新論 / 長計
戎狄者屛居於四肢、暮氣也、邪氣也、暮氣邪氣是爲陰、故索隱行怪、滅裂人道、而幽冥之説是講、褻天媚鬼、而荒唐之語是悦、寂滅萬物、而專由陰晦不祥之塗、今誠能反其道、變寂滅以生養、化陰晦以光明、易荒唐幽冥之説、以天命人心昭昭乎不可易之大道、而掲太陽威明、以照臨四海萬國、則爝火之耿耿、安得不熄、如此則其所恃以呑併諸國之本謀乖矣、轉所以變於彼者、而由變彼之道、豈非所以立大經之先務哉、
新字:戎狄者屛居於四肢、暮気也、邪気也、暮気邪気是為陰、故索隠行怪、滅裂人道、而幽冥之説是講、褻天媚鬼、而荒唐之語是悦、寂滅万物、而専由陰晦不祥之塗、今誠能反其道、変寂滅以生養、化陰晦以光明、易荒唐幽冥之説、以天命人心昭昭乎不可易之大道、而掲太陽威明、以照臨四海万国、則爝火之耿耿、安得不熄、如此則其所恃以呑併諸国之本謀乖矣、転所以変於彼者、而由変彼之道、豈非所以立大経之先務哉、
書き下し
戎狄は四肢に屏居す、暮気なり、邪気なり。暮気邪気は是れ陰たり。故に隠を索め怪を行ひ、人道を滅裂して、幽冥の説是れ講じ、天を褻し鬼に媚びて、荒唐の語是れ悦び、万物を寂滅して、専ら陰晦不祥の塗に由る。今誠に能く其の道に反し、寂滅を変じて以て生養し、陰晦を化して以て光明にし、荒唐幽冥の説を易ふるに、天命人心の昭昭乎として易ふべからざるの大道を以てし、太陽の威明を掲げて、以て四海万国を照臨せば、則ち爝火の耿耿たる、安んぞ熄まざるを得ん。此くの如くなれば則ち其の恃みて以て諸国を呑併する所の本謀乖かん。彼に変ぜらるる所以の者を転じて、彼を変ずるの道に由る、豈に大経を立つる所以の先務に非ずや。
現代語訳
戎狄(西洋諸国)は大地の手足の位置に退いており、暮れの気であり、邪な気である。暮れの気、邪な気は陰である。だから隠れたものを探り怪しいことを行い、人の道を引き裂いて、死後の暗い世界の説ばかりを説き、天をけがし鬼神にこび、でたらめな言葉ばかりを喜び、万物を寂滅に帰して、もっぱら暗く不吉な道をたどる。いま本当にその道の反対を行い、寂滅を変えて生かし養い、暗さを化して光明とし、でたらめで暗い死後の説を、天命と人心に照らして明らかで動かしがたい大道に置き換え、太陽の威光を掲げて天下万国を照らすなら、たいまつの小さな火のちらつきが、どうして消えずにいられようか。そうなれば、彼らが諸国を併呑するよりどころとしている根本の謀は崩れる。彼らに変えられてしまう道筋を逆転させて、彼らを変える道に拠ることこそ、大いなる根本を立てるための第一の務めではないか。
解説
この章句が説くこと
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『新論』長計彼の戎狄にして自ら其の道を道とするは、常情自り之を視れば、之を度外に措くと雖も可なり。而るに彼今大いに非望を逞しくし、必ず夷を以て夏を変じ、正道を澌滅し、神明を汚辱し、天を欺き人を罔ひ、人の民を傾け、人の国を奪ひて、而る後に已まんと欲す。詭術の正道に与ける、相反すること氷炭の如し。茫茫たる宇宙、戎狄の道息まざれば、則ち神聖の道明らかならず、神聖の道明らかならざれば、則ち戎狄の道息まず。彼を変ぜざれば、則ち彼に変ぜられ、勢相容るること能はず。深謀遠慮の者、将た安んぞ正を掲げ詭を息めて、以て害を永世に除かざるを得んや。
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『新論』長計後中国多故に属して、遠人至らず、廟堂遠大の略無く、土疆日に蹙まりて、神聖の天下を経営する所以の意熄む。近世の若きに至りては、則ち夷狄強梁にして、亦大勢に見る有り、素定の略を挟みて、以て其の呑噬を逞しくすること三百余年、傲然として敢へて糠を神州に舐め、神聖の夷狄を御する所以の略を倒用して、反つて以て中国を謀らんと欲す。而して中国未だ一定の策を画せず、朝野の論、一是一非、因循苟且にして、以て姑息の慮を為すを免れず。赫赫たる神明の邦を以てして、坐して腥羶の異類をして我が辺陲に陸梁せしむ、亦羞づべからずや。夫れ億兆に君師たる、其の気世を蓋ふに足り、胸臆四海を容るるに足り、従容として天下の事に処して余り有る者は、人を制する者なり。見る所目前の利害に過ぎざる者は、事多く思慮の外に出で、天下を胸中に運らすこと能はず、人に制せらるる者なり。海外の事、目の未だ嘗て見ざる所、故に黠虜以て吾が思慮の未だ及ばざる所を以て之を侮弄するを得。亦怪しむに足らざるなり。
