新論 / 守禦
農者民命之所係、故抑末貴本、制産頒職、時使薄斂、均田里、除兼併、去姦民、懲罷惰、通情好、恤患難、明其什伍、敎之保任、富庶而孝弟、使老幼孤寡有所收養、皆所以安民、古人所論具矣、今欲必施行之、則當使上下知恤、欲上下知恤、則當動民以實事、而不可喩之以空言、故修戰備、峙軍實、其重儲糧、常如凶荒之後、相勸勉勤苦、如保聚避寇之日、同心一力、無或懈怠、然後發政施仁、萬民有不安乎、
新字:農者民命之所係、故抑末貴本、制産頒職、時使薄斂、均田里、除兼併、去姦民、懲罷惰、通情好、恤患難、明其什伍、教之保任、富庶而孝弟、使老幼孤寡有所収養、皆所以安民、古人所論具矣、今欲必施行之、則当使上下知恤、欲上下知恤、則当動民以実事、而不可喩之以空言、故修戦備、峙軍実、其重儲糧、常如凶荒之後、相勧勉勤苦、如保聚避寇之日、同心一力、無或懈怠、然後発政施仁、万民有不安乎、
書き下し
農は民命の係る所、故に末を抑へ本を貴び、産を制し職を頒ち、時に使ひ斂を薄くし、田里を均しくし、兼併を除き、姦民を去り、罷惰を懲らし、情好を通じ、患難を恤れみ、其の什伍を明らかにし、之に保任を教へ、富庶にして孝弟ならしめ、老幼孤寡をして収養する所有らしむるは、皆民を安んずる所以にして、古人の論ずる所具はれり。今必ず之を施行せんと欲せば、則ち当に上下をして恤れむを知らしむべし。上下をして恤れむを知らしめんと欲せば、則ち当に民を動かすに実事を以てすべくして、之を喩すに空言を以てすべからず。故に戦備を修め、軍実を峙へ、其の儲糧を重んずること、常に凶荒の後の如く、相勧勉し勤苦すること、保聚して寇を避くるの日の如く、心を同じくし力を一にし、或は懈怠すること無からしめ、然る後に政を発し仁を施さば、万民安からざること有らんや。
現代語訳
農業は民の命がかかっているものである。だから商工の末業を抑えて農の本業を重んじ、生業を定めて職を割り当て、民を使うには時節を選んで税を軽くし、田地と村里を均等にし、土地の兼併を除き、悪い民を去らせ、怠け者を懲らしめ、互いの情誼を通わせ、災難をいたわり、五人組・十人組を明らかにして互いに保証し合うことを教え、豊かで人口も多く、親に孝行で年長者に従順であるようにし、老人や幼い者、孤児や寡婦にも養われる場所があるようにする。これらはみな民を安んじるてだてで、昔の人がすでに論じ尽くしている。今これを本当に実行したいなら、上の者にも下の者にも、互いをいたわることを知らせなければならない。上下に互いをいたわることを知らせたいなら、実際の事によって民を動かすべきで、空しい言葉で諭してはならない。だから戦の備えを整え、兵器や兵糧を蓄え、食糧の貯えを重んじることは常に凶作の後のようにし、互いに励まし合って苦労することは、寄り集まって敵を避けている日のようにし、心を同じくし力を一つにして、怠ることがないようにさせる。そのうえで政令を発し仁政を施すなら、万民が安んじないことがあろうか。
解説
この章句が説くこと
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『新論』守禦米穀に至りては、則ち民命の係る所にして、軍旅に在りても糧食より重きは莫し。今其の都会に狼戻する者は、以て浮冗佚楽の奉に充つべくして、兵行不資の糧に給すべからざるなり。故に糧食を峙へんと欲せば、其の本業を務め米穀を貴び、之を民に蔵し之を国に儲ふるは、固より論ずる亡し。(説は国体篇に見ゆ。)而して浮冗の民は、以て漸く農に帰せしめざるべからず。酒・餅餌・麪の穀を銷す者、茶・蔫・紅茜の農を妨ぐる者は、以て稍其の節を制せざるべからず。
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『新論』守禦其の二に曰く、軍令を飭ふ。其の目三有り、驕兵を汰するなり、兵衆を増すなり、訓練を精しくするなり。夫れ兵の精を貴ぶや固よりなり。而して驕兵の国に於けるや、居れば則ち民を蠹し俗を傷り、戦へば則ち尩怯喧噪し、動もすれば軍律を犯す。敗を取るの道なり。故に謹みて其の驕奢淫佚にして用ふべからざる者を察し、尽く之を沙汰し、兵をして皆精鋭ならしめ、然る後に以て守るべく、以て戦ふべきなり。兵皆都城に聚まり、坐して穀禄を銷す、多く養ふを得ざる所以なり。故に善く古今兵制の沿革を察し、兼ねて土着の制を用ひ、兵数をして衆多ならしめ、之を用ひて竭きざれば、則ち以て無窮の変に応ずべきなり。且つ夫れ外寇の内患と必ず相因るは、古今の常勢なり。今無行の民、長刀を帯び銃鎗を提げ、烏のごとく聚まり星のごとく散じ、飲博劫盗し、以て良民を賊害する者、村野に充斥し、流賊の形成れり。或は水旱疾疫有らば、其の変未だ測るべからず。若し外虜をして機に乗じ間に投じ、引きて以て声援と為さしめば、則ち変の又変、寒心すべし。今善く其の変を通じ、土に兵有り、地に守有らしめば、則ち流賊の漸息むべく、外虜の応絶つべく、然る後に以て不測の変を防ぐべきなり。
