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慎思録 / 巻之四

得元氣者滋息。失元氣者枯涸。人物皆然。如水是陰類。暑月可減。而却滋益。寒月可增。而却耗涸者。何也。葢水本陽氣之所化生。春夏陽氣盛。故水之生也多矣。秋冬陽氣衰。故水之生也寡矣。醫家治金瘡產後陰血大脫者。不以補血藥。而用益氣藥。葢補氣則血亦自生矣。若專補血。則血不生。元氣彌虛耗而死矣。故古人血脫者必補氣。此與陽長則水自生。亦同一理也。

新字:得元気者滋息。失元気者枯涸。人物皆然。如水是陰類。暑月可減。而却滋益。寒月可增。而却耗涸者。何也。葢水本陽気之所化生。春夏陽気盛。故水之生也多矣。秋冬陽気衰。故水之生也寡矣。医家治金瘡産後陰血大脱者。不以補血薬。而用益気薬。葢補気則血亦自生矣。若専補血。則血不生。元気弥虚耗而死矣。故古人血脱者必補気。此与陽長則水自生。亦同一理也。

書き下し

元気を得る者は滋息し、元気を失ふ者は枯涸す。人物皆然り。水の如きは是れ陰類なり。暑月には減ずべくして却つて滋益し、寒月には増すべくして却つて耗涸する者は何ぞや。蓋し水は本陽気の化生する所なり。春夏は陽気盛んなり、故に水の生ずるや多し。秋冬は陽気衰ふ、故に水の生ずるや寡し。医家、金瘡産後の陰血大いに脱する者を治するに、補血の薬を以てせずして、益気の薬を用ふ。蓋し気を補へば則ち血も亦た自ら生ず。若し専ら血を補へば、則ち血生ぜず、元気彌虚耗して死す。故に古人は血脱する者必ず気を補ふ。此れ陽長ずれば則ち水自ら生ずると、亦た同一の理なり。

現代語訳

元気を得たものは増え育ち、元気を失ったものは枯れてしまいます。人も物もみなそうです。水は陰の類ですが、暑い月には減るはずなのにかえって増え、寒い月には増えるはずなのにかえって涸れるのはなぜでしょうか。水はもともと陽気が生み出したものだからです。春夏は陽気が盛んなので水が多く生じ、秋冬は陽気が衰えるので水が少なく生じます。医者は、刀傷や出産の後で陰である血が大量に失われた人を治すのに、血を補う薬を使わず、気を増す薬を用います。気を補えば血もおのずから生じるからです。もし血ばかりを補えば、血は生じず、元気がますます弱って死んでしまいます。だから昔の人は、血を失った人には必ず気を補いました。これは陽が伸びれば水がおのずから生じるのと、同じ理なのです。

解説

医学と養生に通じた益軒らしく、水と血という陰のものが、実は陽気によって生じると説く条です。夏に水が増え冬に涸れるという観察から、大量出血の治療では補血より補気を優先するという漢方の考え「血脱益気」へと話を広げます。後年の『養生訓』でも元気を養うことを根本に置いており、その考えがここにも見えます。足りないものを直接補うより、それを生み出す根本の力を養うほうが効く、という発想は、組織や人を立て直すときの考え方としても示唆に富みます。

この章句が説くこと

元気陰陽養生

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