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『新論』長計神聖大経を立て、以て万世を維持す。典礼既に明らかにして、奕世遵奉し、旧物猶ほ存する者此くの如し。則ち神聖の念慮の曁ぶ所も、亦見るべきなり。後、異端並び起るに及びて、大道明らかならず、廟堂に永久の慮無く、朝政陵夷し、民心日に漓くして、神聖の万世を維持する所以の意乖けり。近世の若きに至りては、則ち戎虜狡黠にして、頗る大経を立つる者に似たる有り。左道を執りて以て民心を蠱し、善教に非ずと雖も、亦教を以て号と為し、以て民心を得るに足る。至る所祠宇を焚燬し、胡神を瞻礼して、以て民志を傾く。故に逆焔の煽る所、殆ど六合に遍く、悍然として敢へて毒を神州に試み、神聖の夷俗を変ずる所以の方を倒用して、反つて以て中国を変ぜんと欲す。而るに中国未だ不易の基を立てず、衆庶の心、離合聚散し、架漏牽補して、以て一日の計を為すに過ぎず。赫赫たる神明の邦を以てして、坐して腥羶の異類をして我が人民を欺罔せしむ、亦羞づべからずや。
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『新論』長計若し夫れ繆りて西夷の妄説を聴き、称揚眩惑して、以て黠虜の逆焔を助長する者は、則ち宜しく痛く之を禁絶すべきのみ。或いは禁を犯す者有らば、処するに造言乱民の刑を以てし、而して蛮貨・蛮薬及び羶罽の属を見れば、必ず焚燬破裂して、服用を許さず、民をして戎狄を賤しむこと犬羊の如く、之を悪むこと豺狼の如くならしむ。(天平中の詔に、百姓に異端を学習し、幻術を蓄積し、厭魅呪咀して、百物を害傷する者有らば、首は斬、従は流。如し山林に停住し、佯りて仏法を道ひ、自ら教化を作し、伝習授業し、書符を封印し、薬を合せ毒を造り、万方怪を作し、勅禁に違犯する者有らば、罪も亦此くの如しと。古昔異左を禁絶すること是くの如し。民をして方を知らしむる所以の者固より宜しく然るべきなり。今若し武を揚げ蛮を遏め、声教既に曁び、百蛮臣と称し貢を奉ずれば、然る後に其の物を取りて之を用ふるも、亦未だ不可と為さざるなり。)接済の姦を告ぐる者は、敵首を得ると賞を同じくし、匿して発せざる者は、盗を舎匿すると罪を同じくし、邦国能く虜艦を破る者は、功敵塁を陥るると均しくし、虜を見て撃たざる者は、論ずるに逗撓を以てす。此れ皆一時の権衡なるも、亦臣民をして激発興起して光訓を敬奉せしむるに足らん。而して大いに守禦の備を修め、慨然として天下に示すに大憂を以てし、赤心を推し至誠を開き、一憂一楽、必ず天下と之を同じくせば、庶はくは是を以て天下を鼓動せん。
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『新論』長計今夫れ不抜の業を開かんと欲せば、宜しく其の大経を立てて、夏夷の邪正を明らかにすべし。神聖建国の大体は、臣既に粗ぼ之を言へり。今既に大経を立つれば、則ち当に四海を以て一家と為し、万世を一日と為し、列聖の遺緒に因りて、以て時措の宜しきを図るべし。夏夷の邪正を明らかにせんと欲せば、則ち当に天人の大道を闡きて、以て趨舎の準と為すべし。
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『新論』序論謹んで按ずるに、神州は太陽の出づる所、元気の始まる所にして、天日の嗣、世々宸極を御し、終古易らず、固より大地の元首にして、万国の綱紀なり。誠に宜しく宇内を照臨し、皇化の曁ぶ所、遠邇有ること無かるべし。而るに今、西荒の蛮夷、脛足の賤を以て、四海に奔走し、諸国を蹂躪し、眇視跛履、敢へて上国を凌駕せんと欲す。何ぞ其れ驕れるや。(地の天中に在る、渾然として端無く、宜しく方隅無きが如くなるべし。然れども凡そ物は自然の形体有りて存せざるは莫し。而して神州其の首に居る。故に幅員甚だしくは広大ならずして、其の万方に君臨する所以の者、未だ嘗て一たびも姓を易へ位を革めず。西洋諸蕃は、其の股脛に当る。故に奔舶走舸、遠くして至らざる莫きなり。而して海中の地、西夷名づけて亜墨利加洲と曰ふ者に至りては、則ち其の背後なり。故に其の民愚戇にして、為す所有る能はず。是れ皆自然の形体なり。)是れ其の理、宜しく自ら隕越して以て傾覆を取るべし。然れども天地の気は盛衰無き能はず、而して人衆ければ則ち天に勝つも、亦其の勢の已むを得ざる所なり。苟くも豪傑奮起して以て天功を亮くる有るに非ざるよりは、則ち天地も亦将に胡羯腥膻の誣罔する所と為りて然る後に已まんとす。
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