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『新論』守禦凡そ是くの如きの類、古今の経制、各宜しき所有り。能く其の凶荒軍旅に益有る者を択びて、尽く之を行はば、嘉穀海内に盈溢し、海内の元気、以て餒うること無かるべし。(凡そ財穀を理むる、其の術一端ならず。今之を行はんと欲せば、一利を興せば則ち一害随ひて生ず。時に臨みて宜しきを制し、一を執りて之を論ずべからず。故に其の詳の如きは、則ち将に別に論述する所有らんとす。今特に其の一端を挙げ、其の説を詳載せざるなり。)故に水土の産、人工の作、山嶽の秘、米穀の儲、其の糜を息め、其の生を広め、害ある者は之を除き、利ある者は之を興し、深謀遠慮、時に相して弛張し、之が権衡を設け、之が制度を立つるは、将に其の人を待ちて後に行はれんとす。凡そ此れ皆資糧の峙へにして、間暇に及びて之を審議せざるべからざるなり。
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『新論』長計其の志を持して其の業を広むるは、務め国体を明らかにするに在り。大卞に循ひて今古を一にし、博広悠久にして、以て夏夷に照臨す。細戈の名に循ひて之を実にするは、兵を足す所以なり。瑞穂の名に循ひて之を実にするは、食を足す所以なり。忠孝を明らかにして以て天下を淬礪するは、民をして之を信ぜしむる所以なり。三者並び挙がりて、食足り、兵足り、民之を信じ、忠孝以て明らかに、天人合一し、幽明憾み無く、正を以て詭に易へ、夏を以て夷を変じ、万世にして已まざる者は、不抜の業なり。今之を施行せんと欲せば、宜しく民をして之に由らしむべくして、之を知らしむべからず。若し夫れ民をして之に由らしむる所以の者を論ずれば、則ち礼と曰ふのみ。礼の目は五にして、民に敬を教ふるは、祀より大なるは莫し。(周官に、祀礼を以て敬を教ふれば、則ち民苟もせずと。)祀礼に数有り義有り。其の数を陳べんと欲せば、当に先づ其の義を明らかにすべし。
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『新論』守禦常平の倉・平準の署の如き、其の斟酌して以て今に行ふべき者有らば、以て其の制を講ぜざるべからざるなり。軽重其の権を得、米価其の平を得、姦商猾賈をして利柄を専操すること無く、販夫販婦をして独り其の業を失ふこと無からしめ、善く利を導きて之を上下に布かば、則ち邦君以て士民に及ぶまで、其の穀多く蔵すべくして、経費も亦以て給すべし。士民倶に富めば、則ち商賈も亦随ひて其の利を受け、糶糴制有りて、上下倶に便なり。利を導く所以の者周ければなり。官府及び民間の取予貿易する所、多く米穀を用ゐて、金帛と相参ふれば、則ち米穀人間に流通して、一方に腐陳せざるなり。義社の倉に本づき、因りて以て陳を取り農に食はしむるの制と為さば、則ち細民乏しからずして、其の穀新旧相換ふべきなり。
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『講孟余話』盡心上 第二十三章是れ上章養老の説を承けて、民政を論ずるなり。「其の田疇を易む」とは、民に農業を出精させ、田畠を荒させぬことなり。「其の税斂を薄くす」とは、取箇を軽くすることなり。民出精するとも、取箇重くては民の成り立つべき様なし。取箇軽ければ、民も自ら励みて出精する者なり。余老農の言を聞く、「精農は田畠の端々を善く易む。端々は僅か一二尺宛にても甚だ広し。惰農は中計り耕して端々を荒らす。是れを以て同じく百畝の田も、農の精惰に因りて夥しく饒歉あることなり」と。余謂へらく、是れ「其の田疇を易む」の解とすべし。「之を食ふに時を以てす」は、民に飲食の侈りをさせぬことなり。「之を用ふるに礼を以てす」とは、民に万事過分なることをさせぬことなり。田疇能く易まり、税斂又軽くとも、民間奢侈にして過分の事多ければ、貧弱となる基なり。其の極は田疇も荒れ、軽き税斂も重く覚ゆるなり。此の四つの者は民政の始めにして、此の四つ已に行はるれば、「倉廩実ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る」の理にて、民不仁なる者なきにも至るべし。是れを行はずして、書面の下知を以て民を有難がらせ、聖経仏典を借りて民を服させんとするは、末なるかな、末なるかな。
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