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新論 / 長計

若夫繆聽西夷妄説、稱揚眩惑、以助長黠虜逆焰者、則宜痛禁絶之耳、或有犯禁者、處以造言亂民之刑、而見蠻貨蠻藥及羶罽之屬、必焚燬破裂、不許服用、使民賤戎狄如犬羊、惡之如豺狼、〈天平中詔、百姓有學習異端、蓄積幻術、厭魅呪咀、害傷百物者、首斬、從流、如有停住山林、佯道佛法、自作敎化、傳習授業、封印書符、合藥造毒、萬方作怪、違犯勅禁者、罪亦如此、古昔禁絶異左如是、所以使民知方者固宜然也、今若揚武遏蠻、聲敎既曁、百蠻稱臣奉貢、然後取其物而用之、亦未爲不可也、〉告接濟之姦者、與得敵首同賞、匿而不發者、與舍匿盗同罪、邦國能破虜艦者、功與陷敵壘均、見虜不撃者、論以逗撓、此皆一時權衡、亦足使臣民激發興起敬奉光訓矣、而大修守禦之備、慨然示天下以大憂、推赤心開至誠、一憂一樂、必與天下同之、庶是以鼓動天下矣、

新字:若夫繆聴西夷妄説、称揚眩惑、以助長黠虜逆炎者、則宜痛禁絶之耳、或有犯禁者、処以造言乱民之刑、而見蠻貨蠻薬及羶罽之属、必焚燬破裂、不許服用、使民賤戎狄如犬羊、悪之如豺狼、〈天平中詔、百姓有学習異端、蓄積幻術、厭魅呪咀、害傷百物者、首斬、従流、如有停住山林、佯道仏法、自作教化、伝習授業、封印書符、合薬造毒、万方作怪、違犯勅禁者、罪亦如此、古昔禁絶異左如是、所以使民知方者固宜然也、今若揚武遏蠻、声教既曁、百蠻称臣奉貢、然後取其物而用之、亦未為不可也、〉告接済之姦者、与得敵首同賞、匿而不発者、与舎匿盗同罪、邦国能破虜艦者、功与陥敵塁均、見虜不撃者、論以逗撓、此皆一時権衡、亦足使臣民激発興起敬奉光訓矣、而大修守禦之備、慨然示天下以大憂、推赤心開至誠、一憂一楽、必与天下同之、庶是以鼓動天下矣、

書き下し

若し夫れ繆りて西夷の妄説を聴き、称揚眩惑して、以て黠虜の逆焔を助長する者は、則ち宜しく痛く之を禁絶すべきのみ。或いは禁を犯す者有らば、処するに造言乱民の刑を以てし、而して蛮貨・蛮薬及び羶罽の属を見れば、必ず焚燬破裂して、服用を許さず、民をして戎狄を賤しむこと犬羊の如く、之を悪むこと豺狼の如くならしむ。(天平中の詔に、百姓に異端を学習し、幻術を蓄積し、厭魅呪咀して、百物を害傷する者有らば、首は斬、従は流。如し山林に停住し、佯りて仏法を道ひ、自ら教化を作し、伝習授業し、書符を封印し、薬を合せ毒を造り、万方怪を作し、勅禁に違犯する者有らば、罪も亦此くの如しと。古昔異左を禁絶すること是くの如し。民をして方を知らしむる所以の者固より宜しく然るべきなり。今若し武を揚げ蛮を遏め、声教既に曁び、百蛮臣と称し貢を奉ずれば、然る後に其の物を取りて之を用ふるも、亦未だ不可と為さざるなり。)接済の姦を告ぐる者は、敵首を得ると賞を同じくし、匿して発せざる者は、盗を舎匿すると罪を同じくし、邦国能く虜艦を破る者は、功敵塁を陥るると均しくし、虜を見て撃たざる者は、論ずるに逗撓を以てす。此れ皆一時の権衡なるも、亦臣民をして激発興起して光訓を敬奉せしむるに足らん。而して大いに守禦の備を修め、慨然として天下に示すに大憂を以てし、赤心を推し至誠を開き、一憂一楽、必ず天下と之を同じくせば、庶はくは是を以て天下を鼓動せん。

現代語訳

誤って西洋人のでたらめな説を聞き入れ、ほめそやし惑わされて、狡猾な夷狄の逆らう炎を助長する者については、厳しくこれを禁じ断つべきである。禁を犯す者があれば、流言で民を乱した罪の刑で処し、外国の品物や外国の薬、毛織物の類を見つけたら、必ず焼き捨て破り裂いて使用を許さず、民に夷狄を犬や羊のように卑しみ、山犬や狼のように憎ませる。(天平年間の詔に「人民で異端を学び、幻術を蓄え、まじないや呪いで多くのものを害する者があれば、首謀者は斬罪、従った者は流罪とする。もし山林にとどまり、偽って仏法を説き、勝手に教化を行い、伝え習わせて教え、護符を封じ書き、薬を調合し毒を作り、あらゆる怪しいことをして勅命の禁令に違反する者があれば、罪もこれと同じとする」とある。昔は異端や邪道をこのように禁じ断った。民に正しい方向を知らせるには、もとよりそうすべきなのである。いまもし武威を揚げて外夷を食い止め、教化がすでに及び、多くの外夷が臣と称して貢ぎ物を奉るようになれば、そのあとでその品物を取り入れて用いるのも、まだ不可とはしない。)外国船とひそかに通じる悪事を告発した者は、敵の首を取ったのと同じ賞を与え、隠して告発しない者は、盗賊をかくまったのと同じ罪とし、諸藩で外国船を打ち破った者は、敵の砦を落としたのと同じ功とし、外国船を見ても撃たない者は、ぐずぐずして進まない罪(逗撓)で論じる。これらはみな一時の便宜の措置であるが、それでも臣民を奮い立たせ、尊い教えを敬い奉じさせるには足りるだろう。そして大いに守りの備えを整え、憤りをこめて天下に大きな憂いを示し、まごころを推し広げ至誠を開いて、一つの憂いも一つの楽しみも必ず天下と共にすれば、願わくはこれによって天下を奮い立たせることができよう。

解説

正志斎は、西洋の説に惑わされる者の厳禁、外国の品物の焼却、外国船と通じる者の告発への褒賞、外国船を撃たない者の処罰など、強硬な措置を挙げる。割注では天平年間の詔を引き、古代の禁令を例とする。異国船打払令と同じ文政八年(1825)の文章で、正志斎自身がこれらを「一時の権衡」と断っている。他国の人を犬羊・豺狼にたとえる言葉は、当時の危機意識から出た正志斎の主張である。むしろ結びの「一憂一楽、必ず天下と之を同じくす」という、指導者が憂いを隠さず人々と共有する姿勢に、現代にも通じる要がある。

この章句が説くこと

攘夷禁令危機至誠民心異国船

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