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史記 / 酈生陸賈列伝

謝之。酈生因言六國從橫時。沛公喜,賜酈生食,問曰:「計將安出?」酈生曰:「足下起糾合之眾,收散亂之兵,不滿萬人,欲以徑入彊秦,此所謂探虎口者也。夫陳留,天下之衝,四通五達之郊也,今其城又多積粟。臣善其令,請得使之,令下足下。即不聽,足下舉兵攻之,臣為內應。」於是遣酈生行,沛公引兵隨之,遂下陳留。號酈食其為廣野君。酈生言其弟酈商,使將數千人從沛公西南略地。酈生常為說客,馳使諸侯。漢三年秋,項羽擊漢,拔滎陽,漢兵遁保鞏、洛。楚人聞淮陰侯破趙,彭越數反梁地,則分兵救之。淮陰方東擊齊,漢王數困滎陽、成皋,計欲捐成皋以東,屯鞏、洛以拒楚。酈生因曰:

新字:謝之。酈生因言六国従横時。沛公喜,賜酈生食,問曰:「計将安出?」酈生曰:「足下起糾合之衆,収散乱之兵,不満万人,欲以径入彊秦,此所謂探虎口者也。夫陳留,天下之衝,四通五達之郊也,今其城又多積粟。臣善其令,請得使之,令下足下。即不聴,足下舉兵攻之,臣為内応。」於是遣酈生行,沛公引兵随之,遂下陳留。号酈食其為広野君。酈生言其弟酈商,使将数千人従沛公西南略地。酈生常為説客,馳使諸侯。漢三年秋,項羽撃漢,抜滎陽,漢兵遁保鞏、洛。楚人聞淮陰侯破趙,彭越数反梁地,則分兵救之。淮陰方東撃斉,漢王数困滎陽、成皋,計欲捐成皋以東,屯鞏、洛以拒楚。酈生因曰:

書き下し

之に謝す。酈生因りて六国従横の時を言ふ。沛公喜び、酈生に食を賜ひ、問ひて曰く、「計将に安くにか出でん」と。酈生曰く、「足下糾合の衆を起こし、散乱の兵を収むるも、万人に満たず。以て径ちに彊秦に入らんと欲す、此れ所謂虎口を探る者なり。夫れ陳留は天下の衝、四通五達の郊なり。今其の城又多く粟を積む。臣其の令に善し、請ふ之に使ひして、足下に下らしめん。即し聴かずんば、足下兵を挙げて之を攻めよ、臣内応と為らん」と。是に於て酈生を遣はして行かしめ、沛公兵を引きて之に随ひ、遂に陳留を下す。酈食其を号して広野君と為す。酈生其の弟酈商を言ひ、数千人を将ゐて沛公に従ひ西南に地を略せしむ。酈生常に説客と為り、諸侯に馳使す。漢の三年秋、項羽漢を撃ち、滎陽を抜く。漢兵遁れて鞏・洛を保つ。楚人淮陰侯の趙を破り、彭越の数(しばしば)梁の地に反するを聞き、則ち兵を分かちて之を救ふ。淮陰方に東して斉を撃ち、漢王数滎陽・成皋に困しみ、成皋以東を捐てて、鞏・洛に屯して以て楚を拒がんと計欲す。酈生因りて曰く、

現代語訳

(沛公は酈生に)非礼を詫びた。酈生はそこで戦国時代の六国の合従・連衡のことを語った。沛公は喜び、酈生に食事を振る舞って尋ねた。「策はどこから打ち出せばよいか。」酈生は言った。「あなたは寄せ集めの軍勢を起こし、散り散りの兵を集めたものの、一万人にも満たない。それでまっすぐ強大な秦に攻め入ろうとするのは、いわゆる虎の口に手を入れるようなものだ。そもそも陳留は天下の要衝で、四方八方に道が通じる土地だ。しかもいま城内には穀物が多く蓄えられている。私はその県令と親しいので、どうか私を使者に立てて、あなたに降らせてください。もし聞き入れなければ、あなたは兵を挙げて攻めてください。私が内応しましょう。」そこで酈生を使者として送り出し、沛公は兵を率いてその後に続き、ついに陳留を降した。酈食其には広野君という号が与えられた。酈生は弟の酈商を推薦し、数千人を率いて沛公に従い、西南方面の地を攻略させた。酈生はいつも弁舌の使者として諸侯のもとへ駆け回った。漢の三年(前204年)秋、項羽は漢を攻めて滎陽を陥れ、漢軍は逃れて鞏・洛陽を守った。楚は、淮陰侯(韓信)が趙を破り、彭越がたびたび梁の地で背いていると聞いて、兵を分けてそちらを救援した。韓信はちょうど東へ進んで斉を攻めようとしており、漢王は何度も滎陽・成皋で苦境に陥ったため、成皋から東を捨てて鞏・洛陽に駐屯し、楚を防ごうと考えていた。そこで酈生は言った。

解説

劉邦に迎え入れられた酈生が、最初に献じた策は「陳留を取れ」でした。一万に満たない兵で秦に突っ込むのは虎の口を探るようなものだと戒め、まず四通八達の要地で穀物の豊かな陳留を、知り合いの県令を説いて無血で手に入れるよう勧めます。兵力より先に補給と拠点を押さえるという、極めて現実的な提案です。後半は時が飛んで漢三年、項羽に滎陽を奪われた劉邦が、成皋より東を放棄して守りに入ろうとする局面です。韓信は北で趙を破り、彭越は梁で楚を攪乱していましたが、正面の劉邦は押されていました。この弱気の瞬間に酈生が口を開くところで段が終わり、次の段の「民は食を以て天と為す」の名言へ続きます。司馬遷は、酈生が口先だけの説客ではなく、兵站と地の利を見る目を持っていたことを示しています。新しい事業を始めるときも、まず足場と資源を固めることから考えたいものです。

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