新論 / 守禦
金銀銅鐵鉛錫玉石、凡山嶽所藏、宜恡其用而禁其糜焉、今梵宮裝閣、及他玩好諸物、以至閭閻用器婦女衣帶、莫不塗金抹銀、則銷金之禁、不可不嚴也、〈西土史書所載、有出其府中黄金銀物以供軍用者、有禁金銀薄者、有禁織成金者、古人所以用金銀者、在此而不在彼可見、唐六典有十四種金、曰、銷金拍金鍍金織金砑金披金泥金鏤金撚金戧金圏金貼金嵌金裏金、宋時禁糜金以飾服器、又禁金銀箔線貼金銷金蹙金線裝貼什器土木玩用之物、非命婦不得以爲首飾、冶宋主所用、悉送官、諸州寺觀、以金箔飾像者、自齎金銀工價、就思文院換給、又禁僧求丐金銀珠玉錯末和泥以爲塔像、又禁内庭自中宮以下、並不得銷金貼金間金戭金解剔金陷金明金泥金楞金背影金盤金織金金線撚絲、裝着衣服、並不得以金爲飾、其外庭臣庶家、悉皆斷禁、是他歴代申禁、無所不至、其重發天地之藏之意、亦可見也、〉
新字:金銀銅鉄鉛錫玉石、凡山嶽所蔵、宜恡其用而禁其糜焉、今梵宮装閣、及他玩好諸物、以至閭閻用器婦女衣帯、莫不塗金抹銀、則銷金之禁、不可不厳也、〈西土史書所載、有出其府中黄金銀物以供軍用者、有禁金銀薄者、有禁織成金者、古人所以用金銀者、在此而不在彼可見、唐六典有十四種金、曰、銷金拍金鍍金織金砑金披金泥金鏤金撚金戧金圏金貼金嵌金裏金、宋時禁糜金以飾服器、又禁金銀箔線貼金銷金蹙金線装貼什器土木玩用之物、非命婦不得以為首飾、冶宋主所用、悉送官、諸州寺観、以金箔飾像者、自齎金銀工価、就思文院換給、又禁僧求丐金銀珠玉錯末和泥以為塔像、又禁内庭自中宮以下、並不得銷金貼金間金戭金解剔金陥金明金泥金楞金背影金盤金織金金線撚糸、装着衣服、並不得以金為飾、其外庭臣庶家、悉皆断禁、是他歴代申禁、無所不至、其重発天地之蔵之意、亦可見也、〉
書き下し
金銀・銅鉄・鉛錫・玉石、凡そ山嶽の蔵する所は、宜しく其の用を恡みて其の糜を禁ずべし。今梵宮・装閣、及び他の玩好の諸物、以て閭閻の用器・婦女の衣帯に至るまで、金を塗り銀を抹せざる莫し。則ち銷金の禁、厳ならざるべからざるなり。(西土の史書に載する所、其の府中の黄金銀物を出して以て軍用に供する者有り、金銀薄を禁ずる者有り、織成金を禁ずる者有り。古人の金銀を用ゐる所以の者、此に在りて彼に在らざること見るべし。唐六典に十四種の金有り、曰く、銷金・拍金・鍍金・織金・砑金・披金・泥金・鏤金・撚金・戧金・圏金・貼金・嵌金・裏金と。宋の時糜金以て服器を飾るを禁じ、又金銀箔線・貼金・銷金・蹙金線にて什器・土木・玩用の物を装貼するを禁じ、命婦に非ざれば以て首飾と為すを得ず。冶宋主の用ゐる所は、悉く官に送らしむ。諸州の寺観、金箔を以て像を飾る者は、自ら金銀工価を齎し、思文院に就きて換給せしむ。又僧の金銀珠玉を求丐し錯末して泥に和し以て塔像を為るを禁ず。又内庭は中宮より以下、並びに銷金・貼金・間金・戭金・解剔金・陥金・明金・泥金・楞金・背影金・盤金・織金・金線撚糸もて衣服に装着するを得ず、並びに金を以て飾と為すを得ざらしむ。其の外庭の臣庶の家も、悉く皆断禁す。是れ他の歴代の申禁、至らざる所無し。其の天地の蔵を発くを重んずるの意も、亦見るべきなり。)
現代語訳
