師導古典を学びたいすべての人に

慎思録 / 巻之三

蘇子美曰。明窻淨几。筆硯紙墨。皆得精良。此亦人生一幸事。而得此樂者亦少矣。誠哉此言也。古來文士多薄命。雖中華亦然。况本邦乎。書生之居室。若得此樂。則苟完矣。亦可以爲淸福也。

新字:蘇子美曰。明窓浄几。筆硯紙墨。皆得精良。此亦人生一幸事。而得此楽者亦少矣。誠哉此言也。古来文士多薄命。雖中華亦然。況本邦乎。書生之居室。若得此楽。則苟完矣。亦可以為清福也。

書き下し

蘇子美曰く、明窓浄几、筆硯紙墨、皆精良を得るは、此れ亦人生の一幸事なり。而して此の楽しみを得る者も亦少なし、と。誠なるかな此の言や。古来文士は多く薄命なり。中華と雖も亦然り。况んや本邦をや。書生の居室、若し此の楽しみを得ば、則ち苟くも完し。亦以て清福と為すべきなり。

現代語訳

蘇舜欽(子美)は「明るい窓と清らかな机、筆・硯・紙・墨がみな上等なものを得るのは、人生の一つの幸いである。しかしこの楽しみを得る者も少ない」と言いました。まことにこの言葉のとおりです。昔から文人は多く不遇でした。中国でもそうですから、まして日本ではなおさらです。書生の部屋がもしこの楽しみを得られれば、まずは十分です。これもまた清らかな福とすべきです。

解説

北宋の詩人蘇舜欽(字は子美)の言葉として欧陽脩の『試筆』などに伝わる「明窓浄几、筆硯紙墨、皆精良を極むるも、亦自ら是れ人生の一楽」を引いた一条です。「苟くも完し」は『論語』子路篇で衛の公子荊が家を整えたことを評した「苟くも完し」に拠ります。前出の蔵書を清福とする条と同じく、贅沢ではないが心の満ちる環境を大切にする益軒の生活感覚が表れています。明るく片づいた机と使いやすい道具があるだけで学びや仕事の喜びが増すという実感は、今の在宅勤務の環境づくりにも通じます。

この章句が説くこと

清福読書書斎足る

関連する章句

この一句を、あなたの毎日に。

古典の教えを、今の状況に当てはめて考えてみる——師導があなたの学びと選択を支えます。

師導で古典を学ぶ
いま登録すると、7日間すべての機能を無料でお試しいただけます。 無料ではじめる