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甲陽軍鑑 / 品第十四

扨又一切の侍衆の內にも四人と、又高坂彈正が小眼より見立て候聞き給へ長坂長閑·跡部大炊助殿、一番に少しも戯げずして兵あり、二番に馬嫁にて兵あり、三番に利發にて臆病なる人あり、四番に馬嫁にて臆病なる人あり、一利發にて心の剛なる人をば世間の者憎むなり、一利發にて臆病なる者は人の機に入りて走り廻り近付き多し、一馬嫁にて兵は手抦をいたしても、あまり人が存ぜぬ者なり、馬嫁にて臆病なるをば人のなぶり者になり、結句衆人愛多し、

新字:扨又一切の侍衆の内にも四人と、又高坂弾正が小眼より見立て候聞き給へ長坂長閑·跡部大炊助殿、一番に少しも戯げずして兵あり、二番に馬嫁にて兵あり、三番に利発にて臆病なる人あり、四番に馬嫁にて臆病なる人あり、一利発にて心の剛なる人をば世間の者憎むなり、一利発にて臆病なる者は人の機に入りて走り廻り近付き多し、一馬嫁にて兵は手抦をいたしても、あまり人が存ぜぬ者なり、馬嫁にて臆病なるをば人のなぶり者になり、結句衆人愛多し、

書き下し

扨又一切の侍衆の内にも四人と、又高坂弾正が小眼より見立て候聞き給へ長坂長閑·跡部大炊助殿、一番に少しも戯げずして兵あり、二番に馬嫁にて兵あり、三番に利発にて臆病なる人あり、四番に馬嫁にて臆病なる人あり、一利発にて心の剛なる人をば世間の者憎むなり、一利発にて臆病なる者は人の機に入りて走り廻り近付き多し、一馬嫁にて兵は手抦をいたしても、あまり人が存ぜぬ者なり、馬嫁にて臆病なるをば人のなぶり者になり、結句衆人愛多し、

現代語訳

さてまた一切の侍衆の内にも四通りあると、また高坂弾正が小さな目から見立てたのを、お聞きなされよ、長坂長閑・跡部大炊助殿。一番に少しも戯けたところがなくて兵(つわもの)である人。二番に馬鹿で兵である人。三番に利発で臆病な人。四番に馬鹿で臆病な人。一、利発で心の剛な人を、世間の者は憎むものである。一、利発で臆病な者は、人の機嫌に入って走り回り、近付きが多い。一、馬鹿で兵である者は、手柄をしてもあまり人が知らないものである。馬鹿で臆病な者は人のなぶり者になるが、かえって衆人の愛が多い。

解説

利発さと胆力の組み合わせで侍を四つに分け、世間の評判と実力がずれることを示す。利発で剛の者は憎まれ、利発で臆病な者は人付き合いがよく友が多い。馬鹿で剛の者の手柄は知られず、馬鹿で臆病な者はからかわれつつ愛される。人気や評判は、実力を測る物差しにはならない。評価する側は、好かれ方に目を奪われてはならない。憎まれ役を引き受けている者の中にこそ、本当の戦力が潜んでいる。

この章句が説くこと

人材評価評判利発臆病四通り

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