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慎思録 / 巻之三

君子之道。固不敢離物。又不敢逐物。夫逐物者。放其心而不知求。徇其欲而不知反。所以失道也。離物者。去倫理廢人事。非所以爲道也。

新字:君子之道。固不敢離物。又不敢逐物。夫逐物者。放其心而不知求。徇其欲而不知反。所以失道也。離物者。去倫理廃人事。非所以為道也。

書き下し

君子の道は、固より敢て物を離れず、又敢て物を逐はず。夫れ物を逐ふ者は、其の心を放ちて求むることを知らず、其の欲に徇ひて反ることを知らず。道を失ふ所以なり。物を離るる者は、倫理を去り人事を廃す。道を為す所以に非ざるなり。

現代語訳

君子の道は、もとより物事から離れることはせず、また物事を追いかけることもしません。物を追いかける者は、心を放って取り戻すことを知らず、欲に従って引き返すことを知りません。これが道を失う原因です。物から離れる者は、人倫を捨て人の務めを廃します。これは道を行う方法ではありません。

解説

君子の道は、物に溺れることと物から逃げることの両方を退ける中の道だと述べます。「其の心を放ちて求むることを知らず」は『孟子』告子上の「放心を求む」の章を踏まえています。物を離れて人倫を捨てる者とは、益軒の念頭では出家して世を離れる仏教や老荘の隠遁を指すと考えられます。朱子学は日常の人倫の中で道を行うことを重んじました。仕事や人間関係に呑まれすぎず、かといって逃げもしない、という均衡は現代の働き方にも通じる課題です。

この章句が説くこと

人倫中庸放心

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