與小人。其於人物一也。所好惡毎相反。君子之所好。小人惡之。君子之所惡。小人反好之而沉溺矣。葢因其天性之所好惡。與自幼稚所習慣有異而巳。看其所好惡。而其人可知而巳矣。
新字:君子与小人。其於人物一也。所好悪毎相反。君子之所好。小人悪之。君子之所悪。小人反好之而沈溺矣。葢因其天性之所好悪。与自幼稚所習慣有異而巳。看其所好悪。而其人可知而巳矣。
書き下し
君子と小人とは、其の人物に於けるや一なり。好悪する所毎に相反す。君子の好む所は、小人之を悪む。君子の悪む所は、小人反つて之を好みて沈溺す。蓋し其の天性の好悪する所と、幼稚よりして習慣する所と、異なる有るに因るのみ。其の好悪する所を看れば、其の人知るべきのみ。
現代語訳
君子も小人も、人としては同じです。しかし好むものと嫌うものが、いつも正反対です。君子が好むものを小人は嫌い、君子が嫌うものを小人はかえって好んでおぼれます。それは、生まれつき好み嫌うものと、幼いころから習い慣れたものに違いがあるからにすぎません。その人が何を好み何を嫌うかを見れば、その人がどういう人かわかります。
解説
君子と小人は人間としては同じだが、好悪が正反対だという短い観察です。その違いは天性だけでなく、幼い頃からの習慣によって生まれると益軒は言います。『論語』陽貨篇の「性相近し、習ひ相遠し」に通じる考え方で、益軒は『和俗童子訓』でも幼児期のしつけを重んじました。人を見るには好むものを見よという指摘は、採用や人付き合いの判断にも使えます。同時に、自分が何を好んでいるかを振り返ることは、自分の人柄を知る手がかりにもなります。
この章句が説くこと
好悪君子小人習慣人物
関連する章句
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論語・顔淵篇司馬牛、君子を問う。子曰く、「君子は憂えず懼れず。」曰く、「憂えず懼れざれば、斯れ之を君子と謂うか。」子曰く、「内に省みて疚しからずんば、夫れ何をか憂え何をか懼れん。」
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論語・憲問篇子曰く、君子にして不仁なる者有るかな。未だ小人にして仁なる者有らざるなり。
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論語・学而篇子曰く、「君子は食らうに飽くことを求めず、居るに安きを求めず、事に敏にして言に慎み、有道に就いて正す。学を好むと謂う可きのみ。」
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論語・為政篇子曰く、「君子は器ならず。」
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論語・学而篇子曰く、「君子重からざれば則ち威あらず、学べば則ち固ならず。忠信を主とし、己に如かざる者を友とすること無かれ、過てば則ち改むるに憚ること勿かれ。」
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