金・銀・銅・鉄・鉛・錫・玉・石など、山に眠るものは、使うのを惜しんで浪費を禁じるべきである。いまは寺院や飾り立てた楼閣、そのほかの愛玩品から、町の人々の日用品、婦人の衣服や帯に至るまで、金を塗り銀を貼らないものはない。だから金箔などで飾ることの禁令は、厳しくしなければならない。(中国の史書には、宮中の金銀の品を出して軍用にあてた例、金銀の箔を禁じた例、金糸の織物を禁じた例が載っている。昔の人が金銀を用いたのは、軍用にであって飾りにではなかったことがわかる。『唐六典』には十四種の金細工があり、銷金・拍金・鍍金・織金・砑金・披金・泥金・鏤金・撚金・戧金・圏金・貼金・嵌金・裏金という。宋の時代には、金を費やして衣服や器物を飾ることを禁じ、また金銀の箔や糸、貼金・銷金・金の縮れ糸で家具・建物・愛玩品を飾ることを禁じ、命婦(位を授けられた婦人)でなければ髪飾りにすることを許さなかった。金細工の職人が用いた金は、すべて役所に送らせた。諸州の寺や道観で金箔で像を飾る者には、自分で金銀と工賃を持ってこさせ、思文院で引き換えて支給した。また僧が金銀や珠玉を寄進させ、砕いて泥に混ぜ塔や像を作ることを禁じた。さらに宮中では皇后以下、銷金・貼金・間金・戭金・解剔金・陥金・明金・泥金・楞金・背影金・盤金・織金・金糸撚糸を衣服に付けることを許さず、どれも金で飾ることを許さなかった。宮中の外の臣下や庶民の家も、すべて禁じた。このほか歴代の王朝が重ねて出した禁令は、行き届かないところがなかった。天地の蔵を掘り出すことを重く見た意図も、ここに見て取れる。)
解説
この章句が説くこと
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『新論』守禦虜は海外諸国を周流し、鉛錫銅鉄硝黄の属、之を諸国の産に資る。其の用固より窮まらず。而して我内に自ら守り、必ず山嶽の秘を発して以て之を用ゐれば、則ち彼此多寡の数、其の較せざるや亦審らかなり。(明人寇を防ぎ、招集屯駐す。当時汪汝淳云ふ、苦しむ所は人日に衆くして、衣甲器械継がず、火薬更に敷かずと。則ち此の火薬の生じ易き者すら、亦猶ほ敷かざるを患ふ。況んや今銅鉄鉛錫、其の生ずること限り有る者をや。)故に或いは弓弩を参用し、必ずしも専ら火器を恃まず。其の火器を用ゐる者も、亦専ら銅と鉛とを恃まず。其の銃身は或いは鉄或いは木、其の弾は或いは鉄或いは石或いは餅、或いは和するに銅鉄の滓・海上の沙鉄の類を以てして、以て餅と為す。朽縄・敗布・爛網・破罟と雖も、亦採りて以て錬造に供す。其の乏しきを補ふべからざる無し。棄物を収蔵して、以て有用を待ち、之を平素に試み、士卒をして習ひて之を知らしめ、事に臨みて百方参用すれば、庶はくは急遽にして以て匱乏を致さざらん。
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『新論』守禦其の希に生ずる所の者を嗇用し、将に以て大いに用ゐる所有らんとす。其の用ゐて以て機に応じ勝を制するに至りては、則ち自ら将略有りて存す。此れ特に兵機を暁る者の為に論ずべくして、紙上に豫め論ずる所に非ざるなり。(戚継光の水戦の法の如きは、弓弩標石と火器と相参ふ。而して火器の如きも、亦其の一船に応に火薬五百斤を備ふべくして、鉛弾は三百斤に過ぎず。火薬の用、鉛弾を発するに止まらざること見るべし。而して参ふるに火箭・噴筒・薬桶の諸器を以てし、専ら鉛弾を用ゐず。則ち火器の必ずしも鉛弾を恃まざることも亦見るべし。)故に大礮の制、干鹵の用、弓弩の技、夫の鉄石雑品の採りて以て用に供すべき者と、皆火を用ゐるの術にして、以て間暇に及びて之を審議せざるべからざるなり。
