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新論 / 長計

夫善維持萬世者、念慮永遠、必先立其大經焉、而天命人心、物則民彝、瞭然如觀火、然後敎訓化導、循序而施之、萬世之典常、固我胸中之事也、昔者 天祖以神道設敎、明忠孝以立人紀、其所以維持萬世者、固既瞭然、始於太古、而垂於無窮、天孫奉承、以弘皇化、莫非 天祖設敎之遺意、 太祖征戰、毎仗神威、以成武功、〈 太祖之平中土、先禮祭神祇、背負 日神之威而進戰、其如提韴靈劍、及以頭八咫烏爲郷導等事、皆奉 天神之敎者、而祭天神地祇於丹生川上、勅道臣祭高皇産靈尊之類、莫不皆仗神威也、〉及定中州、立靈畤於鳥見、報祭 皇祖天神、以申大孝、〈初撃長髓彦、得鵄瑞而遂克之、故號其地爲鵄邑、即鳥見也、則其立畤於此、蓋有以也、〉

新字:夫善維持万世者、念慮永遠、必先立其大経焉、而天命人心、物則民彝、瞭然如観火、然後教訓化導、循序而施之、万世之典常、固我胸中之事也、昔者 天祖以神道設教、明忠孝以立人紀、其所以維持万世者、固既瞭然、始於太古、而垂於無窮、天孫奉承、以弘皇化、莫非 天祖設教之遺意、 太祖征戦、毎仗神威、以成武功、〈 太祖之平中土、先礼祭神祇、背負 日神之威而進戦、其如提韴霊剣、及以頭八咫烏為郷導等事、皆奉 天神之教者、而祭天神地祇於丹生川上、勅道臣祭高皇産霊尊之類、莫不皆仗神威也、〉及定中州、立霊畤於鳥見、報祭 皇祖天神、以申大孝、〈初撃長髄彦、得鵄瑞而遂克之、故号其地為鵄邑、即鳥見也、則其立畤於此、蓋有以也、〉

書き下し

夫れ善く万世を維持する者は、念慮永遠にして、必ず先づ其の大経を立つ。而して天命人心、物則民彝、瞭然として火を観るが如くにして、然る後教訓化導し、序に循ひて之を施す。万世の典常は、固より我が胸中の事なり。昔者天祖神道を以て教へを設け、忠孝を明らかにして以て人紀を立つ。其の万世を維持する所以の者、固より既に瞭然たり。太古に始まりて、無窮に垂る。天孫奉承して、以て皇化を弘む。天祖設教の遺意に非ざる莫し。太祖の征戦するや、毎に神威に仗りて、以て武功を成す。(太祖の中土を平らぐるや、先づ神祇を礼祭し、日神の威を背負ひて進戦す。其の韴霊剣を提げ、及び頭八咫烏を以て郷導と為す等の事の如きは、皆天神の教へを奉ずる者にして、天神地祇を丹生の川上に祭り、道臣に勅して高皇産霊尊を祭らしむるの類、皆神威に仗らざる莫きなり。)中州を定むるに及び、霊畤を鳥見に立て、皇祖天神を報祭し、以て大孝を申ぶ。(初め長髄彦を撃ち、鵄の瑞を得て遂に之に克つ。故に其の地を号して鵄邑と為す、即ち鳥見なり。則ち其の畤を此に立つるは、蓋し以有るなり。)

現代語訳

そもそも万世をうまく保つ者は、思慮が永遠に及び、必ずまずその根本の道を立てる。そして天の命と人の心、物の法則と民の常の道が、火を見るように明らかになってから、教え導き、順序に従ってそれを施す。万世の法と常道は、もとより自分の胸の内にあることである。昔、天祖(天照大神)は神の道によって教えを設け、忠と孝を明らかにして人の道の筋を立てた。万世を保つための方法は、もとよりすでに明らかであった。それは太古に始まって、果てしない後世に伝わる。天孫(瓊瓊杵尊)はそれを受け継いで天皇の徳化を広めた。どれも天祖が教えを設けた遺志でないものはない。太祖(神武天皇)は征戦のたびに神の威光に拠って武功を立てた。(太祖が中つ国を平定するとき、まず天地の神々を祭り、日の神の威光を背負って進軍した。韴霊剣を手にし、頭八咫烏を道案内としたことなどは、みな天の神の教えを奉じたものであり、天神地祇を丹生の川上で祭り、道臣命に命じて高皇産霊尊を祭らせたことなども、すべて神の威光に拠らないものはない。)中州(大和)を平定すると、鳥見に祭場(霊畤)を設け、皇祖である天神に感謝の祭りをささげて、大いなる孝を表した。(初め長髄彦を討ったとき、金色の鵄の瑞祥を得てついに勝った。だからその地を鵄邑と名づけた。これが鳥見である。祭場をここに設けたのには理由があったのである。)

解説

前段の「成を久遠に期する」教化の本源を、正志斎は天祖が神道によって教えを設け忠孝を明らかにしたことに求める。神武天皇が韴霊剣や頭八咫烏に導かれ、丹生の川上で神々を祭り、大和平定後に鳥見に霊畤を立てて皇祖を祭ったという『日本書紀』の記事を引き、祭祀によって孝を示したことを万世維持の範とする。この祭政一致の国体論は正志斎の中心的主張で、近代には国家主義の文脈で読まれた歴史もある。一方、組織を長く保つにはまず根本の価値を立て、順序立てて伝えよという点は普遍的である。

この章句が説くこと

祭祀忠孝教化国体長計日本書紀

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