新論 / 守禦
其二曰、飭軍令、其目有三、汰驕兵也、増兵衆也、精訓練也、夫兵之貴精也固矣、而驕兵之於國、居則蠧民傷俗、戰則尩怯喧噪、動犯軍律、取敗之道也、故謹察其驕奢淫佚不可用者、盡沙汰之、使兵皆精鋭、然後可以守、可以戰也、兵皆聚都城、坐銷穀祿、所以不得多養、故善察古今兵制之沿革、兼用土着之制、使兵數衆多、用之不竭、則可以應無窮之變也、且夫外寇之與内患必相因者、古今之常勢也、今無行之民、帶長刀提銃鎗、烏聚星散、飲博劫盗、以賊害良民者、充斥村野、流賊之形成矣、或有水旱疾疫、其變未可測、若使外虜乘機投間引以爲聲援、則變之又變、可爲寒心焉、今善通其變、土有兵、地有守、則流賊之漸可息、外虜之應可絶、然後可以防不測之變也、
新字:其二曰、飭軍令、其目有三、汰驕兵也、増兵衆也、精訓練也、夫兵之貴精也固矣、而驕兵之於国、居則蠹民傷俗、戦則尩怯喧噪、動犯軍律、取敗之道也、故謹察其驕奢淫佚不可用者、尽沙汰之、使兵皆精鋭、然後可以守、可以戦也、兵皆聚都城、坐銷穀禄、所以不得多養、故善察古今兵制之沿革、兼用土着之制、使兵数衆多、用之不竭、則可以応無窮之変也、且夫外寇之与内患必相因者、古今之常勢也、今無行之民、帯長刀提銃鎗、烏聚星散、飲博劫盗、以賊害良民者、充斥村野、流賊之形成矣、或有水旱疾疫、其変未可測、若使外虜乗機投間引以為声援、則変之又変、可為寒心焉、今善通其変、土有兵、地有守、則流賊之漸可息、外虜之応可絶、然後可以防不測之変也、
書き下し
其の二に曰く、軍令を飭ふ。其の目三有り、驕兵を汰するなり、兵衆を増すなり、訓練を精しくするなり。夫れ兵の精を貴ぶや固よりなり。而して驕兵の国に於けるや、居れば則ち民を蠹し俗を傷り、戦へば則ち尩怯喧噪し、動もすれば軍律を犯す。敗を取るの道なり。故に謹みて其の驕奢淫佚にして用ふべからざる者を察し、尽く之を沙汰し、兵をして皆精鋭ならしめ、然る後に以て守るべく、以て戦ふべきなり。兵皆都城に聚まり、坐して穀禄を銷す、多く養ふを得ざる所以なり。故に善く古今兵制の沿革を察し、兼ねて土着の制を用ひ、兵数をして衆多ならしめ、之を用ひて竭きざれば、則ち以て無窮の変に応ずべきなり。且つ夫れ外寇の内患と必ず相因るは、古今の常勢なり。今無行の民、長刀を帯び銃鎗を提げ、烏のごとく聚まり星のごとく散じ、飲博劫盗し、以て良民を賊害する者、村野に充斥し、流賊の形成れり。或は水旱疾疫有らば、其の変未だ測るべからず。若し外虜をして機に乗じ間に投じ、引きて以て声援と為さしめば、則ち変の又変、寒心すべし。今善く其の変を通じ、土に兵有り、地に守有らしめば、則ち流賊の漸息むべく、外虜の応絶つべく、然る後に以て不測の変を防ぐべきなり。
現代語訳
第二は軍令を整えることで、その項目は三つある。驕った兵を淘汰すること、兵の数を増やすこと、訓練を精密にすることである。そもそも兵が精鋭であることを尊ぶのは言うまでもない。驕った兵は国にとって、平時には民をむしばみ風俗を損ない、戦となれば弱く臆病で騒ぎ立て、ややもすれば軍律を犯す。これは敗北を招く道である。だから慎重に、驕り贅沢で放埒、役に立たない者を見きわめて、ことごとく淘汰し、兵をみな精鋭にして、そのうえではじめて守ることも戦うこともできる。兵がみな城下に集められ、何もせずに扶持米を食いつぶしているのが、多くを養えない理由である。だから古今の兵制の移り変わりをよく調べ、あわせて土着の制度を用い、兵の数を多くし、使っても尽きないようにすれば、限りない変事に応じることができる。そのうえ、外からの侵略と内の乱れが必ず互いに結びつくのは、古今変わらぬ情勢である。今、身持ちの悪い民が長刀を差し、鉄砲や槍を持ち、烏のように集まり星のように散って、酒を飲み博打を打ち、強盗をはたらいて善良な民を害する者が村々に満ち、流賊の形ができあがっている。もし洪水や日照り、疫病があれば、その変事は予測もつかない。もし外夷が機に乗じ隙に入り込み、彼らを引き入れて応援とさせたなら、変事がさらに変事を生み、ぞっとするほどである。今その変化によく通じ、土地に兵がおり、各地に守りがあるようにすれば、流賊が広がるのを止められ、外夷への内応を絶つことができ、そのうえで不測の変事を防ぐことができるのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『新論』守禦兵の地着せざるは、天下を弱め釁端を杜ぐ所以なり。然れども縁辺に屯戍無きは、外寇を待つの備に非ざるなり。今城邑の兵を分かちて往きて之を守らしむれば、則ち兵卒罷労して、沿途騒擾す。民を募りて兵に充つれば、則ち民奢惰に習ひ、唯だ厚俸を貪るを知るのみ。且つ特だ寇に備ふるのみにして陣に臨むに非ざれば、進みては以て奇功を博する無く、退きては以て重誅を畏るる無し。故に得る所の者は、老廃跛蹇の卒に非ずんば、則ち惰遊無行の民にして、固より用ふべからず。以て屯田せんと欲すれば、則ち田皆永業にして、彼を奪ひて此に授くべからず。且つ要衝の地の如きは、其の利も亦た随ひて有り、民も亦た未だ甚だしくは貧ならず、而して間田も亦た甚だしくは多からず、地給するに足らず。卒を養ふに俸米を以てすれば、則ち先づ民に税して、又之を頒つ。取与の間、其の費授田に数倍し、以て多く之を養ふべからず。
