養生訓 / 巻第一・総論上
一陰陽の氣天にあつて流行して滯らざれば、四時よく行はれ、百物よく生る。偏にして滯れば、流行の道ふさがり、冬あたゝかに、夏さむく、大風大雨の變ありて、凶害をなせり。人身にあつても亦しかり。氣血よく流行して滯らざれば、氣つよくして病なし。氣血流行せざれば病となる。其の氣上に滯れば頭疼眩暈となり、中に滯れば、心腹痛となり、痞滿となり、下に滯れば腰痛脚氣となり淋疝痔漏となる。此の故によく生を養ふ人は、つとめて元氣の滯なからしむ。
新字:一陰陽の気天にあつて流行して滞らざれば、四時よく行はれ、百物よく生る。偏にして滞れば、流行の道ふさがり、冬あたゝかに、夏さむく、大風大雨の変ありて、凶害をなせり。人身にあつても亦しかり。気血よく流行して滞らざれば、気つよくして病なし。気血流行せざれば病となる。其の気上に滞れば頭疼眩暈となり、中に滞れば、心腹痛となり、痞満となり、下に滞れば腰痛脚気となり淋疝痔漏となる。此の故によく生を養ふ人は、つとめて元気の滞なからしむ。
書き下し
一陰陽の気天にあつて流行して滞らざれば、四時よく行はれ、百物よく生る。偏にして滞れば、流行の道ふさがり、冬あたたかに、夏さむく、大風大雨の変ありて、凶害をなせり。人身にあつても亦しかり。気血よく流行して滞らざれば、気つよくして病なし。気血流行せざれば病となる。其の気上に滞れば頭疼眩暈となり、中に滞れば、心腹痛となり、痞満となり、下に滞れば腰痛脚気となり淋疝痔漏となる。此の故によく生を養ふ人は、つとめて元気の滞なからしむ。
現代語訳
陰陽の気が天にあって流れめぐり滞らなければ、四季はよく移り、万物はよく生じます。偏って滞れば、めぐる道がふさがり、冬に暖かく夏に寒く、大風や大雨の異変があって、凶害をなします。人の身にあってもまた同じです。気血がよくめぐって滞らなければ、気が強くて病はありません。気血がめぐらなければ病となります。その気が上に滞れば頭痛やめまいとなり、中に滞れば胸や腹の痛みとなり、つかえとなり、下に滞れば腰痛や脚気となり、淋病・疝気・痔となります。ですから、よく生を養う人は、努めて元気が滞らないようにするのです。
解説
この章句が説くこと
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『養生訓』巻第二・総論下一天地の理、陽は一陰は二なり。水は多く火は少し。水はかわきがたく火は消えやすし。人は陽類にて少く、禽獣虫魚は陰類にて多し。此の故に、陽はすくなく、陰は多きこと自然の理なり。すくなきは貴く、多きはいやし。君子は陽類にて少く、小人は陰類にて多し。易道は陽を善として貴び、陰を悪としていやしみ、君子を貴び、小人をいやしむ。水は陰類なり。暑月はへるべくして、ますます多く生ず。寒月は增すべくして、かへつて涸れてすくなし。春夏は陽気盛なる故に水多く生ず。秋冬は陽気衰ふる故水すくなし。血はへれども死なず。気多くへれば忽死す。吐血金瘡産後など、陰血大に失する者は、血を補へば、陽気いよいよ尽きて死す。気を補へば、生命をたもちて、血も自生ず。
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『養生訓』巻第二・総論下一客となつて、昼より他席にあらば、薄暮より前に帰るべし。夜まで語れば、主客ともに労す。久しく滞座すべからず。一素問に、怒れば気上る、喜べば気緩まる、悲めば気消ゆ、恐るれば気めぐらず、寒ければ気閉づ、暑ければ気泄る、驚けば気乱る、労すれば気へる、思へば気結るといへり。百病は皆気より生ず。病とは気やむなり。故に養生の道は気を調ふるにあり。調ふるは気を和け平かにするなり。凡気を養ふの道は、気をへらさざると、ふさがざるにあり。気を和け平かにすれば、此二のうれひなし。
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『養生訓』巻第一・総論上一気は一身体の内にあまねく行きわたるべし。むねの中一所にあつむべからず。いかり、かなしみ、うれひ、思ひあれば胸中一所に気とどこほりて集る。七情の過ぎて滞るは、病の生ずる基なり。一俗人は慾をほしいままにして礼義にそむき、気を養はずして天年をたもたず。理気二ながら失へり。仙術の士は養気に偏にして道理を好まず。故に礼義をすててつとめず。陋儒は理に偏にして気を養はず。修養の道を知らずして天年をたもたず。此の三はともに君子の行ふ道にあらず。
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『養生訓』巻第一・総論上一養生の害二あり。元気をへらす一なり。元気を滞らしむる二なり。飲食色慾労動を過せば元気やぶれてへる。飲食安逸睡眠を過せば滞りてふさがる。耗ると滞ると皆元気をそこなふ。一心は身の主なり。しづかにして安からしむべし。身は心のやつこなり。うごかして労せしむべし。心やすく静かなれば、天君ゆたかに、くるしみなくして楽しむ。身うごきて労すれば、飲食滞らず、血気めぐりて病なし。
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『養生訓』巻第一・総論上一風寒暑湿は外邪なり。是にあたりて病となり、死ぬるは天命なり。聖賢といへども免れがたし。されども、内気実してよくつつしみ防がば、外邪のおかす事も亦まれなるべし。飲食色慾によりて病生ずるは、全く我身より出づる過なり。是天命にあらず、わが身のとがなり。万の事、天より出づるは力に及ばず、わが身に出づる事は力を用ひて為しやすし。風寒暑湿の外邪をふせがざるは怠なり。飲食好色の内慾を忍ばざるは過なり。怠と過とは、皆慎まざるよりおこる。
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『養生訓』巻第二・総論下一心はつねに従容と静かにせはしからず、和平なるべし。言語は殊に静かにしてすくなくし、無用の事いふべからず。是尤気を養ふ良法なり。一人の身は、気を以て生の源、命の主とす。故に養生をよくする人は、常に元気を惜みてへらさず、静にしては元気をたもち、動きては元気をめぐらす。たもつとめぐらすと二の者そなはらざれば、気を養ひがたし。動静其時を失はず、是気を養ふの道なり。一もし大風雨と雷甚しくば、天の威をおそれて、夜といへども必ず起き、衣服をあらためて坐すべし、臥すべからず。
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