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政談 / 諸役人に器量を選ふ事

惣して今の世は諸役人ともに器量の人なし、是れ國家を第一とするに大なる憂ひなり、惣して人と法との二つをうけて知るへきこと也、法は仕方なり、人とは夫を取扱ふ人也、人さへ善けれは仕方は惡しく定めたりとも、人々器量ある故能く取扱ひて國は治まるなり、人なければ仕方を何程に吟味して能くし置きたりとも、取扱ふ人未熟なる故其の仕方のもとまて違ひて、覺えす惡しくなりて仕方を吟味して立てたるも何の用にも立たぬなり、故に國を治むる道は人を知ることを第一肝要なることとすること古より聖人の道斯の如し、

新字:惣して今の世は諸役人ともに器量の人なし、是れ国家を第一とするに大なる憂ひなり、惣して人と法との二つをうけて知るへきこと也、法は仕方なり、人とは夫を取扱ふ人也、人さへ善けれは仕方は悪しく定めたりとも、人々器量ある故能く取扱ひて国は治まるなり、人なければ仕方を何程に吟味して能くし置きたりとも、取扱ふ人未熟なる故其の仕方のもとまて違ひて、覚えす悪しくなりて仕方を吟味して立てたるも何の用にも立たぬなり、故に国を治むる道は人を知ることを第一肝要なることとすること古より聖人の道斯の如し、

書き下し

惣して今の世は諸役人ともに器量の人なし、是れ国家を第一とするに大なる憂ひなり、惣して人と法との二つをうけて知るへきこと也、法は仕方なり、人とは夫を取扱ふ人也、人さへ善けれは仕方は悪しく定めたりとも、人々器量ある故能く取扱ひて国は治まるなり、人なければ仕方を何程に吟味して能くし置きたりとも、取扱ふ人未熟なる故其の仕方のもとまて違ひて、覚えす悪しくなりて仕方を吟味して立てたるも何の用にも立たぬなり、故に国を治むる道は人を知ることを第一肝要なることとすること古より聖人の道斯の如し、

現代語訳

総じて今の世は、どの役人にも器量のある人がいない。これは国家にとって第一の大きな憂いである。そもそも「人」と「法」の二つに分けて理解すべきである。法とはやり方(制度)であり、人とはそれを取り扱う人である。人さえよければ、やり方が悪く定められていても、一人ひとりに器量があるのでうまく取り扱って国は治まる。人がいなければ、やり方をどれほど吟味してよく整えておいても、取り扱う人が未熟なので、そのやり方の根本まで食い違い、知らぬ間に悪くなって、吟味して立てたやり方も何の役にも立たなくなる。だから国を治める道は人を知ることを第一の肝要とする。昔から聖人の道はこのようである。

解説

『政談』巻三の「諸役人に器量を選ぶ事」の冒頭で、徂徠はまず制度(法)と運用する人を分け、国の治乱を決めるのは人の側だと言い切る。制度をいくら精密にしても、扱う人が未熟なら趣旨から外れて形骸化するという指摘である。徂徠は聖人の道を礼楽刑政という制度として捉えた思想家だが、その制度を生かすのも人だと見ていた。仕組みづくりに熱心な組織ほど、仕組みを回す人の器量を育て、見極めることを後回しにしていないか点検する価値がある。

この章句が説くこと

人材制度器量治国政談運用

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