新論 / 守禦
今如仍而加修飾、連墩足以相應、目有相望、耳有相聽、號火走報必有法、點檢必謹、賞罰必施、則庶得以無疎虞矣、夫事情之宜彼此相報告者、則驛逓之法、不可不精、凡置舗甚疎、則役民雖少、而往反遐路、人馬多疲倦、甚密則役民稠、而百姓疾苦、逓替頻數、而事亦易遲緩、今置驛多密、而無用之人、不急之事、動役使百姓、甚者厮徒養卒釋器仗乘驛馬、而莫之訝、平居無事、其奪農時竭民力、不可勝言、而至於飛驛急遽之事、亦只跨耕馬乘肩輿、曾無健夫快馬以供迅速之用、緩急恐失事機、
新字:今如仍而加修飾、連墩足以相応、目有相望、耳有相聴、号火走報必有法、点検必謹、賞罰必施、則庶得以無疎虞矣、夫事情之宜彼此相報告者、則駅逓之法、不可不精、凡置舗甚疎、則役民雖少、而往反遐路、人馬多疲倦、甚密則役民稠、而百姓疾苦、逓替頻数、而事亦易遅緩、今置駅多密、而無用之人、不急之事、動役使百姓、甚者厮徒養卒釈器仗乗駅馬、而莫之訝、平居無事、其奪農時竭民力、不可勝言、而至於飛駅急遽之事、亦只跨耕馬乗肩輿、曽無健夫快馬以供迅速之用、緩急恐失事機、
書き下し
今如し仍りて修飾を加へ、墩を連ねて以て相応ずるに足り、目に相望む有り、耳に相聴く有り、号火走報必ず法有り、点検必ず謹み、賞罰必ず施さば、則ち庶はくは以て疎虞無きを得ん。夫れ事情の宜しく彼此相報告すべき者は、則ち駅逓の法、精しからざるべからず。凡そ舗を置くこと甚だ疎なれば、則ち民を役すること少なしと雖も、往反遐路にして、人馬多く疲倦す。甚だ密なれば則ち民を役すること稠くして、百姓疾苦し、逓替頻数にして、事も亦た遅緩し易し。今駅を置くこと多く密にして、無用の人、不急の事、動もすれば百姓を役使し、甚だしき者は厮徒養卒も器仗を釈きて駅馬に乗り、之を訝る莫し。平居無事、其の農時を奪ひ民力を竭くすこと、勝げて言ふべからず。而して飛駅急遽の事に至りては、亦た只だ耕馬に跨り肩輿に乗るのみにして、曾て健夫快馬の以て迅速の用に供する無し。緩急恐らくは事機を失はん。
現代語訳
今もし従来のものに手を加え、のろし台を連ねて互いに応じられるようにし、目で見合い、耳で聞き合えるようにして、合図の火や走り使いの知らせに必ず決まりがあり、点検は必ず慎重に行い、賞罰は必ず施すなら、手抜かりはなくなるだろう。そもそも互いに知らせ合うべき事柄については、駅逓(宿駅と伝馬)の法を精密にしなければならない。およそ宿駅を置くのがひどくまばらだと、使役する民は少なくても、行き来の道のりが遠く、人も馬も疲れきる。ひどく密だと、使役する民が多くなって百姓が苦しみ、継ぎ替えが頻繁になって、物事もかえって遅れがちになる。今、宿駅は多くが密に置かれ、役に立たない人や急がない用事のために、ややもすれば百姓を使い立て、ひどい場合には下働きの者まで武具を置いて駅馬に乗り、誰も怪しまない。平時の無事なときに、農時を奪い民の力を使い果たすことは言い尽くせないほどである。それでいて急使の急ぎの用には、ただ農耕馬にまたがり駕籠に乗るだけで、屈強な男や速い馬を迅速の用に備えたことがない。いざという時に、時機を失うおそれがある。
解説
この章句が説くこと
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『新論』守禦所謂斥候を明らかにすとは何ぞや。今浜海の地、候望無きに非ざるなり。然れども其の布置甚だ稀疎にして、墩を列ねて以て相応ずる無く、熢燧・旌旗・号砲の以て相望み相聴く無く、器械備はらず、号令明らかならず。瞭卒有りと雖も、用ひて以て風帆を遠洋に望むに過ぎず。虜の地方に近づくに及びては、則ち報告するに脚力を以てす。虜舶は瞬息に数十百里、而るに徒歩にて報告す。其の事に及ばざるや固よりなり。古は辺郡に熢を置き、号令明らかに備はり、丁を分かちて瞭を守らしめ、長を置きて検校せしむること、載せて令条に在り。
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孫子・行軍篇杖つきて立つ者は、饑うるなり。汲みて先ず飲む者は、渇するなり。利を見て進まざる者は、労るるなり。鳥集まる者は、虚しきなり。夜呼ぶ者は、恐るるなり。軍擾るる者は、将重からざるなり。旌旗動く者は、乱るるなり。吏怒る者は、倦みたるなり。馬に粟して肉食し、軍に懸缻無く、其の舎に返らざる者は、窮寇なり。諄諄翕翕として、徐ろに人と言う者は、衆を失うなり。
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『呻吟語』内篇・應務・想ひ得る時切に緩やかにする莫かれ事手に到れば且く急ぐ莫かれ。便ち緩緩と想ふを要す。想ひ得る時切に緩やかにする莫かれ。便ち急急に行ふを要す。
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『呻吟語』外篇・治道・利を興すに太だ急なる無かれ利を興すに太だ急なる無かれ、左視右盼するを要す。弊を革むるに太だ驟なる無かれ、長慮卻顧するを要す。
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『学問のすゝめ』九編・昨日便利とせしものも今日は迂遠となり何事もこのとおりにて、世の中の有様はしだいに進み、昨日便利とせしものも今日は迂遠となり、去年の新工夫も今年は陳腐に属す。西洋諸国日新の勢いを見るに、電信・蒸気・百般の器械、したがって出ずればしたがって面目を改め、日に月に新奇ならざるはなし。ただに有形の器械のみ新奇なるにあらず、人智いよいよ開くれば交際いよいよ広く、交際いよいよ広ければ人情いよいよ和らぎ、万国公法の説に権を得て、戦争を起こすこと軽率ならず、経済の議論盛んにして政治・商売の風を一変し、学校の制度、著書の体裁、政府の商議、議院の政談、いよいよ改むればいよいよ高く、その至るところの極を期すべからず。試みに西洋文明の歴史を読み、開闢の時より紀元一六〇〇年代に至りて巻を閉ざし、二百年の間を超えて、とみに一八〇〇年代の巻を開きてこれを見ば、誰かその長足の進歩に驚駭せざるものあらんや。ほとんど同国の史記とは信じ難かるべし。然りしこうしてその進歩をなせし所以の本を尋ぬれば、みなこれ古人の遺物、先進の賜なり。
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