墨子 / 尚同下
是故子墨子曰:「凡使民尚同者,愛民不疾,民無可使,曰必疾愛而使之,致信而持之,富貴以道其前,明罰以率其後。為政若此,唯欲毋與我同,將不可得也。」
新字:是故子墨子曰:「凡使民尚同者,愛民不疾,民無可使,曰必疾愛而使之,致信而持之,富貴以道其前,明罰以率其後。為政若此,唯欲毋与我同,将不可得也。」
書き下し
是の故に子墨子曰く、「凡そ民をして尚同せしむる者、民を愛すること疾からざれば、民、使う可き無し。曰く、必ず疾く愛して之を使い、信を致して之を持し、富貴以て其の前を道き、明罰以て其の後を率う。政を為すこと此くの若くんば、唯だ我と同じくする毋からんと欲するも、將に得可からざるなり」と。
現代語訳
だから墨子が言った。「およそ民に揃わせようとするなら、民を愛することが速やかでなければ、民は使いようがない。必ず速やかに愛して用い、信を尽くして支え、富貴によって前を導き、明らかな罰によって後ろを引き締める。こうして政治を行えば、たとえ自分と揃うまいと望んでも、そうはいかなくなる」。
解説
尚同を成り立たせる条件が、ここで四つに整理されます。速やかに愛して用いる、信を尽くして支える、富貴で前を引く、明らかな罰で後ろを締める。順序が重要で、愛と信が先、賞と罰が後です。しかも「疾」——速やかに、という副詞が付く。人を大事にするのは態度ではなく速度の問題だという指摘で、対応が遅ければ愛していないのと同じだということになります。
この章句が説くこと
愛速度信賞罰順序
関連する章句
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『童子問』卷中問ふ。何を以てか賞罰能く其の功罪に当たることを得ん。曰く、賞罰各其の功罪に当たらんことを欲する者は、政を為す者の心なり。然れども賞罰各其の功罪に当たらんと欲すれば、則ち罰は必ず過ぎて、賞は必ず及ばず。罰過ぎて賞及ばざれば、則ち人心睽く。人心睽けば、則ち国危ふし。故に聖人は其の賞を過ぎて、其の罰を減ず。其の賞を過ぎて、其の罰を減ずれば、則ち賞罰自ら其の当を得。書に曰く、罪の疑はしきは惟軽くし、功の疑はしきは惟重くす。其の不辜を殺さんよりは、寧ろ不経に失せよ、と。是れなり。孔子曰く、惟仁者のみ能く人を好み、能く人を悪む、と。蓋し人の善を好むは、毎に及び難く、而して人の悪を悪むは、必ず過ぎ易し。惟仁人は人を愛すること深し。故に好悪能く其の実に中る。賞罰の能く其の功罪に当たるも、亦然り。
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『呻吟語』内篇・修身・威を用ふる者、愛を用ふる者掩護すれば攻むる勿かれ、屈服すれば怒る勿かれ、此れ威を用ふる者の當に知るべき所なり。功無くんば賞する勿かれ、寵盛んなれば加ふる勿かれ、此れ愛を用ふる者の當に知るべき所なり。反すれば皆な道を敗るなり。
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『五常訓』巻之五・信一賞罰は、必信にすと云ふは、功ある人をば、必恩賞をあたへ、罪ある者をば、必刑罰に行はんと、兼ねて人に示すは法なり。賞罰は人君の権なり。是なければ、善すすまず、悪こりず。君の権威を失へるなり。功あれども賞せず、罪あれども罰せざれば、是民に信なきなり。如此なれば、法やぶれて、民信ぜず。善をするに怠りてつとめず、悪をする事をおそれずして、罰ををかす者多し。かく法たたざれば、国あやふし。又尚書に、令出ては、これ行はしめ、背かしめざれといへり。いふ意は、法を出さば、初よく思案し、僉議して、後までやぶれなき法を立つべし。一たび下知を出して、法をたてば、後まで其法を行はしめて、背かしむる事なかれ。そむく者は必つみに行ふべし。如此なれば、いつまでも、法立ちてやぶれず。一たび下知を出して、後まで変ぜざるは、是信なり。もし後まで立ちがたき法ならば、初によく議論して、法を立つべからず。是始を慎むなり。若下知して後変ぜば、是上に信なくして、民信ぜず。君に権なくして、法たたず。
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『韓非子』外儲說左上第三十二賞罰信ならざれば則ち禁令行はれず、説は文公の原を攻むると箕鄭の餓を救ふとに在り。是を以て呉起故人を須ちて食し、文侯虞人に会して猟す。故に明主信を表すこと、曾子の彘を殺すが如きなり。患は厲王の警鼓を撃つと李悝の両和を謾くとに在り。一。宓子賤単父を治む。有若之を見て曰く、「子何ぞ臞せたるや。」宓子曰く、「君賤の不肖を知らず、単父を治めしむ、官事急にして、心之を憂ふ、故に臞せたり。」有若曰く、「昔者舜五絃を鼓し、南風の詩を歌ひて天下治まる。今単父の細を以て、之を治めて憂ふ、天下を治むるは将に奈何せんとするや。故に術有りて之を御すれば、身廟堂の上に坐し、処女子の色有るも、治に害無し。術無くして之を御すれば、身瘁臞すと雖も、猶ほ未だ益有らず。楚王田鳩に謂ひて曰く、「墨子は、顕学なり。其の身体は則ち可なり、其の言多くして弁ならざるは、何ぞや。」曰く、「昔秦伯其の女を晋の公子に嫁がしむ、晋をして之が為に装を飾らしめ、文衣の媵七十人を従へしむ。晋に至る、晋人其の妾を愛して公女を賤しむ。此れ善く妾を嫁がしむと謂ふべくして、未だ善く女を嫁がしむと謂ふべからざるなり。
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尉繚子・攻權戦ひて必ず勝たざれば、以て戦ひを言ふべからず。攻めて必ず抜かざれば、以て攻むるを言ふべからず。然らざれば、刑賞信ずるに足らざるなり。信は期の前に在り、事は未兆に在り、故に衆已に聚まれば虚しく散ぜず、兵已に出づれば徒らに帰らず。
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『君子訓』巻之下一賞罰は君子其臣民を御する大権なり。賞罰妄なれば、臣下の心服せずして、上の威軽くなる。功ある者を賞し、罪ある者を罰せんと下知を立つるは、法令なり。もし功あれども賞せず、罪あれども罰せざる時は、是賞罰信なきなり。如斯なれば、法不立して、民信ぜず。善をするに惰りてつとめず、悪をする事を恐れずして、罪を犯す者多し。尚書に、令出づれば惟を行はしめ反かざれといへり。此意は、法令を出さば、初よく思案し僉議して、後まで破れざるやうに法を立つべし。一度下知を出しては、後まで其法を用ひ、背くものあらば罪に行ふべし。如斯なれば、法立ちて破れず、民信じて能く守る。後まで立ちがたき法ならば、始に能く評議して是を止むべし。是始を慎むなり。もし朝に令して夕に改むる時は、民惑ひて上を軽んず。

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