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新論 / 守禦

臣故論守禦之策、必首於興士風、欲其以義而率天下也、欲以義率天下、則宜仗天下公義以示其好惡也、今攘夷之令布天下、因天下羞惡之心、以明大義於天下、天下知所向矣、固宜感憤激勵日夜相勧勉智者獻謀勇者致死大有所振起作興、速驅除驕虜以立大義於天地也、而偸惰之俗未改、其能以必死自期者、蓋無幾也、

新字:臣故論守禦之策、必首於興士風、欲其以義而率天下也、欲以義率天下、則宜仗天下公義以示其好悪也、今攘夷之令布天下、因天下羞悪之心、以明大義於天下、天下知所向矣、固宜感憤激励日夜相勧勉智者献謀勇者致死大有所振起作興、速駆除驕虜以立大義於天地也、而偸惰之俗未改、其能以必死自期者、蓋無幾也、

書き下し

臣故に守禦の策を論ずるに、必ず士風を興すを首とするは、其の義を以て天下を率ゐんことを欲すればなり。義を以て天下を率ゐんと欲せば、則ち宜しく天下の公義に仗りて以て其の好悪を示すべし。今攘夷の令天下に布き、天下羞悪の心に因りて、以て大義を天下に明らかにす。天下向かふ所を知れり。固より宜しく感憤激励し日夜相勧勉し、智者は謀を献じ勇者は死を致し大いに振起作興する所有りて、速やかに驕虜を駆除し以て大義を天地に立つべきなり。而るに偸惰の俗未だ改まらず、其の能く必死を以て自ら期する者、蓋し幾ばくも無きなり。

現代語訳

私(臣)が守りの策を論じるにあたって、必ず武士の気風を興すことを第一としたのは、義によって天下を率いたいと願うからである。義によって天下を率いようとするなら、天下の公の義に拠って、何を好み何を憎むかを示すべきである。いま攘夷の令(異国船打払令)が天下に布かれ、天下の人々の恥を知り悪を憎む心に基づいて、大義を天下に明らかにした。天下は向かうべきところを知ったのである。当然、感じ入り奮い立って日夜互いに励まし合い、知恵ある者は謀をささげ、勇ある者は命をささげ、大いに奮い興すところがあって、速やかに驕った外敵を追い払い、大義を天地に立てるべきである。ところが、怠けてその場しのぎの風俗はまだ改まらず、必死の覚悟を自ら定められる者は、ほとんどいない。

解説

正志斎は守禦の策の筆頭に士風の振興を置いた理由を、義によって天下を率いるためだと明かす。そして文政八年(1825)の異国船打払令を「攘夷の令」と呼び、天下に大義を示したものと評価しつつ、人々の怠惰な風はなお改まらないと嘆く。この主張は当時の対外危機意識から出たもので、後に尊王攘夷論を支える言説として広く読まれた。方針を掲げても人の心が動かなければ実が伴わないという指摘は、号令だけで組織が変わらない現実を見つめる視点として、今日も参考になる。

この章句が説くこと

士風大義攘夷民心危機水戸学

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