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『政談』公儀御身上の制度の事其仕方公儀にて御入用のほとを積りて其大名の身上〳〵に応し出さしむべきなり、譬へは越前よりは奉書つめ、会津よりは蝋うるし、南部相馬よりは馬、上州加賀よりは絹、仙台長門よりは紙のたぐひなり、身上の高よりは出もの多形なとは外より出るものを下さるゝこともあるへし、御城下に御蔵を所々に立て置きて馬にて付込すへし、当時献上物なとのやうに仰山にすることにては諸大名無用の痛みと成るへし、唯当時御買上けになるを御買上げにせすして諸大名に出さするまてのことにすへし、歴代の先例皆斯の如し、偖又古は名山大川は封せずと云ふことあり、左様の所をは大名には下さらぬことなり、材木の出つる山金銀銅鉄鉛等の出つる山、名塩の出つる地は下されましき所なり、当時尾州へ木曽を進せられ、紀州へは熊野を進せられたること古法になきことなり、下されましき山を下し置れて上の御用には材木を御買上けにすること如何なる無調法なる仕方なるろや、特に東山東海の二道を尾州の御領にて塞くこと是れ亦あるましきことの第一なり、
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『政談』金銀錢員數減少する仔細の事此等のたぐひ、其外世間にある無用の銅器を鋳つぶし、銭を鋳は如何程も出来し、夫にて世界の困窮を救はゝ仏の慈悲心に叶ふべし、但し俗人の取捌きにて寺々の鐘を取りあくること愚かなる人の人情にさかふへけれは、智徳ある高僧に御相談ありて、教化させて其うへにて、屹としたる寺の鐘楼もあり、鐘をもつく用事のある寺はかりを遺し置きて、其外の小寺小院の鐘を悉く銭に鋳させ、その鐘を其の寺々に之を下され寺の修理に用ひたきことなり、
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『政談』金銀錢員數減少する仔細の事偖銭を夥く鋳出たさんには、当時長崎の金高つまりて銅を異国へくたさるゝことなれは、銅払底にて差支あるへし、総体銅の払底になりたるに仔細あり、此の三四十年このかた御城下は勿論、田舎の末々まて小寺小院にも鐘を鋳さるはなし、六十余州を詮識ぜは莫大の銅なるへし、小さき仏像其の数も夥しくなりたり、仏像も余りに夥しくなれは信仰は次第に薄くなることなれは、仏法のためにも宜しからさることなり、特に鐘の功徳と云ふは人の眠りを醒し、六時勤行の時を教へ、十二時の移り行くを知らせて無常を観するたよりとし、又大叢林にては峰々谷々の衆僧を呼集むる用事の為に鐘をつることなり、然るに鐘楼もなき小寺小院のつく人さへもなきに、旦那を勧進して鐘を楼下につり置きたるは何のため成るぞや、つかぬ鐘に声なし、声なくて功徳のあるへきやうなし、真に無用のものなり、
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『墨子』明鬼下故に鬼神の眀は、幽間・廣澤・山林・深谷と為す可からず。鬼神の眀、必ず之を知る。鬼神の罰は、富貴衆強・勇力强武・堅甲利兵と為す可からず。鬼神の罰、必ず之に勝つ。若し以て然らずと為さば、昔者、夏王桀、貴きこと天子と為り、富は天下を有ちながら、上は天を詬り鬼を侮り、下は天下の萬民を殃い傲る。上帝を祥かにして元山帝行を伐つ。故に此に於て天、乃ち湯をして眀罰に至らしむ。湯、車九兩、鳥陣雁行を以てす。湯、大贊に乗り、遂に下衆人の遂を犯し、王、手ずから推哆・大戲を禽らう。故に昔、夏王桀、貴きこと天子と為り、富は天下を有ち、勇有るの推哆・大戲、主として兕虎を别ち、指し畫きて人を殺す有り。人民の衆きこと兆億、侯として厥の澤陵に盈つ。然れども此を以て鬼神の誅を圉ぐ能わず。此れ吾が謂う所の鬼神の罰は、富貴衆强・勇力强武・堅甲利兵と為す可からずとは、此れなり。
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