新論 / 守禦
今欲必致天下賢才、取士之法、不可不得其要、取士之法曰、敷納以言、明庶以功、車服以庸是而已、天下之士皆得有所敷納、以盡其所蘊、泄平生鬱勃之氣、誰敢不感激爭陳其言、明庶以功、則言可底行、而智愚賢不肖能否以判、空疎之士、不得冒進、而謙讓廉退之風興矣、車服以庸、則實才者立實功、而受其榮、天下誰不敬應於其大有爲之志、如此則天下賢才盡集廟堂、兼天下之善、以布於天下、天下誰敢不知廟堂之重而敬戴之也、
新字:今欲必致天下賢才、取士之法、不可不得其要、取士之法曰、敷納以言、明庶以功、車服以庸是而已、天下之士皆得有所敷納、以尽其所蘊、泄平生鬱勃之気、誰敢不感激争陳其言、明庶以功、則言可底行、而智愚賢不肖能否以判、空疎之士、不得冒進、而謙譲廉退之風興矣、車服以庸、則実才者立実功、而受其栄、天下誰不敬応於其大有為之志、如此則天下賢才尽集廟堂、兼天下之善、以布於天下、天下誰敢不知廟堂之重而敬戴之也、
書き下し
今必ず天下の賢才を致さんと欲せば、士を取るの法、其の要を得ざるべからず。士を取るの法に曰く、敷き納るるに言を以てし、明らかに庶くするに功を以てし、車服以て庸ゆ、と。是のみ。天下の士皆敷納する所有るを得て、以て其の蘊む所を尽くし、平生鬱勃の気を泄らさば、誰か敢へて感激して争ひて其の言を陳べざらん。明らかに庶くするに功を以てすれば、則ち言底ひて行ふべく、智愚賢不肖能否以て判れ、空疎の士は冒進するを得ずして、謙譲廉退の風興らん。車服以て庸ゆれば、則ち実才ある者は実功を立てて、其の栄を受け、天下誰か其の大いに為す有るの志に敬応せざらん。此の如くなれば則ち天下の賢才尽く廟堂に集まり、天下の善を兼ねて、以て天下に布かん。天下誰か敢へて廟堂の重きを知りて之を敬戴せざらんや。
現代語訳
今もし本当に天下の賢才を招きたいなら、人材登用の法はその要点を押さえなければならない。登用の法とは「言葉によって意見を広く受け入れ、功績によってはっきりと試し、車や衣服(の恩賞)によって報いる」、これだけである。天下の士がみな意見を申し述べる場を得て、胸に蓄えたものを出し尽くし、日ごろの鬱屈した思いを晴らせるなら、誰が感激して争って意見を述べないことがあろうか。功績によってはっきり試すなら、言葉が実行に結びつき、知恵ある者と愚かな者、賢い者と劣った者、できる者とできない者が分かれ、中身のない者は無理に出世できず、謙譲して身を引く気風が興るだろう。車や衣服で報いるなら、本当の才能ある者が本当の功を立てて栄誉を受け、天下の誰がその大いなる事業の志に敬って応じないことがあろうか。こうすれば天下の賢才はことごとく朝廷に集まり、天下の善をあわせて天下に広めるだろう。天下の誰が朝廷の重みを知って、これを敬い戴かないことがあろうか。
解説
この章句が説くこと
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『政談』諸役人に器量を選ふ事此上に上たる人にゑりもとを見る心覚えすあるなり、富貴なる人を善きと見ては、貧賤成る人をは悪きと見ることは、もと女子わらべが怪きものあることにて之をゑりもとを見ると云ふ、上たる人などに箇様なる心有るまじきやうなれども、世末になるに従ひて、人の家筋極まりて上下別々になりたる世界なる故、高位大禄の人を善き人と思ひ、末々の者をはむしけらの如く思ふこと、上たる人にも免がれざる人情なり、此の上に又臣たる人には立身を好む利慾の心人情の免がれざる所なる故、何れも上の御機嫌に合はせ、上の御心を取らんと心懸くること甚たし、何程の名将にても下より之を一大事と心掛けて伺ひねらう所へ手前のものずき心の僻を見とられぬと云ふことなし、是亦人情の免がれがたき所なり、斯の如く様々の仔細によりて、手前の目かね手前の才智にて人の器量を知らんとするときは必す誤りあることなりと知るへし、
