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新論 / 長計

神聖立大經、以維持萬世、典禮既明、奕世遵奉、舊物猶存者如此、則 神聖念慮之所曁、亦可見也、後及異端並起、而大道不明、廟堂無永久之慮、朝政陵夷、民心日漓、而 神聖所以維持萬世之意乖矣、至若近世、則戎虜狡黠、頗有似立大經者、執左道以蠱民心、雖非善敎、亦以敎爲號、足以得民心、所至焚燬祠宇、瞻禮胡神、以傾民志、故逆焰所煽、殆遍六合、悍然敢試毒於 神州、欲倒用 神聖所以變夷俗之方、反以變 中國、而中國未立不易之基、衆庶之心、離合聚散、不過於架漏牽補、以爲一日之計、以赫赫 神明之邦、而坐使腥羶異類欺罔我人民、不亦可羞乎、

新字:神聖立大経、以維持万世、典礼既明、奕世遵奉、旧物猶存者如此、則 神聖念慮之所曁、亦可見也、後及異端並起、而大道不明、廟堂無永久之慮、朝政陵夷、民心日漓、而 神聖所以維持万世之意乖矣、至若近世、則戎虜狡黠、頗有似立大経者、執左道以蠱民心、雖非善教、亦以教為号、足以得民心、所至焚燬祠宇、瞻礼胡神、以傾民志、故逆炎所煽、殆遍六合、悍然敢試毒於 神州、欲倒用 神聖所以変夷俗之方、反以変 中国、而中国未立不易之基、衆庶之心、離合聚散、不過於架漏牽補、以為一日之計、以赫赫 神明之邦、而坐使腥羶異類欺罔我人民、不亦可羞乎、

書き下し

神聖大経を立て、以て万世を維持す。典礼既に明らかにして、奕世遵奉し、旧物猶ほ存する者此くの如し。則ち神聖の念慮の曁ぶ所も、亦見るべきなり。後、異端並び起るに及びて、大道明らかならず、廟堂に永久の慮無く、朝政陵夷し、民心日に漓くして、神聖の万世を維持する所以の意乖けり。近世の若きに至りては、則ち戎虜狡黠にして、頗る大経を立つる者に似たる有り。左道を執りて以て民心を蠱し、善教に非ずと雖も、亦教を以て号と為し、以て民心を得るに足る。至る所祠宇を焚燬し、胡神を瞻礼して、以て民志を傾く。故に逆焔の煽る所、殆ど六合に遍く、悍然として敢へて毒を神州に試み、神聖の夷俗を変ずる所以の方を倒用して、反つて以て中国を変ぜんと欲す。而るに中国未だ不易の基を立てず、衆庶の心、離合聚散し、架漏牽補して、以て一日の計を為すに過ぎず。赫赫たる神明の邦を以てして、坐して腥羶の異類をして我が人民を欺罔せしむ、亦羞づべからずや。

現代語訳

神聖(天祖と歴代の天皇)は大いなる根本の道を立てて万世を保とうとした。典礼はすでに明らかで、代々これを遵奉し、古い制度がなお残っていることはこのとおりである。とすれば、神聖の思いが及んだところもまた見て取れる。のちに異端が並び起こると、大道は明らかでなくなり、朝廷には永く先を見通す配慮がなくなり、朝廷の政治は衰え、民心は日ごとに薄くなって、神聖が万世を保とうとした意図は損なわれた。近世に至ると、外夷は狡猾で、大いなる根本を立てる者にいくらか似たところがある。邪道を手にして民心を惑わし、善い教えではないものの、やはり「教え」を名のって民心をつかむことができる。行く先々で祠や社を焼き払い、異国の神を拝ませて民の志を傾けさせる。だからその逆らう炎の煽るところはほとんど天下に行きわたり、ふてぶてしくもあえて神州に毒を試み、神聖が夷狄の風俗を変えた方法を逆手に取って、かえってわが中国(日本)を変えようとしている。ところがわが国はまだ揺るがない基礎を立てておらず、民衆の心は離れたり集まったりして定まらず、雨漏りを繕い破れを継ぎはぎするように一日しのぎの策を立てるにすぎない。輝かしい神明の国でありながら、手をこまねいて生臭い異類にわが人民を欺かせているのは、なんと恥ずべきことではないか。

解説

長計の後半の冒頭で、正志斎は神聖が「大経」を立てて万世を保とうとした意図が、異端の流行と朝政の衰えで損なわれたと述べる。そのうえで、西洋諸国がキリスト教を「教え」として掲げて民心をつかみ、祠を焼いて国を傾けると説き、日本にはそれに対抗する不易の基がないと嘆く。異国船打払令の年(1825)に書かれた危機意識の表れで、宗教を侵略の手段とみる見方は正志斎の主張として読むべきものである。現代に移せば、相手が理念で人を束ねているとき、こちらは場当たりの継ぎはぎで済ませていないか、という問いになる。

この章句が説くこと

大経民心危機国体長計異端

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