慎思録 / 巻之三
多言尤害事敗德。且不可乘快妄毀譽於人。譽人過實者。固可爲不知。况毀人不中其實者乎。毀人雖中非忠厚之道。且爲招殃之基。况不中其實乎。
新字:多言尤害事敗徳。且不可乗快妄毀誉於人。誉人過実者。固可為不知。況毀人不中其実者乎。毀人雖中非忠厚之道。且為招殃之基。況不中其実乎。
書き下し
多言は尤も事を害し徳を敗る。且つ快に乗じて妄りに人を毀誉すべからず。人を誉めて実に過ぐる者は、固より知らずと為すべし。况んや人を毀りて其の実に中らざる者をや。人を毀りて中ると雖も、忠厚の道に非ず、且つ殃を招くの基と為る。况んや其の実に中らざるをや。
現代語訳
口数が多いことは、とりわけ事を損ない徳を破ります。また勢いに任せてむやみに人を誉めたりけなしたりしてはなりません。人を実際以上に誉めるのは、もちろん物が分かっていないことになります。まして人をけなして事実に当たらないのはなおさらです。人をけなして当たっていても、真心と厚みのある道ではなく、そのうえ災いを招くもとになります。まして事実に当たらない場合はなおさらです。
解説
多言を戒め、とくに気分に任せた人の毀誉を戒めた一条です。『論語』里仁篇の「君子は言に訥にして行に敏ならんと欲す」や、衛霊公篇の「吾の人に於けるや、誰をか毀り誰をか誉めん」に通じます。益軒は、実際以上の賞賛は見る目のなさ、当たらない批判は罪、当たっている批判でさえ忠厚を欠き殃を招くと段階的に論じます。SNSで他人を軽く評する言葉が大きな問題を生む今、口に出す前に、それが必要か、事実か、思いやりがあるかを考える習慣の大切さを教えてくれます。
この章句が説くこと
多言毀誉忠厚慎言徳
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