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新論 / 守禦

所謂明斥候者何也、今濱海之地、非無候望也、然其布置甚稀疎、而無列墩之以相應、無熢燧旌旗號砲之以相望相聽、器械不備、號令不明、雖有瞭卒、而不過用以望風帆遠洋、及虜近地方、則報告以脚力、虜舶瞬息數十百里、而徒歩報告、其不及事也固矣、古者邊郡置熢、號令明備、分丁守瞭、置長檢校、載在令條、

新字:所謂明斥候者何也、今浜海之地、非無候望也、然其布置甚稀疎、而無列墩之以相応、無熢燧旌旗号砲之以相望相聴、器械不備、号令不明、雖有瞭卒、而不過用以望風帆遠洋、及虜近地方、則報告以脚力、虜舶瞬息数十百里、而徒歩報告、其不及事也固矣、古者辺郡置熢、号令明備、分丁守瞭、置長検校、載在令条、

書き下し

所謂斥候を明らかにすとは何ぞや。今浜海の地、候望無きに非ざるなり。然れども其の布置甚だ稀疎にして、墩を列ねて以て相応ずる無く、熢燧・旌旗・号砲の以て相望み相聴く無く、器械備はらず、号令明らかならず。瞭卒有りと雖も、用ひて以て風帆を遠洋に望むに過ぎず。虜の地方に近づくに及びては、則ち報告するに脚力を以てす。虜舶は瞬息に数十百里、而るに徒歩にて報告す。其の事に及ばざるや固よりなり。古は辺郡に熢を置き、号令明らかに備はり、丁を分かちて瞭を守らしめ、長を置きて検校せしむること、載せて令条に在り。

現代語訳

斥候を明らかにするとはどういうことか。今、海沿いの地に見張りがないわけではない。しかしその配置はたいへんまばらで、のろし台を連ねて互いに応じることもなく、のろし・旗・合図の大砲で互いに見て聞いて知らせ合うこともなく、器具は備わらず、号令ははっきりしない。見張りの兵はいても、遠い海の帆影を望むのに使われるだけである。外夷の船がその地に近づくと、知らせは人の足で運ばれる。外夷の船はまたたく間に数十、数百里を進むのに、徒歩で報告するのだから、間に合わないのは当然である。昔は辺境の郡にのろし台を置き、号令もはっきり備わり、壮丁を分けて見張りを守らせ、長を置いて点検させたことが、令の条文に載っている。

解説

五つの創立の第二「斥候を明らかにす」である。正志斎は、沿岸の見張りが点在するだけで、のろしや旗、号砲で互いに連絡する仕組みがなく、異国船の接近を徒歩で知らせている現状を批判する。帆船が瞬く間に数十里を進むのに徒歩の報告では間に合わないという指摘は、文政七年(1824)の大津浜事件をはじめ、沿岸に異国船が相次いだ当時の実感に裏打ちされている。現代でいえば、異変を察知しても伝達の経路と速度が整っていなければ意味がないという、情報伝達の仕組みの重要性を示す一節である。

この章句が説くこと

斥候情報伝達海防速度大津浜

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