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慎思録 / 巻之三

世俗以他姓之子弟。妄養而爲義子。後來其子以非其所生。往往不孝順者多矣。其義父亦以無天性之親。不恕其小過。督責之刻薄。不勝其怒。終至父子相乖離。而兩家結怨。苟不得而欲養親族之子弟而爲嗣。則待其年稍長。而能察其性行。然後養之爲子。庶乎無後患。不然則不勝其悔者多矣。可不愼乎。如無親族子弟之性行佳者。雖絕後嗣。亦勝乖離者。

新字:世俗以他姓之子弟。妄養而為義子。後来其子以非其所生。往往不孝順者多矣。其義父亦以無天性之親。不恕其小過。督責之刻薄。不勝其怒。終至父子相乖離。而両家結怨。苟不得而欲養親族之子弟而為嗣。則待其年稍長。而能察其性行。然後養之為子。庶乎無後患。不然則不勝其悔者多矣。可不慎乎。如無親族子弟之性行佳者。雖絶後嗣。亦勝乖離者。

書き下し

世俗他姓の子弟を以て、妄りに養ひて義子と為す。後来其の子其の生む所に非ざるを以て、往往孝順ならざる者多し。其の義父も亦天性の親無きを以て、其の小過を恕さず、之を督責すること刻薄にして、其の怒りに勝へず。終に父子相乖離して、両家怨みを結ぶに至る。苟も得ずして親族の子弟を養ひて嗣と為さんと欲せば、則ち其の年稍々長ずるを待ちて、能く其の性行を察し、然る後に之を養ひて子と為さば、後患無きに庶し。然らずんば則ち其の悔に勝へざる者多し。慎まざるべけんや。如し親族の子弟の性行佳き者無くんば、後嗣を絶つと雖も、亦乖離する者に勝る。

現代語訳

世間ではよその家の子をむやみに養って養子にします。後にその子は、自分を生んだ親でないというので、しばしば孝行でなく従順でない者が多いのです。養父の方も、生まれつきの親子の情がないので、小さな過ちも許さず、厳しく責めたてて怒りを抑えられません。ついには父子が仲たがいし、両家が恨みを結ぶに至ります。やむを得ず親族の子を養って跡継ぎにしようとするなら、その子が少し成長するのを待ち、性質と行いをよく見極めてから養子にすれば、後の心配はないでしょう。そうでなければ後悔しきれないことが多いのです。慎まなければなりません。もし親族の子に性質と行いのよい者がいなければ、跡継ぎが絶えても、仲たがいするよりはましです。

解説

江戸時代は家の存続のため養子縁組が盛んでしたが、益軒はその安易さを戒め、他姓を避けて親族から、しかも成長して人柄が見えてから迎えよと説きます。朱子学では異姓を養うことに否定的な議論があり、益軒の考えもその影響を受けています。家が絶えても不和よりはましという結びは、当時としては思い切った意見です。後継者を形式や急ぎで決めず、人柄を見極めてから託すことは、事業承継や後任の選定を考えるうえで今も大切な原則です。

この章句が説くこと

養子後継人柄慎重

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