酔古堂剣掃 / 集醒・人を甘んぜしむるの語
甘人之語,多不論其是非;激人之語,多不顧其利害。
書き下し
人を甘んぜしむるの語は、多く其の是非を論ぜず。人を激するの語は、多く其の利害を顧みず。
現代語訳
人を喜ばせる甘い言葉は、たいていそれが正しいか誤っているかを論じていません。人をたきつける言葉は、たいていそれがどんな利害をもたらすかを顧みていません。
解説
耳に心地よい言葉と、人を煽る言葉の危うさを指摘した対句です。甘人の語は、人をいい気持ちにさせるお世辞や迎合の言葉です。そこでは相手に好かれることが目的なので、事の是非は後回しにされます。激人の語は、人の感情をかき立てて行動に駆り立てる言葉です。そこでは勢いが目的なので、その結果どうなるかという利害は顧みられません。どちらも、聞く側の判断を曇らせるという点で共通しています。褒め言葉を聞いたら、それは本当に正しいのかと一度立ち止まり、怒りをあおる言葉を聞いたら、それに乗るとどうなるかを考えてみることです。情報があふれる今の時代にこそ役立つ心得でしょう。
この章句が説くこと
慎言判断処世甘言扇動
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