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新論 / 守禦

所謂設屯兵者何也、方今濱海之地、無一區非虜衝、一旦有事、發兵奔赴、徒自罷弊、固已靡及矣、故保障之設、屯戍之兵、不得不豫講其制也、慶元以來、令天下大名、勿得國過一城、是所以抑強梗塞禍源、號令畫一、不可得變者也、然今欲備夷虜之變、而縁邊之民、無障塞以自保聚、則無恃以固其心、無保甲以管轄、則無恃以用其力、兵之爲道進退有節、鼓舞有術、苟善用之、雖婦女可以助防守之用、可以赴水火、否則雖壯夫而崩潰離散、莫得而用之、寇至則民逃散山谷、爲狗羯所蹂蹸、誰能救之也、

新字:所謂設屯兵者何也、方今浜海之地、無一区非虜衝、一旦有事、発兵奔赴、徒自罷弊、固已靡及矣、故保障之設、屯戍之兵、不得不予講其制也、慶元以来、令天下大名、勿得国過一城、是所以抑強梗塞禍源、号令画一、不可得変者也、然今欲備夷虜之変、而縁辺之民、無障塞以自保聚、則無恃以固其心、無保甲以管轄、則無恃以用其力、兵之為道進退有節、鼓舞有術、苟善用之、雖婦女可以助防守之用、可以赴水火、否則雖壮夫而崩潰離散、莫得而用之、寇至則民逃散山谷、為狗羯所蹂蹸、誰能救之也、

書き下し

所謂屯兵を設くとは何ぞや。方今浜海の地、一区として虜衝に非ざるは無し。一旦事有らば、兵を発して奔り赴くも、徒らに自ら罷弊し、固より已に及ぶ靡し。故に保障の設け、屯戍の兵、其の制を豫め講ぜざるを得ざるなり。慶元以来、天下の大名に令して、国に一城を過ぐるを得る勿からしむ。是れ強梗を抑へ禍源を塞ぐ所以にして、号令画一、変ずるを得べからざる者なり。然れども今夷虜の変に備へんと欲して、縁辺の民、障塞の以て自ら保聚する無くんば、則ち恃みて以て其の心を固むる無く、保甲の以て管轄する無くんば、則ち恃みて以て其の力を用ふる無し。兵の道たる、進退に節有り、鼓舞に術有り。苟も善く之を用ふれば、婦女と雖も以て防守の用を助くべく、以て水火に赴くべし。否ずんば則ち壮夫と雖も崩潰離散し、得て之を用ふる莫し。寇至れば則ち民山谷に逃散し、狗羯の蹂躪する所と為る。誰か能く之を救はんや。

現代語訳

屯兵を設けるとはどういうことか。今、海に面した土地で、外夷の攻め口でない所は一つもない。いったん事が起これば、兵を出して駆けつけても、いたずらに疲れ果てるだけで、もとより間に合わない。だから守りの砦を設け、駐屯して守る兵を置く制度を、前もって工夫しておかなければならない。慶長・元和以来、天下の大名に命じて一国に一城を超えて持たせないようにした。これは強い者の横暴を抑え、禍の源を塞ぐためで、号令は一つに定まり、変えてはならないものである。しかし今、外夷の変に備えようとするのに、辺境の民に自分たちで寄り集まって身を守る砦がなければ、頼りにして心を固めるものがなく、保甲(隣保の組織)で取りまとめることがなければ、頼りにしてその力を用いるすべがない。兵の道というものは、進退に節度があり、奮い立たせるのに術がある。もしうまく用いれば、女性であっても守りの助けとなり、水火の中にも赴くことができる。そうでなければ屈強な男であっても崩れ散って、用いることができない。敵が来れば民は山や谷に逃げ散り、夷狄の輩に踏みにじられるだろう。誰がこれを救えようか。

解説

五つの創立の第一「屯兵を設く」である。正志斎は、海岸のどこもが攻め口となった今、事が起きてから兵を送っても間に合わないとして、沿岸に砦と常駐の兵を前もって置けと説く。一国一城令が大名の力を抑える要だったことは認めつつ、それでは沿岸の民に拠り所がなく、保甲のような組織がなければ民の力も生かせないと指摘する。現代でいえば、問題が起きてから本部が駆けつける体制では遅く、現場に拠点と自律した組織を前もって置いておくことが、初動の速さを決めるという教訓になる。

この章句が説くこと

屯兵防衛海防現場組織守禦

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