新論 / 守禦
今宜賦邦國興造巨艦、其工役以軍令從事、〈賦邦國供工役、如今世所謂手傳者是也、〉其制堅緻精密、必使可當虜船、配以邦國之卒、臨事可以戰、〈營繕令、凡有官船之處、量遣兵士看守、〉監以幕府之吏、重其選、厚其責、爵位足以御衆、祿秩足以養廉、無事則以運天下米穀及諸物、使糴糶之權在於上、邦國不仰給商賈、然後以歳時訓練敎閲、使足以截虜海上、庶幾臨事不懾、虜者亦不得驕傲自肆、我之欲戰也、虜不敢避、不欲戰也、則不敢逼、如是然後操縱之權可由我而制也、
新字:今宜賦邦国興造巨艦、其工役以軍令従事、〈賦邦国供工役、如今世所謂手伝者是也、〉其制堅緻精密、必使可当虜船、配以邦国之卒、臨事可以戦、〈営繕令、凡有官船之処、量遣兵士看守、〉監以幕府之吏、重其選、厚其責、爵位足以御衆、禄秩足以養廉、無事則以運天下米穀及諸物、使糴糶之権在於上、邦国不仰給商賈、然後以歳時訓練教閲、使足以截虜海上、庶幾臨事不懾、虜者亦不得驕傲自肆、我之欲戦也、虜不敢避、不欲戦也、則不敢逼、如是然後操縦之権可由我而制也、
書き下し
今宜しく邦国に賦して巨艦を興造せしめ、其の工役は軍令を以て事に従ふべし。(邦国に賦して工役を供せしむるは、今世の所謂手伝なる者の如き是れなり。)其の制は堅緻精密にして、必ず虜船に当たるべからしめ、配するに邦国の卒を以てし、事に臨みて以て戦ふべし。(営繕令に、凡そ官船有るの処は、量りて兵士を遣はして看守せしめよ、と。)監するに幕府の吏を以てし、其の選を重くし、其の責を厚くし、爵位は以て衆を御するに足り、禄秩は以て廉を養ふに足り、事無ければ則ち以て天下の米穀及び諸物を運び、糴糶の権をして上に在らしめ、邦国商賈に仰ぎ給せず。然る後に歳時を以て訓練教閲し、以て虜を海上に截るに足らしめば、庶はくは事に臨みて懾れず、虜も亦た驕傲自ら肆にするを得ず。我の戦はんと欲するや、虜敢へて避けず、戦ふを欲せざるや、則ち敢へて逼らず。是の如くして然る後に操縦の権、我に由りて制すべきなり。
現代語訳
今、諸藩に割り当てて大船を造らせ、その工事は軍令によって行うのがよい。(諸藩に割り当てて工事を負担させるのは、今の世でいう「お手伝い普請」のようなものである。)その造りは堅固で精密にし、必ず外夷の船に対抗できるようにし、諸藩の兵を乗り組ませて、事が起きれば戦えるようにする。(営繕令に「およそ官船のある所には、程よく兵士を派遣して番をさせよ」とある。)幕府の役人に監督させ、その人選を重んじ、責任を重くし、位は人々を統率するに足り、俸禄は清廉を保つに足るようにする。何事もないときには天下の米穀や諸物資を運ばせ、米の売買の権を上に握らせて、諸藩が商人に頼らずにすむようにする。そのうえで季節ごとに訓練と閲兵を行い、外夷を海上で迎え撃てるようにすれば、事に臨んでも恐れず、外夷もまた驕って勝手なふるまいができなくなるだろう。こちらが戦おうとすれば相手は避けられず、戦いたくなければ相手はあえて迫ってこない。こうしてはじめて、主導権をこちらが握ることができる。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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李衛公問対・卷中千章万句、『人を致して人に致されず』を出でざるのみ。
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尉繚子・戰威善く兵を用うる者は、能く人を奪いて人に奪われず。
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孫子・虚実篇孫子曰く、戦いを善くする者は、人を致して人に致されず。
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李衛公問対・卷上兵を善く用うる者は、先ず測る可からざるを為せば、則ち敵は其の之く所に乖く。
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李衛公問対・卷中兵は主為るを貴び、客為るを貴ばず。速やかなるを貴び、久しきを貴ばず。
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尉繚子・戰權兵法に曰く、「千人にして権を成し、万人にして武を成す。権先づ人に加ふる者は、敵力交へず。武先づ人に加ふる者は、敵威接せず」と。故に兵は先を貴ぶ。此に勝てば、則ち彼に勝つ。此に勝たざれば、則ち彼に勝たず。凡そ我往けば則ち彼来たり、彼来たれば則ち我往き、相勝敗を為す、此れ戦の理の然るなり。夫れ精誠は神明に在り、戦権は道の極まる所に在り。有る者は之を無くし、無き者は之を有らしむ、安んぞ之を信ずる所あらん。先王の伝聞する所の者は、正に任じ詐を去り、其の慈順を存し、決して留刑無し。故に道を知る者は、必ず先づ止まるを知らざるの敗を図る、悪んぞ必ず往きて功有るに在らんや。軽く進みて戦を求むれば、敵復た止まるを図り、我往きて敵勝を制す。故に兵法に曰く、「求めて之に従ひ、見て之に加へ、主人敢へて当たらざるに之を陵げば、必ず其の権を喪ふ」と。凡そ奪はるる者は気無く、恐るる者は守るべからず、敗るる者は人無し、兵に道無ければなり。意往きて疑はざれば、則ち之に従ふ。敵を奪ひて前無ければ、則ち之に加ふ。明らかに視て高く居れば、則ち之を威す。兵の道極まれり。其の言謹み無ければ、偸みて失はしむ。其の陵犯節無ければ、破る。水のごとく潰し雷のごとく撃てば、三軍乱る。必ず其の危ふきを安んじ、其の患を去り、智を以て之を決す。之を高くするに廊廟の論を以てし、之を重くするに受命の論を以てし、之を鋭くするに踰垠の論を以てすれば、則ち敵国戦はずして服すべし。
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