新論 / 守禦
凡如是之類、古今經制、各有所宜、能擇其有益凶荒軍旅者、而盡行之、嘉穀盈溢海内、海内元氣、可以無餒也、〈凡理財穀、其術不一端、今欲行之、興一利則一害隨生、臨時制宜、不可執一論之、故如其詳、則將別有所論述、今特擧其一端、不詳載其説也、〉故水土之産、人工之作、山嶽之秘、米穀之儲、息其糜、廣其生、害者除之、利者興之、深謀遠慮、相時弛張、設之權衡、立之制度、將待其人而後行、凡此皆資糧之峙、不可不及間暇而審議之也、
新字:凡如是之類、古今経制、各有所宜、能択其有益凶荒軍旅者、而尽行之、嘉穀盈溢海内、海内元気、可以無餒也、〈凡理財穀、其術不一端、今欲行之、興一利則一害随生、臨時制宜、不可執一論之、故如其詳、則将別有所論述、今特挙其一端、不詳載其説也、〉故水土之産、人工之作、山嶽之秘、米穀之儲、息其糜、広其生、害者除之、利者興之、深謀遠慮、相時弛張、設之権衡、立之制度、将待其人而後行、凡此皆資糧之峙、不可不及間暇而審議之也、
書き下し
凡そ是くの如きの類、古今の経制、各宜しき所有り。能く其の凶荒軍旅に益有る者を択びて、尽く之を行はば、嘉穀海内に盈溢し、海内の元気、以て餒うること無かるべし。(凡そ財穀を理むる、其の術一端ならず。今之を行はんと欲せば、一利を興せば則ち一害随ひて生ず。時に臨みて宜しきを制し、一を執りて之を論ずべからず。故に其の詳の如きは、則ち将に別に論述する所有らんとす。今特に其の一端を挙げ、其の説を詳載せざるなり。)故に水土の産、人工の作、山嶽の秘、米穀の儲、其の糜を息め、其の生を広め、害ある者は之を除き、利ある者は之を興し、深謀遠慮、時に相して弛張し、之が権衡を設け、之が制度を立つるは、将に其の人を待ちて後に行はれんとす。凡そ此れ皆資糧の峙へにして、間暇に及びて之を審議せざるべからざるなり。
現代語訳
このような類のものは、昔と今の経済制度にそれぞれ適したところがある。凶作や戦争に役立つものをよく選んで、すべて実行すれば、よい穀物が国中にあふれ、国の生気は飢えることがないだろう。(およそ財貨と穀物を治めるには、その方法は一つではない。いまそれを行おうとすれば、一つの利を興すと一つの害がそれに伴って生じる。その時に臨んで適切に定めるべきで、一つの考えに固執して論じることはできない。だからその詳細については、別に論述するつもりである。ここでは一端を挙げただけで、その説を詳しくは載せない。)だから土地の産物、人の手による製品、山に眠る鉱物、米穀の蓄えについて、浪費をやめ、生産を広め、害あるものは除き、利あるものは興し、深く遠く考え、時勢を見て緩めたり締めたりし、釣り合いをとる仕組みを設け、制度を立てることは、ふさわしい人物を得てはじめて行われるものである。これらはみな資材と糧食の蓄えであって、平穏なうちに詳しく議論しておかねばならない。
解説
この章句が説くこと
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『政談』右四册大意の事其の外のことは是に連れて自から直るへし、上に計り御倹約有りて御勝手なをりたりとも、万民困究せば宜しからざる御事なり、上下ともに富豊になりて御代の長久にあらんこと願ひ奉る御ことなり、偖第二册目に記したる役儀のこと人の使ひやう是亦聖人の奥意なり、法の立やうて何程に宜しくしたりとも、其の法を取扱ふ人なき時は無益の物になることなり、四册の大意斯の如し、機事密ならさる時は害生すると云ことありて、御政務の上のことはあからさまに人に語るべきことにあらざる故、此の物語は弟子にも書せ侍らず、自身老眼悪筆にて認め侍るなり、
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『新論』守禦兵衆を増せば、則ち冒進以て開け、兵旅を訓練する者は、用ゐて以て文具と為すに過ぎず、邦国を富ます者は、適に以て驕心を生ずるに足る。守備を班てば、則ち随ひて尾大の患を成し、屯戍を設くれば則ち兵卒横暴にして、民を蠧み俗を傷る。墩台を立て駅逓を謹めば、則ち徭役繁多にして、以て百姓を擾す。巨艦を製し諸物を運べば、則ち姦闌詰め難し。大銃を鋳、干鹵を製し、弓弩を教ふれば、則ち空疎衒技の徒進み、材を生じ物を備ふれば、則ち欺罔釣利の者聚まる。金石を保嗇すれば、則ち民或いは其の業を失ひ、軽重を権り物価を平らかにすれば、則ち貿易姦詐を生ず。夫れ此くの若くんば、則ち事一の為すべき者無し。語に曰く、君子は義に喩り、小人は利に喩ると。苟も義利をして弁ぜざらしめ、小人にして君子の器に乗らば、則ち天下の利、未だ其の変じて害と為らざるを見ざるなり。
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『政談』出替り奉公人の締りの事斯の如く法を立ては奉公人慥になりて当時のやうなる不埒は曽てあるましきなり、其上地頭御代官もむさといたしたるもの奉公に出すへからすと名主に申し付け、畢竟手前の世話になる故面々の吟味強かるべし、田舎にても親親類と中たかひたるもの、又は所にて悪事したるもの江戸をかくれ家にして走り出ては、奉公するものなくなりて田舎もよくをさまるへきなり、畢竟斯の如く成行たらは武家は面々その知行所のものを使ひ、手前にあまるも親類近付きの懇ろなる人の方へならでは遣さぬことになるべし、御代官所の人は御蔵米とり并に町方にて召し使ふことになるべし、諸大名も渡り者を召し使ふこと自然と相やむへし、されは足軽中間并に家中の召使に当時の体にては知行所に人あり合はす、自から他所へ出たるものを人かへしすることなるへし、諸大名皆人返しをすることにならは、御城下の雑人少なくなるへし、但し御城下の出替り奉公人は関八州の人に限るべきか、遠国は地頭御代官の取捌不便利なるべし、
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