-
『新論』守禦夫れ内政修まり、軍令飭ひ、邦国富み、守備班たば、則ち天下の宜しく釐革すべき所の者、大綱挙がる。大綱挙がれば、則ち其の瑣瑣たる者も亦た将に随ひて振起せんとす。夫れ英雄は時を相て変に処す。昔時未だ設けざる所にして、今日宜しく創立すべき所の者、亦た安んぞ熟思して之を講明せざるを得んや。臣を以て之を策すれば曰く、屯兵を設く、曰く、斥候を明らかにす、曰く、水兵を繕ふ、曰く、火器を練る、曰く、資糧を峙ふ。是の五者は、以て創立せざるべからざるなり。
-
『新論』守禦夫れ屯戍設け、斥候明らかに、水兵繕ひ、火器練り、資糧峙はれば、則ち其の宜しく創立すべき所の者、大綱挙がる。大綱挙がれば、則ち其の瑣瑣たる者も、亦将に随ひて作興せんとす。経制の昔存して今廃れ、紀綱の昔張りて今弛む者は、尽く釐革して之を振起し、規模の宜しく立つべくして未だ立たず、禁令の宜しく設くべくして未だ設けざる者は、尽く創立して之を作興す。臣の画する所の守禦の策、大略此くの如し。然り而して智者の事を挙ぐるや其の之を慮るや、必ず利害に雑ふ。故に謀議画策、既に其の利を知れば亦以て其の害の所在を知らざるべからざるなり。請ふ竟に之を論ぜん。
-
『新論』守禦兵旅を訓練するは、花法児戯の謂に非ずして、其の実用に施すべきの宜しく講ずべきなり。故に教ふるに陣営の法を以てし、習はすに旗鼓の節を以てし、悉く無用の虚文を除去し、至易至簡、知り易く従ひ易くして、之を田猟に試み、之を追捕に用ひ、之を工役に労し、之を険阻艱難・風雨寒暑・負重走遠の事に狃れしめ、士卒をして進退に習ひ険阻を軽んじ、軍旅を以て難事と為さざらしむるは、其の胆を練る所以なり。胆練れて後に事に遇ひて懾れず、機に臨みて変に応ずるを得。此の如くして然る後に緩急用ふべきなり。
-
『新論』守禦利の取りて竭きざる者は海なり。之が舟楫を為り、其の網罟の費を給せば、則ち水戦の用得て寓すべし。是れ利を海に資りて、以て吾が兵を教へ、糧を地に因りて、以て吾が兵を食ましむ。苟も其の人を得て、其の制度を講ぜば、壮強の夫、素練の卒、未だ必ずしも得べからずんばあらず。然れども防海の備は、独り之を防海の卒に責むべからず。兵の用ふべからんことを欲せば、則ち当に其の労佚を均しくすべし。屯戍の卒は、田を耕し海に漁し、暇日には則ち武を講じ、寇至れば先づ闘ふ、豈に労せざらんや。而るに其の城邑に在る者は、飽食煖衣して、驕楽歳を終ふれば、則ち誰か独り防海を楽しまんや。故に士衆を磨励し、兵旅を訓練し、之に習はすに田猟・追胥・行役・土功の労を以てし、独り奢淫の楽を受くるを得ざらしめ、農工商賈をして亦た皆四方に事有るを知り、勤倹して令に趨ること、新たに兵禍を免れたるの日の如くならしめ、防海の卒をして天下の労せざる莫きを知り、臂を攘ひ身を奮ひ、陣に臨みて功を争ふの秋の如くならしめ、然る後に兵得て用ふべきなり。故に堡障の制、保甲の令、屯戍の兵、労佚の用は、皆防海の要務にして、間暇に及びて之を審議せざるべからざるなり。
-
『新論』守禦所謂屯兵を設くとは何ぞや。方今浜海の地、一区として虜衝に非ざるは無し。一旦事有らば、兵を発して奔り赴くも、徒らに自ら罷弊し、固より已に及ぶ靡し。故に保障の設け、屯戍の兵、其の制を豫め講ぜざるを得ざるなり。慶元以来、天下の大名に令して、国に一城を過ぐるを得る勿からしむ。是れ強梗を抑へ禍源を塞ぐ所以にして、号令画一、変ずるを得べからざる者なり。然れども今夷虜の変に備へんと欲して、縁辺の民、障塞の以て自ら保聚する無くんば、則ち恃みて以て其の心を固むる無く、保甲の以て管轄する無くんば、則ち恃みて以て其の力を用ふる無し。兵の道たる、進退に節有り、鼓舞に術有り。苟も善く之を用ふれば、婦女と雖も以て防守の用を助くべく、以て水火に赴くべし。否ずんば則ち壮夫と雖も崩潰離散し、得て之を用ふる莫し。寇至れば則ち民山谷に逃散し、狗羯の蹂躪する所と為る。誰か能く之を救はんや。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る