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新論 / 長計

彼戎狄而自道其道、自常情視之、雖措之度外可也、而彼今大逞非望、欲必以夷變夏、澌滅正道、汚辱 神明、欺天罔人、傾人之民、奪人之國、而後已、詭術之與正道、相反如氷炭、茫茫宇宙、戎狄之道不息、則神聖之道不明、神聖之道不明、則戎狄之道不息、不變彼、則變於彼、勢不能相容、深謀遠慮者、將安得不掲正息詭、以除害於永世乎、

新字:彼戎狄而自道其道、自常情視之、雖措之度外可也、而彼今大逞非望、欲必以夷変夏、澌滅正道、汚辱 神明、欺天罔人、傾人之民、奪人之国、而後已、詭術之与正道、相反如氷炭、茫茫宇宙、戎狄之道不息、則神聖之道不明、神聖之道不明、則戎狄之道不息、不変彼、則変於彼、勢不能相容、深謀遠慮者、将安得不掲正息詭、以除害於永世乎、

書き下し

彼の戎狄にして自ら其の道を道とするは、常情自り之を視れば、之を度外に措くと雖も可なり。而るに彼今大いに非望を逞しくし、必ず夷を以て夏を変じ、正道を澌滅し、神明を汚辱し、天を欺き人を罔ひ、人の民を傾け、人の国を奪ひて、而る後に已まんと欲す。詭術の正道に与ける、相反すること氷炭の如し。茫茫たる宇宙、戎狄の道息まざれば、則ち神聖の道明らかならず、神聖の道明らかならざれば、則ち戎狄の道息まず。彼を変ぜざれば、則ち彼に変ぜられ、勢相容るること能はず。深謀遠慮の者、将た安んぞ正を掲げ詭を息めて、以て害を永世に除かざるを得んや。

現代語訳

あの戎狄が自分たちの道を自分たちで行っているだけなら、普通の感覚から見て、度外視しておいてもよい。ところが彼らは今、身の程を越えた野望を大いにほしいままにし、必ず夷狄の道で中華(わが国)を変え、正しい道を消し去り、神明をけがし、天を欺き人をだまし、人の民を傾けさせ、人の国を奪ってはじめてやめようとしている。詭弁の術と正しい道とは、氷と炭のように相反する。果てしないこの宇宙で、戎狄の道がやまなければ神聖の道は明らかにならず、神聖の道が明らかにならなければ戎狄の道はやまない。彼を変えなければ彼に変えられ、勢いとして両立はできない。深く謀り遠くを慮る者が、どうして正しいものを掲げて詭術をやめさせ、永く後の世のために害を除かずにいられようか。

解説

正志斎は、西洋が自国で自らの道を行うだけなら放っておいてよいが、彼らは他国の民を傾け国を奪うまでやまないと見て、両者は氷炭のように相容れないと論じる。「夷を以て夏を変ず」は『孟子』滕文公上の「夏を用ひて夷を変ず」を反転させた語である。当時の植民地拡大の報に接した危機意識から出た正志斎の主張で、相手の意図を一方的に断定するこの二者択一の論法は、後の攘夷論を強く方向づけた。現代では、相手の意図を見極めることと、二者択一に陥らず長期の害を見通すことの両方が、深謀遠慮の条件になる。

この章句が説くこと

華夷攘夷危機深謀正道孟子

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