慎思録 / 巻之三
大王曰。君子不以其所以養人者害人。此以土地言之。如以飮食不節而害其身者言之。亦然。蓋飮食元是所以養人者。苟徇口腹之欲。而傷害其身。亦此以所以養身者害身也。且以此理推。則君長之於衆民。亦然。國家之立君長。元是欲養民也。苟爲君長。而賊害其民。是以所以養民者害民也。
新字:大王曰。君子不以其所以養人者害人。此以土地言之。如以飲食不節而害其身者言之。亦然。蓋飲食元是所以養人者。苟徇口腹之欲。而傷害其身。亦此以所以養身者害身也。且以此理推。則君長之於衆民。亦然。国家之立君長。元是欲養民也。苟為君長。而賊害其民。是以所以養民者害民也。
書き下し
大王曰く、君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず、と。此れ土地を以て之を言ふ。飲食節ならずして其の身を害する者を以て之を言ふが如きも、亦然り。蓋し飲食は元是れ人を養ふ所以の者なり。苟も口腹の欲に徇ひて、其の身を傷害するは、亦此れ身を養ふ所以の者を以て身を害するなり。且つ此の理を以て推せば、則ち君長の衆民に於けるも、亦然り。国家の君長を立つるは、元是れ民を養はんと欲するなり。苟も君長と為りて、其の民を賊害するは、是れ民を養ふ所以の者を以て民を害するなり。
現代語訳
周の大王(古公亶父)は「君子は、人を養うためのもので人を害しない」と言いました。これは土地について言ったものです。飲食の節度がなくて身を害することについて言っても同じです。思うに、飲食はもともと人を養うためのものです。もし口と腹の欲に従って身を傷つけるなら、これもまた身を養うもので身を害することになります。さらにこの理で推し量れば、君主や長が民に対する場合も同じです。国が君主や長を立てるのは、もともと民を養おうとするためです。もし君主や長となって民を損ない害するなら、それは民を養うためのもので民を害することになります。
解説
『孟子』梁恵王下で、周の大王(古公亶父)が狄人に土地を求められ、民を戦わせず邠の地を去ったときの言葉「君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず」を引きます。土地は民を養うためのものなので、土地のために民を死なせないという意味です。益軒はこれを飲食の養生に広げ、さらに君長の役割にまで推し及ぼします。本来の目的を忘れて手段が人を損なうことは、健康のための食事、社員のための制度、住民のための行政など、今もあらゆる場面で起こりうる逆転です。
この章句が説くこと
養生民君長目的孟子
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