養生訓 / 巻第一・総論上
一人の元氣は、もと是天地の萬物を生ずる氣なり。是人身の根本なり。人此の氣にあらざれば生ぜず。生じて後は、飮食衣服居處の外物の助によりて、元氣養はれて命をたもつ。飮食衣服居處の類も、亦天地の生ずる所なり。生るゝも養はるゝも、皆天地父母の恩なり。外物を用ひて、元氣の養とする所の飮食などをかろく用ひて過さゞれば、生れつきたる内の元氣を養ひて、いのちながくして天年をたもつ。もし外物の養をおもくし過せば、内の元氣外の養にまけて病となる。病おもくして元氣盡くれば死す。たとへば草木に水と肥との養を過せば、かじけて枯るゝがごとし。故に、人たゞ心の内の樂を求めて、飮食などの外の養をかろくすべし。外の養おもければ内の元氣損ず。
新字:一人の元気は、もと是天地の万物を生ずる気なり。是人身の根本なり。人此の気にあらざれば生ぜず。生じて後は、飲食衣服居処の外物の助によりて、元気養はれて命をたもつ。飲食衣服居処の類も、亦天地の生ずる所なり。生るゝも養はるゝも、皆天地父母の恩なり。外物を用ひて、元気の養とする所の飲食などをかろく用ひて過さゞれば、生れつきたる内の元気を養ひて、いのちながくして天年をたもつ。もし外物の養をおもくし過せば、内の元気外の養にまけて病となる。病おもくして元気尽くれば死す。たとへば草木に水と肥との養を過せば、かじけて枯るゝがごとし。故に、人たゞ心の内の楽を求めて、飲食などの外の養をかろくすべし。外の養おもければ内の元気損ず。
書き下し
一人の元気は、もと是天地の万物を生ずる気なり。是人身の根本なり。人此の気にあらざれば生ぜず。生じて後は、飲食衣服居処の外物の助によりて、元気養はれて命をたもつ。飲食衣服居処の類も、亦天地の生ずる所なり。生るるも養はるるも、皆天地父母の恩なり。外物を用ひて、元気の養とする所の飲食などをかろく用ひて過さざれば、生れつきたる内の元気を養ひて、いのちながくして天年をたもつ。もし外物の養をおもくし過せば、内の元気外の養にまけて病となる。病おもくして元気尽くれば死す。たとへば草木に水と肥との養を過せば、かじけて枯るるがごとし。故に、人ただ心の内の楽を求めて、飲食などの外の養をかろくすべし。外の養おもければ内の元気損ず。
現代語訳
人の元気は、もともと天地が万物を生み出す気です。これが人の体の根本です。人はこの気がなければ生まれません。生まれてからは、飲食・衣服・住まいといった外物の助けによって元気が養われ、命を保ちます。飲食・衣服・住まいの類も、また天地が生み出したものです。生まれるのも養われるのも、みな天地父母の恩です。外物を用いて元気の養いとする飲食などを軽く用いて過ごさなければ、生まれつきの内なる元気が養われて、命が長く天寿を保てます。もし外物の養いを重くしすぎると、内の元気が外の養いに負けて病となります。病が重く元気が尽きれば死にます。たとえば草木に水と肥料を与えすぎると、しおれて枯れてしまうようなものです。ですから人はただ心のうちの楽しみを求めて、飲食などの外の養いは軽くすべきです。外の養いが重ければ内の元気が損なわれます。
解説
この章句が説くこと
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