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『政談』諸役人に器量を選ふ事其の仔細は上たる人は第一其の身貴く、其の地結搆なれは終に物の難儀苦労をせす、何事も心の儘なり、人の智は様々の難儀苦労をするより生するものなるに、左様なること無けれは智恵の生すへきやうなし、乱世の名将は生死の塲を経て様々の難儀をしたる故智慧あるなり、其の身の位貴けれは下々とは雲泥万里隔たる故、人の情に疎く下のことを知らす、常になるゝ人は皆な高位大禄の人なり、高位の人は高位の立ちまはり計を仕覚えて物云ひたる所、其の人の取り廻はし上たる人と能く相応する故、覚えす能く見ゆる、末々の者は高位の交はりをせす、立ちまはり物云ひまてふつゝかなり、又身高位ならねは上たる人のはだあひもの好きをも知らす、貴賤遥かに隔たる人の俄に呼ひ出たされてものを申す故、すぐに縮みて事の仔細をよく申しつくすこともならす、
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『甲陽軍鑑』品第十四扨又一切の侍衆の内にも四人と、又高坂弾正が小眼より見立て候聞き給へ長坂長閑·跡部大炊助殿、一番に少しも戯げずして兵あり、二番に馬嫁にて兵あり、三番に利発にて臆病なる人あり、四番に馬嫁にて臆病なる人あり、一利発にて心の剛なる人をば世間の者憎むなり、一利発にて臆病なる者は人の機に入りて走り廻り近付き多し、一馬嫁にて兵は手抦をいたしても、あまり人が存ぜぬ者なり、馬嫁にて臆病なるをば人のなぶり者になり、結句衆人愛多し、
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『政談』諸役人に器量を選ふ事右の如くなる治めにては下たる人は皆御老中若老中の御影にて御奉公は勤むると云ふものなり、実に下に才智なくて、御老中若老中ばかりに才智有るにあらず、唯々箇様に人を使ひなしたること故、下は自から才智なきものになりたるなり、此の段証拠明かなる仔細は、中頃より御加增を取るは唯々御老中若老中などばかりにて、下たる人に其の沙汰なきは、上の思召しも其の通りなりと見えたり、されは下たる人身を踏込みて勤むべきやう決して之なし、才智の見ゆへきやう曽て之無きことなり、箇様に使ひやうの悪きをば差置きて、今の世には人なきと云ふは勿体なき事と某は存するなり、天地よりは何れの世にも才智ある人をは生するを、斯の如く使ひなして使ひやうの悪しきとは顧りみす、今の世には人なきと云ふこと身を高ぶる余りに天地の徳を蔑にすること、天の咎め恐ろしければ勿体なきにはあらすや、
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『政談』諸役人に器量を選ふ事名将の目がねと云ふは戦塲にて功を立てゝ、器量ある人を多く見多く使ひて大抵すぢきつかけを覚えて、此のすぢきつかけにて見て大抵知るゝことなり、されば古の名将にも人の見違ひありてやりそこなひとも多きは大抵は知るゝやうなれども、我か覚えたるすぢきつかけはかりをひ、我が終に見覚えぬすぢきつかけは知らぬ故見損ひあることなり、然れば人を知ると云は兎角使ひ見て知ることなり、さはなくて我か目かねにて人を見んとせは、畢竟我かもの好きに合はする人を器量ありと思ふことなり、是れ愚かなることの至極なり、
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『甲陽軍鑑』品第十四其の人並の内に、無心懸けなる人をさして世間に申渡る臆病人なり、物前にて腰たゝず無性になる人は本の臆病者とて、結句兵よりも稀れなれば、侍千人の中にも漸く一人あり、又右すぐれて二十人のごとくなる者、千の備へには歩者に侍小者へかけて二三十もあるべし、それは勝頼公も御存知あらん、定て長坂長閑·跡部大炊助は猶以て知り給はん、原美濃が小者ほつせん小幡山城が小者藤右衛門、多田淡路小者新六、是等は度々の手抦を仕つれば、結句忰者小者に手抦物あらん、
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