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新論 / 守禦

〈軍防令、凡熢從便宜安置、但使得相照見、置長二人檢校、晝夜分時候望、晝狼烟、夜放火、前熢不應者、即差脚力往告前熢、問知失候所由、申所在官司、其賊衆多寡、熢燧節級、具有式、放熢有參差者、告所在國司、勘當知實、發驛奏聞、明戚繼光畫守哨法、毎墩以軍五名守瞭、備碗口銃小手銃火箭大白旗草架等器械、毎日分三人、巡邏極外海邊、遇有警、晝則搖旗放銃、夜則放起火放銃、墩上即便應接、如天晴、則車起大白旗、隣墩亦如之、一路只至總督所在之處止、一路至本衛所城地而止、如天陰、則將草架擧火、寇到之墩、一面差一人、徑到本衛所幷陸路官處、報敵多寡登犯時日情由、而墩軍失候者、治以軍法、備録條約事件、毎墩一本、付軍讀誦、背記誦熟、限一月外考背、生一句打一棍、官司査點、或繳來査考、或㳂途暗往親驗、治罪連坐具有法、什物軍器、補修有式、極爲詳密、宋應昌亦議、緊要海口、毎三里築一墩、以兵十名、輪班瞭守、又毎一里設轟雷砲二座、撥防口民兵守之、按明一里當今五町許、三里則十五町許、其置墩可謂密、此等皆異邦備豫大略、今觸類長之則可以備參考矣、〉

新字:〈軍防令、凡熢従便宜安置、但使得相照見、置長二人検校、昼夜分時候望、昼狼烟、夜放火、前熢不応者、即差脚力往告前熢、問知失候所由、申所在官司、其賊衆多寡、熢燧節級、具有式、放熢有参差者、告所在国司、勘当知実、発駅奏聞、明戚継光画守哨法、毎墩以軍五名守瞭、備碗口銃小手銃火箭大白旗草架等器械、毎日分三人、巡邏極外海辺、遇有警、昼則揺旗放銃、夜則放起火放銃、墩上即便応接、如天晴、則車起大白旗、隣墩亦如之、一路只至総督所在之処止、一路至本衛所城地而止、如天陰、則将草架挙火、寇到之墩、一面差一人、径到本衛所幷陸路官処、報敵多寡登犯時日情由、而墩軍失候者、治以軍法、備録条約事件、毎墩一本、付軍読誦、背記誦熟、限一月外考背、生一句打一棍、官司査点、或繳来査考、或㳂途暗往親験、治罪連坐具有法、什物軍器、補修有式、極為詳密、宋応昌亦議、緊要海口、毎三里築一墩、以兵十名、輪班瞭守、又毎一里設轟雷砲二座、撥防口民兵守之、按明一里当今五町許、三里則十五町許、其置墩可謂密、此等皆異邦備予大略、今触類長之則可以備参考矣、〉

書き下し

(軍防令に、凡そ熢は便宜に従ひて安置し、但だ相照見するを得しめよ。長二人を置きて検校せしめ、昼夜時を分かちて候望せしめよ。昼は狼烟し、夜は火を放て。前熢応ぜざれば、即ち脚力を差して往きて前熢に告げ、失候の由る所を問ひ知りて、所在の官司に申せ。其の賊衆の多寡、熢燧の節級は、具に式有り。熢を放つに参差有る者は、所在の国司に告げ、勘当して実を知り、駅を発して奏聞せよ、と。明の戚継光、守哨の法を画す。墩毎に軍五名を以て瞭を守らしめ、碗口銃・小手銃・火箭・大白旗・草架等の器械を備へ、毎日三人を分かちて、極外の海辺を巡邏せしむ。警有るに遇はば、昼は則ち旗を揺らし銃を放ち、夜は則ち起火を放ち銃を放つ。墩上即便に応接す。如し天晴るれば、則ち大白旗を車起し、隣墩も亦た之の如くし、一路は只だ総督の所在の処に至りて止み、一路は本衛所の城地に至りて止む。如し天陰れば、則ち草架を将て火を挙ぐ。寇の到る墩は、一面一人を差して、径ちに本衛所幷びに陸路の官の処に到り、敵の多寡・登犯の時日・情由を報ぜしむ。而して墩軍の失候する者は、治むるに軍法を以てす。条約事件を備録し、墩毎に一本、軍に付して読誦せしめ、背記誦熟せしめ、一月の外を限りて考背し、一句を生ずれば一棍を打つ。官司査点し、或は繳め来たりて査考し、或は途に沿ひて暗に往きて親ら験し、治罪連坐具に法有り。什物軍器、補修に式有り。極めて詳密たり。宋応昌も亦た議す、緊要の海口には、三里毎に一墩を築き、兵十名を以て、輪班して瞭守せしめ、又一里毎に轟雷砲二座を設け、防口の民兵を撥して之を守らしむ、と。按ずるに明の一里は今の五町許りに当たり、三里は則ち十五町許りなり。其の墩を置くこと密と謂ふべし。此等は皆異邦の備豫の大略なり。今類に触れて之を長ぜば、則ち以て参考に備ふべし。)

