幽夢影 / 巻下・諛ふも罵るも口を以てし筆を以てする毋れ
不得已而諛之者,寧以口,毋以筆;不可耐而罵之者,亦寧以口,毋以筆。
書き下し
已むを得ずして之に諛ふ者は、寧ろ口を以てし、筆を以てすること毋れ。耐ふべからずして之を罵る者も、亦寧ろ口を以てし、筆を以てすること毋れ。
現代語訳
やむを得ず人にへつらうときは、口で言うにとどめ、筆で書いてはなりません。我慢できずに人を罵るときも、やはり口で言うにとどめ、筆で書いてはなりません。
解説
へつらいも罵りも、文字にしてはならないと戒めた一則です。口で言ったことはその場で消えますが、書いたものは後々まで残り、自分の品格を問われる証拠になります。友人の張竹坡は「前の句は品を立て、後の句は徳を立てる」と評し、張迂菴は「徳を立てるだけでなく、禍を免れるためでもある」と付け加えています。陸雲士は古い『筆銘』の「水に落ちても抜け出せるが、文に落ちれば生きられない」という言葉を引いています。今日では、メールや投稿に書いた言葉がいつまでも残り、思わぬところで広まります。感情が高ぶったときほど、書く前に一度手を止める用心が大切です。
この章句が説くこと
慎言筆禍処世修身謙虚
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