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新論 / 守禦

所謂峙資糧者何也、凡軍之所需、貯之府庫者、可以備守城之用、而不足待戰陣無窮之需、資之市廛者、可以供平居演習之用、而不足應一旦不虞之變、故硝黄膠漆皮革枲麻、凡水土所産、宜使諸國多生之、而不容仰之遠境也、甲冑干鹵、刀劍槍槊、弓矢銃礮、凡人工所作、宜及間暇多繕之、要在愈用愈不竭也、

新字:所謂峙資糧者何也、凡軍之所需、貯之府庫者、可以備守城之用、而不足待戦陣無窮之需、資之市廛者、可以供平居演習之用、而不足応一旦不虞之変、故硝黄膠漆皮革枲麻、凡水土所産、宜使諸国多生之、而不容仰之遠境也、甲冑干鹵、刀剣槍槊、弓矢銃礮、凡人工所作、宜及間暇多繕之、要在愈用愈不竭也、

書き下し

所謂資糧を峙ふとは何ぞや。凡そ軍の需むる所、之を府庫に貯ふる者は、以て守城の用に備ふべくして、戦陣無窮の需を待つに足らず。之を市廛に資る者は、以て平居演習の用に供すべくして、一旦不虞の変に応ずるに足らず。故に硝黄・膠漆・皮革・枲麻、凡そ水土の産する所は、宜しく諸国をして多く之を生ぜしむべくして、之を遠境に仰ぐを容れざるなり。甲冑・干鹵、刀剣・槍槊、弓矢・銃礮、凡そ人工の作る所は、宜しく間暇に及びて多く之を繕ふべし。要は愈用ゐて愈竭きざるに在るなり。

現代語訳

資材と糧食を蓄えるとはどういうことか。およそ軍に必要なもので、倉庫に蓄えておくものは、城を守るための備えにはなるが、果てしなく続く戦場の需要をまかなうには足りない。市場から買い入れるものは、平時の演習には間に合うが、思いがけない変事に応じるには足りない。だから硝石・硫黄・膠・漆・皮革・麻など、土地から産するものは、諸藩にたくさん産出させるべきで、遠い地域に頼ってはならない。甲冑・盾・刀剣・槍や矛・弓矢・銃砲など、人の手で作るものは、平穏なうちにたくさん整えておくべきである。肝心なのは、使えば使うほど尽きないようにすることである。

解説

守禦の策の「資糧を峙う」の冒頭である。正志斎は、倉庫の蓄えは籠城には役立っても長期戦の需要には足りず、市場頼みでは平時の演習はできても非常時には応じられないと指摘する。そこで原料は諸藩に増産させて遠方に頼らず、武具は平時に多く作っておけと説き、要点を「使えば使うほど尽きない」体制にまとめる。蓄えの量ではなく、生み出し続ける力こそが備えだという考え方は、現代の事業継続や供給網の議論とも重なり、ストックよりフローの強さを問う視点として読める。

この章句が説くこと

兵站資糧自給備え長計新論

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