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慎思録 / 巻之三

存養熟。則省察之功自省力。葢存養之功深。則私意之發亦自少。譬如養元氣厚。則疾病之生亦自少也。克己之功。須以審幾防微爲要。防其微。則用力寡。而成功多矣。防其著者反之。

新字:存養熟。則省察之功自省力。葢存養之功深。則私意之発亦自少。譬如養元気厚。則疾病之生亦自少也。克己之功。須以審幾防微為要。防其微。則用力寡。而成功多矣。防其著者反之。

書き下し

存養熟すれば、則ち省察の功自ら力を省く。蓋し存養の功深ければ、則ち私意の発も亦自ら少なし。譬へば元気を養ふこと厚ければ、則ち疾病の生ずるも亦自ら少なきが如し。克己の功は、須らく幾を審らかにし微を防ぐを以て要と為すべし。其の微を防げば、則ち力を用ふること寡くして、功を成すこと多し。其の著しき者を防ぐは之に反す。

現代語訳

心を保ち養う工夫が熟すれば、自分を省みる工夫は自然に力が省けます。思うに、存養の工夫が深ければ、私心が起こることも自然に少なくなります。たとえば元気を厚く養えば、病気が起こることも自然に少なくなるようなものです。己に克つ工夫は、兆しをよく見きわめ、かすかなうちに防ぐことを要とすべきです。かすかなうちに防げば、力は少なくて功は多く成ります。はっきり現れたものを防ぐのはその逆です。

解説

朱子学の修養法である存養(平素に心を保ち養う)と省察(心の動きを省みる)の関係を、養生の比喩で説いた一条です。元気を厚く養えば病が少ないように、存養が深ければ私意の発動も少なく、省察に力が要らなくなると言います。後半の「幾を審らかにし微を防ぐ」は、周敦頤『通書』の「誠・神・幾」や、『易』繋辞伝の「幾は動の微」を踏まえた克己の工夫です。心も体も、日頃の基礎づくりと、問題が小さいうちの対処が大切だという点で、予防医学やリスク管理の考え方とよく重なります。

この章句が説くこと

存養省察克己予防養生

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