現代語訳

(軍防令に「およそのろし台は都合のよい所に置き、ただ互いに照らし見えるようにせよ。長を二人置いて点検させ、昼夜時刻を分けて見張らせよ。昼は狼煙を上げ、夜は火を放て。前ののろし台が応じなければ、ただちに走り使いを出して前ののろし台に告げ、見張りを怠った理由を問いただして、その地の役所に申し出よ。賊の多少に応じたのろしの段階は、詳しく定めがある。のろしの上げ方に食い違いがあれば、その地の国司に告げ、取り調べて実情を知り、駅馬を出して朝廷に奏上せよ」とある。明の戚継光は守備と見張りの法を定めた。のろし台ごとに兵五人で見張りを守らせ、碗口銃・小手銃・火矢・大白旗・草架(たきぎの台)などの器具を備え、毎日三人を分けて最も外側の海辺を巡回させる。急を見つければ、昼は旗を振り銃を撃ち、夜は火矢を上げ銃を撃つ。のろし台の上ではすぐにこれに応じる。晴れていれば大白旗を高く掲げ、隣ののろし台も同じようにして、一筋は総督のいる所まで伝わって止まり、一筋はその衛所(守備隊)の城地まで伝わって止まる。曇っていれば草架に火を挙げる。敵の到来したのろし台からは、一方で一人を出してまっすぐ衛所と陸路の役人の所に行かせ、敵の多少、上陸・侵犯の日時、事情を報告させる。そしてのろし台の兵で見張りを怠った者は軍法で処罰する。取り決めの事項を書き記して、のろし台ごとに一冊を兵に渡して読ませ、暗記させ、一か月を限って暗誦を試し、一句つかえるごとに棒で一打ちする。役人が点検し、あるいは取り寄せて調べ、あるいは道に沿ってひそかに出向いて自ら確かめ、処罰や連帯責任には詳しい法がある。備品や武器の補修にも定めがある。きわめて詳細綿密である。宋応昌もまた、重要な港口には三里ごとにのろし台を一つ築き、兵十人で交代して見張らせ、さらに一里ごとに轟雷砲を二座置き、港口を守る民兵を割り当てて守らせよと論じた。考えるに、明の一里は今の五町ほどにあたり、三里なら十五町ほどである。のろし台の置き方は密であると言える。これらはみな外国の備えの大略である。今これを類推して広げれば、参考にすることができるだろう。)

解説

斥候を論じる正志斎の長い割注である。日本の養老軍防令の烽の規定と、倭寇に対した明の名将戚継光の守哨の法、さらに宋応昌の海口防備案を詳しく引く。昼は旗と煙、夜は火と銃で知らせを中継すること、規則を書いて兵に暗記させ試験すること、怠った者を軍法で罰し抜き打ちで点検することなど、伝達の手順・訓練・監査が一体で設計されている点に注目している。現代の組織でも、緊急連絡は仕組みを作るだけでは働かず、手順の明文化、定期的な訓練と確認、点検の仕組みまでそろってはじめて機能するという教訓が読み取れる。

この章句が説くこと

斥候情報訓練点検戚継光軍防令

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